ほうれい線のヒアルロン酸注射は、ほうれい線にヒアルロン酸を注入し、改善を目指す施術です。
ただし、施術のデメリットや、注入後の不自然さに対する懸念から、クリニックへの相談をためらう方もいるでしょう。
そこで今回は、ほうれい線のヒアルロン酸注射の効果やリスク、主な疑問点について、KAGA CLINICの加賀 裕基 先生の見解を伺いました。
監修・取材協力:加賀 裕基 先生(KAGA CLINIC 院長)
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ほうれい線のヒアルロン酸注射は、ほうれい線にヒアルロン酸を注入し、改善を目指す施術です。
ただし、施術のデメリットや、注入後の不自然さに対する懸念から、クリニックへの相談をためらう方もいるでしょう。
そこで今回は、ほうれい線のヒアルロン酸注射の効果やリスク、主な疑問点について、KAGA CLINICの加賀 裕基 先生の見解を伺いました。
監修・取材協力:加賀 裕基 先生(KAGA CLINIC 院長)
ほうれい線の主な原因は、加齢などの影響で肌や、皮下脂肪、骨などの組織が崩れることだといわれていますが、なかでも大きく影響するのが骨の萎縮(縮むこと)です。(1)
※イメージ
文献(1)を参考に作成
年齢とともに骨密度が減少し骨が縮むと、肌(表皮・真皮)や皮下脂肪を支える「土台」としての役割を果たせなくなり、顔にそれまでなかったしわや線が現れるようになります。その一つが、ほうれい線です。(1)
※イメージ
文献(1)を参考に作成
また、加齢によって水分を保つ力が減るなどして、肌そのものにたるみやハリ不足が生じることも、ほうれい線ができる一因となります。(1)
顔の脂肪は、「コンパートメント」とよばれる、いくつかの区画に分かれています。
脂肪の区画の中でも、とくに小鼻の横から口元にかけての部分にある「ナゾラビアルファット(Nasolabial fat compartment)」や、頬骨のあたりにある「メディアルチークファット(Medial cheek fat)」が、加齢とともに下がってくると、ほうれい線が深く見えやすくなる原因となります。(1)
文献(1),(11)を参考に作成
とくに、顔を縦に3つに分けた際、真ん中(目の内側から頬骨のあたり)にあたる部分は、肌と骨とをつなぐ組織が他の部位に比べて少なく、比較的たるみやすいエリアといわれます。(1)
このため、加齢によって脂肪が下垂しやすく、ほうれい線がより目立つ原因となります。(1)
続いて、ほうれい線などの治療に使われる「ヒアルロン酸」について伺いました。
ヒアルロン酸は、肌(皮膚)、腱、筋肉、軟骨、脳、血管など、私たちの体内に広く存在する物質です。(2)
1グラムあたり約6リットルもの保持ができるといわれるほど、非常に高い保水力を持つのが特徴で、この性質を利用して、ヒアルロン酸は関節の治療や目の治療をはじめ、さまざまな医療分野で活用されています。(2)
美容医療では、ヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)によって、ほうれい線のようなたるみじわや、乾燥による小じわなどを目立たなくさせる効果が期待できます。(2)
ほうれい線の改善が期待できる施術の一つとして、広く行われているヒアルロン酸注射には、以下のメリットが挙げられます。
※1 施術後から回復までの期間のことで、施術前の生活を取り戻せるまでの期間
※2 監修医師の臨床経験に基づく
※3 本邦未承認品であり、使用を推奨するものではありません
ヒアルロン酸注射には、以下のようなリスクやデメリットも存在します。(4)
そのほか、ヒアルロン酸注射を行った場合の一般的な副作用として、内出血、腫れ、むくみ、赤み、かゆみ、痛み、不自然な凹凸などの症状が現れることがあります。(4)
また、ごく稀に重篤な有害事象(皮膚の循環障害や壊死など)が起こることもあれば、注入後、時間が経ってから、感染症やアレルギー症状、肉芽腫、血腫、感染、注入部位の着色または退色、神経圧迫、塞栓、膿疹形成、過敏症などが起きることも稀にあります。(4)
これらの症状や、「いつもと違う」と感じる変化があった場合は、必ず治療を受けたクリニックに連絡してください。
※監修医師の臨床経験に基づく
ヒアルロン酸注射でほうれい線を目立たなくする方法を、加賀 先生に解説していただきました。
※文献(1)を参考に作成
1つ目は、ほうれい線の溝そのものにヒアルロン酸を注入して、溝を浅くする方法です。
ただし、溝だけを埋めると不自然な仕上がりになることもあります。(2)
2つ目は、加齢でボリュームロスした頬の中央にヒアルロン酸を注入し、頬にボリュームを出すことで、ほうれい線を間接的に目立たなくさせる方法です。(1)
ただし、注入しすぎると頬がパンパンになり、いわゆる「ヒアル顔」のような、不自然な仕上がりになる可能性があるため、注意が必要です。(1)
3つ目は、老化による顔全体のボリュームロスを考慮し、複数のポイントにヒアルロン酸を注入して顔全体のバランスを整える方法で、(1) トータルフェイシャルトリートメント(Total Facial Treatment)ともよばれます。
こめかみや頬などボリュームが失われた箇所へ注入したり、たるみによる影を目立たなくさせたりすることで、顔全体のバランスを保ちつつ、自然に若々しい印象を目指せます。(1)
4つ目は、小鼻の横のへこみ(鼻翼基部)にヒアルロン酸を注入し、へこみや影をなくすことで、ほうれい線を目立たなくさせる方法です。(1) 「貴族フィラー」ともよばれます。
若い人や、鼻翼基部のくぼみが大きい人に有効なアプローチです。(1),(3)
鼻翼基部に注入する際は、骨膜上に注入することで、より安全にボリュームを出し、ほうれい線を目立たなくできるといわれています。(3)
続いて、ほうれい線のヒアルロン酸注射を行う際の、一般的な流れをご紹介します。
ほうれい線へのヒアルロン酸注射は、以下のステップで行われます。(1)
※監修医師の臨床経験に基づく
ヒアルロン酸製材には、硬さなどが違うさまざまな種類があり、注入部位や目的に応じて使い分けます。(1),(3)
ほうれい線へのヒアルロン酸注射には、鼻翼基部などの深い層(骨膜上)には硬めの製材を、やや浅い層(脂肪層)には柔らかめの製材を使用するなど使い分けます。
製材を使い分けることで表情筋を動かしたときにボコボコしにくく、自然な仕上がりになりやすいといわれています。(1),(3)
当院では、硬さ以外に、国の承認を得ているか、流通が安定しているかも考慮しています。使用製材について気になる点があれば、施術前に確認しましょう。
※監修医師の臨床経験に基づく
ヒアルロン酸注射後24時間は、激しい運動、喫煙、日光や高温への長時間の曝露、飲酒は避けてください。(6)
また、注入した製材が移動して位置がずれるのを防ぐため、処置後しばらくは注入部位のマッサージや圧迫を避けることも推奨されています。(2)
なお施術後2~3日は、注入部分がふくらみ気味になる場合もありますが、1週間ほどで自然な仕上がりに落ち着くでしょう。(1)
少し様子を見て、それでも仕上がりが気になる場合はあらためてクリニックに連絡しましょう。
ヒアルロン酸注射を希望する際の、クリニック選びのポイントを伺いました。
安全かつ自然な仕上がりには、医師の解剖学に関する深い知識と確かな技術力が不可欠です。
とくに顔には血管や神経、脂肪層などが複雑に存在するため、それらの位置や構造を正確に理解している医師を選びましょう。(1),(4),(5)
医師が解剖学に基づいた知識や技術の向上に努めているかは、クリニックのウェブサイトや医師のSNS、ブログなどを見て、解剖学の勉強会や技術セミナーに積極的に参加しているかなどを確認するのも良い方法です。
また、クリニックや医師の技術力を見極めるうえで、症例写真は非常に重要な判断材料となります。
症例写真を見る際は、施術の前後で同じ照明条件・同じ角度で撮影されているかを確認しましょう。
同じ条件で撮影された写真であれば、ヒアルロン酸注射によってほうれい線の影がどのように改善したかなど、より正確な変化を読み取ることができます。
注意が必要なのは、施術後の写真が不自然に明るく加工されているケースです。強いライトを当てて顔の凹凸や影を飛ばすなど、実際以上の効果を見せようとしている可能性が疑われる写真には要注意です。
※監修医師の臨床経験に基づく
ヒアルロン酸には多数の製材があり、注入する部位や目的によって適材適所に使い分けが必要です。(1),(5)
治療を受ける際には、使用する製剤や、部位ごとの使い分けについて確認しましょう。使用製材の質問に対し、特徴や選択理由を丁寧に説明してくれるクリニックは信頼できるといえます。
最後に、ほうれい線へのヒアルロン酸注射に関するよくある疑問についても教えていただきました。
ヒアルロン酸注射の効果を実感する期間は、注入部位や回数、体質などによりますが、12か月程度が目安となることが多いです。(7)
当院では、初めての患者さんは半年から1年後に再度注入に来る場合が一般的です。
※監修医師の臨床経験に基づく
ほうれい線へのヒアルロン酸注射の痛みは、個人差がありますが、注射前に麻酔を行うことで痛みを軽減できます。(8) 多くのヒアルロン酸製材にはあらかじめ麻酔成分が含まれており、注入中も痛みが和らぎます。(1)
クリニックによっては、冷却や振動で痛みを軽減する工夫も行われています。(1)
ヒアルロン酸注射で周囲にバレるかどうかは、主に注入量と医師のデザイン力・技術力に左右されます。
ほうれい線は、唇や頬に比べてバレにくい部位ですが、浅い層に注入しすぎたり硬すぎるヒアルロン酸を入れたりすると、笑ったときに不自然な凹凸が出ることがあります。(4)
施術前に、「バレにくいナチュラルな変化が希望」と医師に伝えることで、自然な仕上がりを目指し、バレるリスクを抑えられます。
※監修医師の臨床経験に基づく
ほうれい線へのヒアルロン注射後、仕上がりに満足できなかった場合、ヒアルロン酸を溶解させる薬剤(ヒアルロニダーゼなど)を注入すれば、すぐに溶かすことができます。
※本邦未承認品であり、使用を推奨するものではありません。
仕上がりは、施術後にまとめて確認するだけではなく、注入の途中で鏡を見ながら細かくチェックできると理想的です。
これにより、バランスを見ながら微調整し、より希望に近い仕上がりを目指せます。可能であれば施術途中の確認に対応してくれるクリニックを選ぶことをおすすめします。
※監修医師の臨床経験に基づく
ほうれい線のヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)にかかる値段は、注入量や製材の種類、クリニックによって異なります。
当院では、ほうれい線のヒアルロン酸注射は、1cc程度でお支払い額は7万円から15万円程度になることが多いです。
必要な注入量や費用について、事前に医師としっかり話し合い、納得したうえで治療を受けましょう。
※監修医師の臨床経験に基づく
参考文献
(1) 古山 登隆: 解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社. 2020
(2) 古山 登隆,海野 由利子: 目もとの上手なエイジング―眼瞼下垂から非手術的美容医療, エイジング世代のメイクアップまで―. 全日本病院出版会. 2021.
(3) 岩城 佳津美: 美容皮膚医学BEAUTY2020, 3(1), 14ー21
(4) 大慈弥 裕之: ヒアルロン酸注入治療安全マニュアル. 克誠堂出版. 2018
(5) 岡田 雅,衣笠 哲雄: 美容皮膚医学BEAUTY2023, 6(1), 6-11
(6) 大慈弥 裕之: 美容皮膚医学 BEAUTY. 2021. 4(11): 19-24
(7) Raspaldo H, et al. :J Drugs Dermatol. 2015. Dec; 14(12): 1444-52
(8) 征矢野 進一: 日本香粧品学会誌. 2013. 37(1): 25
(9) 川田 暁: 美容皮膚科ガイドブック第2版: 中外医学社. 2019
(10) 當山 拓也, 當山 護, 古屋 恵美: PEPARS No.170: 29-36. 2021
(11) 杉野 宏子: 美容皮膚医学BEAUTY6(3)2023. 38-47.
2012年 岐阜大学医学部医学科卒業。名古屋第二赤十字病院、品川美容外科名古屋院、アクネスタジオ大阪梅田 院長などを経て、2023年にKAGA CLINICを開設。誰よりも丁寧な施術と安心のアフターケアを大切にし、「本当に安心して通えるクリニック」「本当に信頼できる医師」を目指して、日々診療にあたっている。
KAGA CLINIC
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1丁目53-5 IR代々木 地下1階