一時期、「マスク美人」という言葉が流行りましたが、マスクをしているときは若々しく可愛らしい印象なのに、外した途端、「思ったより老けてる!?」と思われた、悲しい経験をしたことのある人もいるのでは。

実はマスクで覆われる下顔面は見た目年齢を左右し、顔全体の印象を決定づける部分といわれています。

メイクやセルフケアでカバーできればよいのですが、なかなかそれがうまくいかず悩んでいる人もいるでしょう。

どうすれば下顔面と顔全体を整えて、美しく見せることができるのでしょうか?御茶ノ水こどもレーザークリニック 院長の戸田 圭彦 先生に教えていただきました。

監修・取材協力:戸田 圭彦 先生(御茶ノ水こどもレーザークリニック 院長)

「最近、老けた気がする…」その原因は「顔の下部」にある!?

年齢を問わず、「今日はなんだか老けて見える気がする」「あの人、年齢のわりに老けた印象だな」と感じるとき、その原因の多くは「下顔面(かがんめん)」とよばれる、顔の下部にあることが少なくありません。老化にともない、やせてほしくないところがやせることで影が入り、顔が暗く見えることで疲れた印象に見える方がいます。

下顔面には、ほうれい線マリオネットラインや人中、口角、あご(フェイスライン)といった、見た目年齢を左右するエイジングサインがでやすいパーツが集中しています。(1)

まずはこれらのパーツが具体的に、どのように見た目年齢に影響するかを戸田 先生にうかがいました。

ほうれい線

ほうれい線は、鼻の横から口角脇に「ハ」の字に現れるラインで、医学用語では鼻唇溝(びしんこう)とよばれます。

ほうれい線が目立って見える一因には、骨格や歯並び、筋肉の付き方など生まれながらの顔立ちによる影響もありますが、基本的には、加齢とともに生じる肌のたるみ(下垂)でできる「たるみじわ」の一つです。ほうれい線が目立つと老けて見えるのは、そのためです。(1)

顔の横から口角にかけてハの字に伸びる、ほうれい線が目立つ女性のイラスト

マリオネットライン

口角からあごに向かって下へ伸びるラインを「マリオネットライン」とよびます。医学的用語ではなく、マリオネット人形の口元と似ていることからよばれている名称です。(1)

マリオネットラインも「たるみじわ」の一種で、顔の皮下脂肪が多い人に現れやすく、年齢を重ねるにつれて顕著になっていく傾向があります。(1)

口角からあごに向かって下向きに伸びるマリオネットラインが目立つ女性のイラスト

唇・人中

唇は年齢を重ねるごとに縦幅は狭く(薄く)なり、横幅は広がることが明らかになっています。(2) つまり、まるで平たい座布団のように、唇が薄く広がってしまうのです。

唇のボリュームがなくなると、鼻の下の「人中」とよばれる部分も平らになり、のっぺりとした印象を与えてしまいます。

すると、人中が長くなったように見え、さらに老けを感じる一因になります。(1)~(3)

20代と60代の唇の加齢による変化の比較イラスト

文献(1)~(3)を参考に作成

口角

唇周辺の骨や表情筋などの萎縮によって、唇を支える組織が弱くなります。(1)

さらに、重力など下に引っ張られる力の影響で口角が下がってしまいます。下がった口角は、不機嫌で老けた印象を与えがちです。

あご(フェイスライン)

フェイスラインは、横から見たとき、首と顔の境目にうっすらと陰が映るくらいはっきりしていると美しいといわれます。(4) 一方、顔と首の境界がぼやけて、フェイスラインにメリハリがないと、「太っている」「老けている」「顔が大きい」といった印象を与えがちです。

美しいフェイスラインと残念なフェイスラインの比較イラスト

※イメージ
文献(4)を参考に作成

下顔面に集中するエイジングサインをメイクでカバーしきれない理由とは?

こうしたエイジングサインの一部、たとえば唇の薄さは、厚めにリップを塗るなどして、メイクでカバーすることが可能です。

厚めにリップを塗って、薄くなった唇をメイクでカバーしている女性のイラスト

ただ、ほうれい線やマリオネットラインなどのように、メイクでのカバーが難しいものもあります。なぜならこれらは、顔の表面だけでなく、真皮、その下の脂肪層、筋肉、骨など、顔の内側で起きていることが関わっているからです。詳しく説明しましょう。

「顔の内側」で起きる老化

顔は、最も外側にある表皮、その下の真皮、皮下脂肪、筋肉、骨という5つの層から成り立っています。(1)

顔が、外側から順に表皮、真皮、皮下脂肪、筋肉、骨という5つの層で構成されていることを示したイラスト

※イメージ
文献(1)を参考に作成

骨の萎縮

まず、顔の「土台」として筋肉や皮下脂肪・皮膚(真皮・表皮)を支える骨ですが、加齢とともに骨量が減少し、萎縮していくことがわかっています。すると、上にある筋肉や脂肪、皮膚がバランスを失ってしまいます。たとえるなら、骨組みがもろくなったことで家が倒れるようなイメージです。(1)

その結果、頬がくぼんだりコケたり、フェイスラインがたるんだりして、老け顔の原因になります。

顔の土台となる骨の減少を、人が積み重なったピラミッドで表現したイラスト

※イメージ
文献(1)を参考に作成

脂肪の下垂

また、加齢の影響でお腹には脂肪がつきやすくなりますが、顔の脂肪は減少したり、従来の位置から下に移動(下垂)する傾向があります。(1),(5)

とくにフェイスラインや口元には、下垂した皮下脂肪が蓄積し、ほうれい線やマリオネットラインなど、下顔面のエイジングサインの一因になります。(1)

※イメージ
文献(1)を参考に作成

リガメントとSMASの衰え

顔の構造を支える重要な組織として、「支持靭帯(リガメント)」と「SMAS(スマス)」があります。支持靭帯は皮膚や表情筋と骨をつなぐ役割を、SMASは皮下脂肪と筋肉の間に存在する筋膜として支える役割を担っています。加齢によってこれらの組織が衰えると、皮下脂肪を支えきれなくなり、下垂してほうれい線や頬のたるみの原因となります。(1),(6)

若い状態と老化した状態の皮膚断面図

※イメージ
文献(1)を参考に作成

こうした顔の内側に起こる変化を、顔の表面に施すメイクだけでカバーするのは困難です。

下顔面が変化すると、顔のバランスが崩れる

加齢で骨が小さくなると、あごの位置が後退します。(1),(7) すると、鼻先と唇とあご先をつなぐ「Eライン」が崩れ、美しい印象から遠ざかってしまいます。(1),(7)

鼻先と唇とあご先を結んだEライン(エステティックライン)について、あごがでている場合、ベストバランスの場合、口がでている場合の3つの横顔のバランスを比較したイラスト

※イメージ
文献(1)を参考に作成

また、あごの位置が後退し、首からあご先の距離が短くなると、首とあごの境界線が曖昧になり、顔が大きく見える原因にもなります。

左側は、あご先が後退し、首からあご先までの距離が短く境界線が曖昧になっている横顔。右側は、あご先がしっかりでていて、首とあごの境界線がはっきりしている横顔のイラスト。

※イメージ

下顔面の変化のなかには、こうした顔全体のバランスの変化につながるものが多々あり、年々変化が大きくなると、メイクだけではカバーできなくなっていきます。

下顔面を美しく見せるなら美容医療を味方につけよう

エイジングサインは、表面だけでなく骨や皮下脂肪など顔の内側の変化によって起こるため、セルフケアで解決するのは難しいものです。顔の奥にしっかりアプローチしたいのであれば、美容医療を取り入れてみてはいかがでしょうか。

よく用いられる治療法としては以下が挙げられます。(8)

※国内承認薬または機器が存在しない治療を含む可能性がありますが、それらを推奨するものではありません

エイジングサインは複数の要因により生じていることがあるため、お悩みや状態に応じて上記の治療を複合的に行うこともあります。

たとえば、糸リフトでたるんだ皮膚や皮下脂肪を持ち上げ、さらにヒアルロン酸を注入して減少した皮下脂肪や骨を補うといった治療も、老け対策に有効な方法の一つです。(8)

※併用治療の有効性・安全性、またどれくらい期間を空けるか等は検証されておりません

下顔面を美しく見せて、自信を取り戻そう

エイジングサインにお悩みの方は、美容クリニックで相談してみてもよいかもしれません。

美容クリニックで提供される「美容医療」とは、科学的な根拠に基づいた美容ケアです。専門的な知識を持った医師が、顔の状態を診たうえで、一人ひとりにあった治療を提供してくれます。最近は、美容法の一つとして美容医療を活用される方も増えてきています。

なかには先ほど紹介した治療にもあるように、ダウンタイムが少なく、メスなどを用いる外科施術と比較して身体への負担が少ない治療もあります。

※個人差があります

フェイスラインのたるみやほうれい線など、下顔面のバランスを整えたり、エイジングサインに対処したりすることは、見た目の美しさだけでなく、自信を取り戻し、内面から輝くことにもつながるかもしれません。

顔のお悩みがなかなか解決しないという方は、美容医療を活用することもぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献
(1) 古山 登隆: 解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法: メディカルレビュー社. 2020
(2) 安森 春子, 山本 隆斉 他: 日本化粧品技術者会誌. 53(4): 287-296. 2019
(3) 安田 利顕, 漆畑 修: 美容のヒフ科学 改訂10版: 南山堂. 2021
(4) 関谷 秀一: 美容皮膚医学BEAUTY. 6(3): 8-11. 2023
(5) 日本学術会議 健康・生活科学委員会 健康・スポーツ科学分科会「現代社会における諸問題の解決に貢献する健康・スポーツ科学の新展開-120歳まで元気に生き抜くための身心一体科学の提唱」資料4-2. 2011
(6) 白壁 征夫: BellaPelle. 2(4): 14-17. 2017
(7) 古山 登隆: 美容皮膚医学BEAUTY. 4(11): 6-18. 2021
(8) 川田 暁: 美容皮膚科ガイドブック第2版: 中外医学社. 2019

監修・取材協力

御茶ノ水こどもレーザークリニック 院長 戸田 圭彦  先生

御茶ノ水こどもレーザークリニック 院長
戸田 圭彦 先生

2021年昭和大学医学部卒業。昭和大学病院での初期研修を経た後、湘南美容クリニックに入職。美容皮膚科医として注入治療などの技術を磨き、2025年5月、御茶ノ水こどもレーザークリニック 院長に就任。一人ひとりのお悩みに合わせた丁寧な施術を心掛けています。

御茶ノ水こどもレーザークリニック

住所:東京都千代田区神田駿河台二丁目2番地 御茶ノ水杏雲ビル1階

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