年齢を重ねるごとに目元や口元、フェイスラインなどで気になる「たるみ」。原因やセルフケアに関するさまざまな情報が取り上げられていますが、どれも真実なのでしょうか。ここでは形成外科医の監修の元、正しい原因や対策まで解説します。

監修・取材協力:當山 拓也 先生(当山美容形成外科 院長)

たるみの原因

エイジングのお悩みの上位に挙がる「たるみ」が生じてしまうのは、身体の外側と内側それぞれに原因があります。詳しく説明しましょう。

紫外線

紫外線は皮膚(真皮)にあるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を変性させたり、これら肌のハリを保つ成分を産生する線維芽細胞も損傷させてしまいます。この現象を「光老化」と呼び、結果、皮膚が厚くゴワゴワになり、弾力が失われ、たるみにつながってしまうのです。

加齢

私たちの顔は骨・筋肉・皮下脂肪(皮下組織)・真皮(皮膚)・表皮(皮膚)の5つの層から成り立っており、たるみは主に加齢による変化で起こります。特に大きく影響を及ぼすのは以下の層です。

1. 骨密度が減少し、顔の骨が縮む

加齢によって体だけでなく、顔の骨も骨密度が減り、縮んでしまうことをご存じですか?具体的に説明すると、こめかみや眼窩(がんか:眼球が入っているくぼみ)のまわりは広がり、頬・あごのまわりの骨はへこみ、やせこけます。

顔の骨は「土台」として筋肉や皮下脂肪・皮膚(真皮・表皮)を支えていますが、このような衰えで、各層を十分に支えられず、重力によって垂れ下がり、たるみを引き起こすのです。

2. 皮下脂肪の量の減少や移動(下垂)

皮下脂肪が元の位置から下に移動(下垂)し、量が減ることでもたるみは生じてしまいます。額・こめかみ・目の下・頬は皮下脂肪の移動が起きやすく、フェイスラインや口元はこれらの垂れ下がってきた皮下脂肪によってたるみを感じやすくなります。

3. 支持靭帯(リガメント)とSMAS(スマス)の衰え

顔の皮膚や表情筋と骨をつなぎ、支える「支持靭帯(リガメント)」と皮下脂肪と筋肉の間に存在する筋膜「SMAS(スマス)」。

加齢とともに、これらが衰えると、上にある皮下脂肪がずり落ち、靭帯の上に乗りかかり、下垂してたるみにつながってしまうのです。

4. 表情筋の衰え

筋肉の減少や衰えで皮下脂肪や皮膚を支えられず、たるみにつながることもあります。加齢はもちろん、マスク生活で表情をつくることが減ると筋肉が衰えてしまうので注意しましょう。

5. 肌のハリや弾力性の低下

加齢はもちろん、先ほど述べた紫外線ダメージが長年蓄積することで真皮(皮膚)の変化が起こります。

加齢で真皮に影響を及ぼすのが、女性ホルモンの「エストロゲン」です。このホルモンは肌の弾力性を保つコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸生成に関っていますが、40代以降急激に分泌が減少してしまいます。さらに、これらを産生する線維芽細胞も損傷または機能低下が起こり、肌のハリがなくなってしまい、たるみが目立ってしまうのです。

たるみが起きやすいパーツ

たるみを感じやすい代表的な部位としては、以下が挙げられます。 

    • 目の下
    • 目頭から頬
    • 口元
    • フェイスライン
    • あご

    頬が垂れ下がったように見えるほうれい線や、顔と首の境界があいまいになる…など、いずれも見た目年齢を一気に引き上げてしまう肌悩みです。

    誤ったケアに要注意!? 医師が明かす、たるみ対策の誤解と真実

    たるみ改善を謳うさまざまな方法が取り上げられています。よく目にする対策について當山先生に伺ったところ、驚きの事実が判明しました。

    スキンケア/保湿・紫外線対策

    たるみは肌の奥…骨や皮下脂肪などの影響を受けて生じるため、残念ながらスキンケアで改善は難しいといえます。とはいえ、たるみを目立たせる原因となる、肌のハリや弾力低下を防ぐためにはスキンケアや紫外線対策は有効です。

    スキンケアは手やコットンで叩き込んだり、こするのは絶対に避け、優しく丁寧に行ってください。また高機能な化粧品だからと、量を控えたりせず、たっぷり使用しましょう。

    紫外線対策の基本は日焼け止め ですが、塗り直す時間や使用量、塗る順番など正しく使えているか見直してみましょう。日焼け止めだけでは紫外線を100%防ぐことはできないので、以下のような工夫も大切です。

    • 気象庁のUVインデックス(UV指数)をチェック
    • できるだけ日陰を利用する
    • 日傘や帽子、サングラスを使う
    • 紫外線の強い時間帯の外出を避ける

    マッサージ・表情筋を鍛える

    マッサージや表情筋を鍛えることは、医学的にたるみ改善につながる根拠がなく、おすすめできません。

    表情筋は、毎日会話や食事で動かす程度で十分です。鍛えるためにくり返し表情筋を伸縮させると、筋肉を傷つけてしまう危険もあります。

    また、マッサージは肌をこすって、摩擦を起こしやすいため、肌にダメージを与えるリスクがあります。顔のむくみを取り除く、リンパの流れをよくするためにマッサージを行う際はやりすぎないよう注意してください。

    生活習慣の見直し・改善

    たるみの直接的な改善にはつながりませんが、肌の健康を保つ上で生活習慣は大切です。具体的なポイントをご紹介します。

    ・食事、栄養素

    美肌に役立つ代表的な栄養素としては、肌や筋肉をつくるタンパク質と、肌をダメージと老化から守る抗酸化ビタミン(ビタミンA・E・C)があります。意識的に摂取したいものの、これらの栄養素のみを摂ればよいという訳ではありません。プロテインなどの栄養補助食品も活用しつつ、栄養バランスを大切にしましょう。

    ・タバコ

    長期間にわたる喫煙は、たるみなどの肌の老化に影響を及ぼします。要因として、卵巣機能(女性ホルモン)への悪影響、体の末梢への酸素供給の減少,ビタミンCの分解を促すなどが引き起こされるためです。受動喫煙でもリスクがあるので、注意してください。

    ・姿勢

    顔の向きによって、皮下脂肪が重力で垂れ下がりやすくなります。デスクワークやスマートフォンなど下を向いて画面を見る習慣が続くと、肌は重力の影響を受けやすく、たるみを加速させる可能性も。パソコンやスマートフォンなどの画面を見る位置は上げる意識をしてみましょう。

    たるみ対策は、セルフケアに加え美容医療の力も!

    たるみは、主に加齢によって起きる肌の奥の変化で現れるため、自分自身の努力、セルフケアでは対処が難しいものです。良かれと思ってやったケアが実は逆効果になることも判明しました。

    たるみを改善させたいなら、美容皮膚科・外科の治療を視野に入れましょう。ここで具体的な治療法を一部ご紹介します。

    ※国内未承認治療を含みます

    代表的な治療法①/ヒアルロン酸注入治療

    ヒアルロン酸注射 はたるみ治療においてポピュラーな施術の一つです。加齢によって皮下脂肪が垂れ下がり、ボリュームが減ってしまった頬などの骨の上に医療用のヒアルロン酸を注入し、ボリュームを補います。顔の凹凸を少なくしたり、フェイスラインを形成する目的でも行われます。

    代表的な治療法②/高周波・超音波の照射治療

    具体的な施術としてサーマクールや高密度焦点式超音波治療(HIFU・ハイフ)が挙げられます。いずれも高周波や超音波を照射し、熱エネルギーの刺激により、皮膚の引き締めやコラーゲンやエラスチン産生の活性化を狙う施術です。たるみの引き締めにも効果的です。

    その他の治療法

    たるみの重度や顔の状態、そして求める効果によって、適しているたるみ治療はさまざまです。治療法は以下のように幅広い選択肢があります。ご自身の状態を正しく見極め、最適な治療を受けるために、まず医師の相談・診察を受けることをおすすめします。

    たるみ改善の近道!頼りになる医師・クリニックをみつけて

    たるみが気になり始めたら、まずセルフケアで対処を始める人がほとんどかと思います。セルフケアは必要ですが、誤ったケアを避け、正しく対処するためにまずは医師に相談・診察を受けてみませんか。

    クリニックを検討する際は、医師自らがカウンセリングを行っているか、をひとつの指標にするとよいでしょう。また医師への相談・カウンセリングを重ねられるかも見極めるポイントの一つです。

     

    参考文献

    • 川田 暁:美容皮膚科ガイドブック第2版.中外医学社,2019
    • 安田 利顕・漆畑修:美容のヒフ科学改訂10版.南山堂,2021
    • 病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科第3版.メディックメディア,2016
    • 日本産婦人科学会:HUMAN+ 女と男のディクショナリー
    • 古山登隆:解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法.メディカルレビュー社,2020
    • Bella Pelle Vol.2 No.4.メディカルレビュー社,2017
    • 環境省:紫外線環境保健マニュアル2020
    • 日本循環器学会:禁煙ガイドライン(2010年改訂版)

    監修・取材協力

    当山美容形成外科 院長 當山 拓也先生

    当山美容形成外科 院長 當山 拓也 先生

    東京医科大学卒業後、東京大学医学部形成外科学教室入局。東京警察病院、杏林大学形成外科等で研鑽を積む。リッツ美容外科・東京院、東京西徳洲会病院医長、アヴェニュー表参道クリニック副院長を経て、2016年から当山美容形成外科副院長を務め、翌年より院長に就任。

    親子3代にわたって、地域密着の診療を続け、2022年で開業70周年を迎える。

    当山美容形成外科

    住所:〒900-0015 沖縄県那覇市久茂地2丁目11−18当山久茂地川医邸4・5階

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