ボツリヌス注射やヒアルロン酸注射、コラーゲン注射など、しわ・たるみや肌質の改善効果が期待できる注入治療が注目を集めています。

注入治療は「メスを使わない美容医療」として支持される一方で、ネガティブな情報や噂がささやかれることも。それらを耳にして、疑問や戸惑いを抱える人も少なくないでしょう。

そこで今回は、注入治療の指導医も務めるヒルズグレイスクリニックの奥 美香子 先生にお話をうかがいました。

注入治療の基礎知識や実際のメリット、さらにはよく聞く疑問などについても回答いただきます。

監修・取材協力:奥 美香子 先生(ヒルズグレイスクリニック 副院長)

注入治療とは?

注入治療とは

注入治療は、肌やその下の組織に特定の物質を注射で注入することによって、肌質改善や、見た目のバランスを整えるために利用されています。

注射だけで手軽に治療を受けられるというメリットがある一方で、いくつか注意点もあります。

注入治療のメリット

注入治療には大きく3つのメリットがあります。

1つ目は「施術後すぐに効果を感じやすい」という点です。

例えば、しわやたるみ改善のためにレーザーやHIFUなどの機器を用いた治療でも可能であるものの、望む効果を得るには何度か繰り返し施術を受けなければいけない場合もあります。

その点、注入治療は1回の施術で効果を感じやすいのも嬉しいポイントです。

2つ目は「体への負担が少なく、回復期間(ダウンタイム)が短い」という点です。

顔に針を刺すため、内出血があったり赤みや腫れが生じたりすることもありますが、短期間で収まることが多く、手術に比べて体への負担は非常に少ないといえます。

施術当日からすぐに普段どおりの生活が可能です。

3つ目は「施術そのものにかかる時間の短さ」が挙げられます。

施術時間は部位などによって異なりますが、1箇所につき5~10分前後、複数箇所を施術しても1時間前後で終わり、また通院や入院も必要ないのは魅力といえるでしょう。

注入治療の注意点 

ただし、注入治療にはいくつかの注意点もあります。

注入治療に使われる薬剤は、時間が経つと体内で分解されていくため、効果は期間限定です。

年に1~数回のメンテナンスが必要となります。

施術直後に若干の赤みなどが生じる可能性があるほか、アレルギー反応が生じるリスクがあったり、注入する薬剤の種類によっては献血ができなくなったりすることもあります。

このような影響を考慮して妊活中、妊娠中、授乳中の女性は注入治療を受けることができません。

注入治療の種類

注入治療に区分される以下の代表的な施術について、それぞれ簡単にご紹介しましょう。

  • ヒアルロン酸注射
  • ボツリヌス注射
  • コラーゲン注射
  • プラセンタ注射
  • 脂肪溶解注射 

ヒアルロン酸注射 

ヒアルロン酸注射とは、医療用のヒアルロン酸製材(皮膚充填材)を肌やその下の組織に注入する施術です。

ヒアルロン酸はもともと体内にある物質で、時間が経つと分解されていきます。

美容医療のヒアルロン酸製材はヒアルロン酸同士を結びつけた吸収されにくい構造(架橋型)であるため、効果をある程度持続させることが可能です。

また、ヒアルロン酸注射で使用する製材は、さまざまな種類があります。

治療目的や注入する部位などに応じて、製材の硬さやヒアルロン酸の濃度を使い分けています。

ボツリヌス注射

ボツリヌス注射とは、ボツリヌス菌が産生する成分を加工したタンパク質の製剤を注入する施術です。

このタンパク質には、「筋弛緩作用」という「筋肉をリラックスさせる働き」があるため、美容医療だけではなくさまざまな医療分野で活用されています。

コラーゲン注射

コラーゲン注射は、健康な肌を保つのに必要なコラーゲンを注入する施術です。

コラーゲンもヒアルロン酸と同じく、もともと体内にあるタンパク質ですが、加齢とともに減少の一途をたどります。

肌悩みや肌の状態によって、減ってしまったコラーゲンを注入し、補うことが有効な場合もあります。

プラセンタ注射

プラセンタとは「胎盤」のことです。プラセンタ注射は、ヒトの胎盤から抽出した成分を注入します。

美容医療以外に肝臓の病気や更年期障害などの治療にも使用されています。

脂肪溶解注射

脂肪溶解注射は、皮膚の下に少量の薬剤を注入し、皮下脂肪を分解・減らす施術です。

あごなどの小さな部位に効果を発揮しますが、効果には個人差があり、複数回の注射が必要になることもあります。

注入治療で期待できる効果 

注入治療で美しく

注入治療によって期待できる効果と、それぞれの効果が期待できる治療法を順にご紹介しましょう。

※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

たるみの改善

たるみ改善効果が期待できる注入治療は、ヒアルロン酸注射です。

たるみは加齢によって、肌をはじめ顔の奥…骨や皮下脂肪が変化することで生じます。例えば、骨の場合は骨密度が減り、形が変わってしまうのです。

顔の骨は「土台」として筋肉や皮下脂肪・皮膚を支えているので、減ってしまうと、各層を十分に支えられず、重力によって垂れ下がり、たるみを引き起こしてしまいます。

加齢が進むことによる変化

骨が減ってしまった部分に硬さのあるヒアルロン酸製材を注入することで、土台を補強し、たるみ改善を図ります。

しわの改善

しわの改善効果が期待できる注入治療には、以下の選択肢があります。

ヒアルロン酸注射は、ほうれい線やおでこなどにできる深いしわにも効果を発揮します。注入したヒアルロン酸によって、しわや溝を内側から押し上げ、目立ちにくくします。

ボツリヌス注射は、筋肉の緊張をゆるめ、リラックスさせる効果を持つことから、表情筋の緊張が原因で生じる眉間や目尻の表情じわの解消に有効です。

コラーゲン注射は、加齢や乾燥による目周りなどの小じわ対策に選択されることがあります。

フェイスラインやあごの形成

フェイスラインやあごを整える輪郭形成に有効な注入治療は以下の通りです。

ヒアルロン酸注射は、硬さのあるヒアルロン酸製材を注入して輪郭を整えたり、加齢により減ってしまった顔の骨を補ったりすることができます。骨格の状態を若い頃と同じように整えられるのがメリットです。

脂肪溶解注射は、フェイスラインのもたつきや二重あごなどの原因となる皮下脂肪をピンポイントで溶解させることができます。

肌質改善

肌質改善に役立つ注入治療は以下が挙げられます。

  • ヒアルロン酸注射
  • コラーゲン注射
  • プラセンタ注射

柔らかいタイプのヒアルロン酸製材やコラーゲン製材などを注入することで、肌のうるおい(保水性)やハリ(弾力性)向上が期待できるでしょう。

さらに、肌質が改善することで小じわ解消も可能となります。

ほかにはプラセンタを注射し、血流促進させることで肌の代謝を高め、美肌を目指す施術もあります。

気になる噂や疑問に回答!注入治療Q&A

比較的少ない負担で、施術後から効果を感じやすい注入治療に魅力を感じる人は多いでしょう。

その一方でネットなどの口コミでは、不安になるような噂もチラホラ見受けられます。

そこで、注入治療のなかでも代表的なボツリヌス注射とヒアルロン酸注射の噂や疑問について、奥先生に答えていただきました。

Q1.顔が不自然になってしまうことはない?

必要な知識や技術をしっかり持った医師が、適切な製材を適切な位置・量を注入すれば、自然に仕上がります。

ほうれい線をヒアルロン酸注射で治療する場合を例に説明しましょう。

従来は、ほうれい線の溝にヒアルロン酸を注入して、溝を目立たなくするまたは、頬の中央にヒアルロン酸を注入し、ボリュームを出すことでほうれい線の溝を伸ばして目立たなくするという方法が主流となっていました。

しかし、ほうれい線がハッキリと目立つ場合、どちらの方法でも顔のバランスが悪く見え、不自然な印象を与えてしまいかねません。

注入治療の注入方法の変遷 

ほうれい線治療を例にした、注入治療の注入方法の変遷

その理由は、ほうれい線が現れる主な原因の「たるみ」にあります。

たるみは、加齢によって起こる顔全体の変化なので、ほうれい線だけでなく、他の部位にもアプローチする必要があるのです。

老化のメカニズムに基づいて顔全体を治療することで、若々しい印象を取り戻すことが可能となります。

現在はこのメソッドに沿って治療が行われるようになり、医師も日々トレーニングを重ね、薬剤も進化しています。

一方で、より満足できる仕上がりを目指すためには、医師と患者さんのセンス(感覚)が一致することも重要です。

クリニックのWebサイトに載っている症例写真や、カウンセリングに行った際クリニックのスタッフの顔をチェックしてみてください。

スタッフはそのクリニックで治療を受けていることが多いので、センスが合うかを確認する指標になるでしょう。

Q2.薬剤が効きすぎてしまうのが不安… 

薬剤が効きすぎてしまい、笑顔が不自然になった女性

ボツリヌス注射では特に、どれくらい筋肉が薬剤に反応するかには個人差があります。

そのため、薬剤が効きすぎてしまうことがあります。

当院では初めて注入治療を行う場合、調整(リタッチ)することを前提に、やや少なめに薬剤を注入することで対応しています。

数日後、効果が現れてきたら、改めて顔の状態をチェックし、必要に応じて追加の注入などを行います。

患者さんの通院の手間は増えますが、薬剤の効きすぎで表情などが不自然に見えるのを防ぐことができます。

なお、過去薬剤が効きすぎた経験のある人は、施術前にそのことを伝えていただけると非常に参考になります。

Q3.ヒアルロン酸注射で、しこりが残る場合があると聞いたことが… 

適切に施術していれば通常は起こりづらいのですが、1箇所に大量に製材を注入しすぎた場合、しこりが生じてしまうことがあります。

見た目には目立たなくても、触ると肌がボコボコしているように感じられることもあるでしょう。

そんな万が一の場合でも、通常のクリニックであればアフターフォローで対処してもらうことが可能です。

不安があれば、カウンセリングの際に質問してみてください。その回答がクリニック選びの参考になると思います。

Q4.注入した薬剤がなくなると、治療前よりしわがひどくなったりしない?

薬剤の効果が薄れたことで、しわなどがひどくなることはないので、安心してください。

時間が経つと、注入したボツリヌストキシンやヒアルロン酸は体内で分解されるため、治療の効果は徐々に薄れていきます。

治療前…元の顔の状態に戻っただけで、しわやたるみが悪化することはありません。

注入治療は『何もしない時よりも老化のスピードをゆるやかにしている状態』です。

老化のスピードが本来の速さに戻ると、人によってはしわが増えたように感じるのかもしれません。

Q5.注入治療は顔全体でやったほうが効果はある?

部分的に治療するより、顔全体を治療することをおすすめします。

例えば、ヒアルロン酸注射でほうれい線を治療する場合、ほうれい線の溝にヒアルロン酸を注入して、溝を目立たなくすること自体は可能です。

しかし、ほうれい線がハッキリと目立つ場合、溝だけを埋めると、顔のバランスが悪く見え、不自然な印象を与えてしまいかねません。

その理由は、ほうれい線が現れる主な原因の「たるみ」にあります。

たるみは、加齢によって起こる顔全体の変化なので、ほうれい線だけでなく、他の部位にもアプローチする必要があるのです。

顔全体を治療することで根本の原因を正しく対処でき、若々しい印象を取り戻すことが可能となります。

Q6.効果を実感できるのはどれくらいの期間?

個人差がありますが、一般的にボツリヌス注射は3~4カ月ほど効果が持続します。

ヒアルロン酸注射については、通常12~24カ月程度で徐々に効果が消えていきますが、治療目的や製材の種類などによって、効果の持続期間は異なります。

効果が薄れてきたと感じたら、クリニックでメンテナンスをする習慣を続けると、少ない薬剤の量で理想の状態を維持しやすくなります。

ちなみに、体の代謝がよいとヒアルロン酸が体内に吸収されやすいことがわかっています。

運動をたくさんしている人や、サウナが好きな人などは、ヒアルロン酸注入治療の持続期間が短くなるかもしれません。

Q7.注入治療はずっと続けないといけないの? 

ずっと注入治療を続けないといけないことはありません。

治療の効果が持続している間、肌の老化スピードは、何もしない状態よりもゆるやかになっています。

若々しさをキープしたいと思う間は、定期的にクリニックに通って注入治療を続けておいたほうがよいでしょう。

「治療を続けていると1回あたりの薬剤の持続時間が短くなる」という噂もありますが、そんなことはないので、安心してください。

Q8.周りに気づかれないように治療できる? 

気づかれないよう、徐々に治療することは可能です。

しかし、あまり気にしなくてもいいのかもしれません。

ハッキリと効果を感じられる治療をした場合でも、自然な仕上がりであれば、ネガティブな反応があったという話をほとんど聞かないためです。

人は意外と他人の顔を覚えていないもので、久々に会った場合などは「変わらないね」とポジティブに受け取られることがほとんどのようです。

Q9.治療はいつごろから始めるのがベスト?

老化を感じ始めたら、『早ければ早いほどベスト』です。

美容医療は、何歳ごろから受けたほうがいいという決まった時期はありません。

早めに治療すればするほど、負担が少なく、老化のスピードをゆるやかにすることができます。

しわやたるみなど、セルフケアでは改善が難しい悩みを感じたら、まずは美容クリニックでカウンセリングだけでも受けることをおすすめします。

ヘアケアやネイルケアを取り入れるのと同じように、美容クリニックで医師に相談しながら行う肌の治療やケアを取り入れていくことで、5年後、10年後も自分に自信が持てて、楽しく歳を重ねていけると思います。

実は魅力が多い注入治療。だからこそ、頼りになる医師を見つけて!

注入治療を検討するなら、まずは医師に相談してみよう

注入治療は少ない治療回数で効果を実感しやすく、回復までのダウンタイムも比較的短いので、施術を受けたその日から効果を実感する方も多いなど、魅力が多い治療法です。

しかし、手軽に受けられるとはいっても、針を使用するため、術後は多少の内出血をともなう場合がありますし、場合によっては腫れ・赤み・かゆみ・痛みが生じることもあります。

また、プラセンタ注射を利用すると献血ができなくなります。

だからこそ、副作用なども確認し、信頼のおける医師のもとで治療を受けることが大切です。

注入治療を検討している場合は、経験豊富な医師のカウンセリングを受けるなどして、これから先、何年にもわたって自分の大切な顔の治療を任せられる、頼りになる医師を見つけていきましょう。

監修・取材協力

ヒルズグレイスクリニック 副院長 奥 美香子 先生

ヒルズグレイスクリニック 副院長 奥 美香子 先生

福島県立医科大学卒業。大学病院等で形成外科研修。その過程で注入治療に魅せられ、都内美容クリニックにて美容皮膚科、美容外科診療に従事。2015年4月あざみ野ヒルズスキンクリニック開院。2022年3月より医療法人社団光悠会 ヒルズグレイスクリニックを開院し、副院長に就任。

2018年より、医師にヒアルロン酸治療やボツリヌス治療を指導するAllegany Medical Institute Japan Faculty(アラガン認定注入指導医)として、安全・安心な注入治療の推進活動を行っている。

ヒルズグレイスクリニック

住所:〒225-0011 神奈川県横浜市青葉区あざみ野2丁目30番 あざみ野三規庭1F

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