「ほうれい線が目立つ原因は?」「ほうれい線を消す一番効果的な方法は?」

ほうれい線は、見た目年齢を引き上げてしまう要因のひとつです。

しかし、ほうれい線の対策方法を見ると、マッサージや顔のトレーニングなどさまざまなケア方法が紹介されており、どの方法が正しいのか分からないという方もいるかもしれません。

本記事では、ほうれい線の原因や対策、治療法についてBIANCA CLINIC 銀座院の南 先生にお話をうかがいました。

監修・取材協力:南 寿美 先生(BIANCA CLINIC 銀座院)

ほうれい線とはどこにある?しわとの違いは?

ほうれい線とは、顔の小鼻から上唇の横にかけて「ハ」の字に現れるラインのことをいいます。

ほうれい線は、しわのひとつである「たるみじわ」に分類されるしわです。実はしわには種類があり、乾燥小じわや表情じわなども存在します。

ほうれい線などのたるみじわは、主に加齢などの影響により、骨や皮下脂肪など肌内部の形状が崩れることが原因で生じます。

ほうれい線が目立つ原因

ほうれい線が生じ、目立ってくるのは、骨や皮下脂肪など肌内部の形状が崩れることが原因ですが、具体的にどのような変化が生じているか見ていきましょう。

加齢による肌のたるみ・ハリ不足

ほうれい線が目立つようになる代表的な原因は、加齢による肌のたるみやハリの不足です。

年齢を重ねると骨密度が減少し、骨が小さくなるため、骨の上にある皮下脂肪や支持靭帯などが垂れ下がり、皮膚も一緒に下がっていきます。これが「肌のたるみ」が生じる要因です。

加えて、加齢とともに肌の真皮層にあるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸が減少し、ハリや弾力性が失われていくことでも、ほうれい線が目立ちやすくなります。

表情筋の衰え

ほうれい線が目立つ一因として、表情筋の衰えも考えられるでしょう。

頬や口元などには、表情筋と呼ばれる表情をつくる筋肉がついています。表情筋は日常的な会話や笑うことなどで自然と鍛えられていきますが、会話が減ったり無表情でいることが増えたりすると衰えやすくなります。

また、表情筋は加齢によっても衰えやすいとされる筋肉です。筋肉が衰える筋肉の上にある皮下脂肪や皮膚が垂れ下がり、ほうれい線を目立たせてしまうかもしれません。

骨格や歯並び、筋肉の付き方などの顔立ち

ほうれい線が目立って見える一因として、骨格や歯並び、筋肉の付き方など生まれながらの顔立ちによる影響もあるでしょう。

例えば、頬骨が高い位置にある人や頬骨の突出が少ない(出っ張りが低い)人は、頬周辺の脂肪がたるみやすく、ほうれい線が目立ちやすい傾向です。

また、口元が前に出ていると口の周りの筋肉が緊張した状態が続き、ほうれい線が深くなりやすいとされています。

姿勢の悪さ・寝方・咀嚼などのクセによる骨格の歪み

ほうれい線が目立って見える一因として、姿勢・寝方・咀嚼などの日頃のクセによる骨格の歪みが考えられます。

具体的には「猫背」「寝るときに左右のどちらか決まった方を向く」「片側だけで咀嚼する」などのクセが挙げられるでしょう。

ただ一時期なクセで起こるものではなく、長年続けてしまった影響によって骨格が歪んでしまうとされています。

肌の乾燥

ほうれい線は肌の乾燥によって目立つ可能性があります。

乾燥した肌にはしわが刻まれやすく、ほうれい線の周辺にしわがたくさん刻まれると、ほうれい線が目立つことにつながってしまいます。

肌が乾燥する要因は、空調、季節による湿度の低下、紫外線などが代表的です。さらに、間違ったスキンケアや食生活の乱れ、喫煙などの生活習慣も肌の乾燥を招くことがあります。

むくみ

ほうれい線が目立つ一因としてはむくみも考えられます。

むくみは、体内に必要以上の水分がたまることによって生じる現象です。むくんで多くの水分を含んだ肌はいつもより重く、垂れ下がりやすいため、ほうれい線の溝がいつもより深く見えてしまう場合があります。

しかし、むくみがほうれい線の直接的な原因になることはありません。

20代でほうれい線が目立ってしまうのはなぜ?

ほうれい線が20代などの若いうちから目立つのは、顔立ちや骨格による影響が大きいとされています。

頬骨の位置や高さなどの顔立ちや、顔の左右差などによる骨格の歪みが影響して、ほうれい線が目立って見えてしまうのです。

そのほか、無理なダイエットによる影響も、若いうちからほうれい線が目立つ原因の一つといわれています。

過度な食事制限を伴う過激なダイエットを行うと、肌の健康を保つのに十分な栄養が得られず、肌が乾燥したりハリが保たれなくなったりして、ほうれい線が目立ちやすくなることがあります。

なお、加齢によって骨が痩せたりすることで、たるみじわにつながっている可能性はほとんどないといって良いでしょう。

ほうれい線をなくすには?対策に関する意外な落とし穴

ほうれい線を消す方法として、巷ではさまざまな対策が紹介されています。しかしなかには、効果が期待できないものや、かえってほうれい線が目立ってしまう方法も存在します。南先生に詳しく教えていただきました。

リンパマッサージやツボ押し

ほうれい線を目立たなくさせる方法としてよく紹介されるのが、リンパマッサージです。

リンパマッサージは全身に流れるリンパ液の流れをよくするために行われる方法の一つで、むくみの改善に効果があるといわれています。そのため、むくみが原因でほうれい線が目立っている場合には、改善につながる可能性があるでしょう。

人前に立つ機会や撮影など、大事な予定が控えているときに頼ってみるのは良いかもしれませんが、あくまで効果は一時的です。

またリンパマッサージ以外のマッサージは、医学的に改善につながる根拠が明確でなく、あまりおすすめできません。力を入れすぎたり長時間行ったりなど、間違った方法で続けると、肌を支える靭帯がゆるみ、かえってたるみを生じさせてしまうこともあります。

ツボ押し

むくみが改善するとほうれい線を目立ちにくくなる可能性はあります。

しかしほうれい線は、加齢による骨の変化によって生じることがほとんどであるため、改善・予防することは期待できないでしょう。

頭皮のマッサージ

頭皮のマッサージがほうれい線の改善・予防に効果があるといわれることもありますが、医学的な根拠は残念ながらありません。

頭皮マッサージは、頭皮をほぐすマッサージの効果と、頭にあるツボを押すツボ押しの両方の効果があるといわれているため、頭皮マッサージを受けると滞っていた頭部の血流が促され、スッキリした感覚を覚える人も多いでしょう。

しかし、ほうれい線を目立たせる原因である肌のたるみは、骨密度の減少で骨が小さくなることで生じます。頭皮のコリが原因ではないので、リフレッシュ効果は期待できても、ほうれい線の改善や予防効果は見込めないでしょう。

表情筋を鍛えるトレーニング

ほうれい線を改善する方法として、口を大きく開いたりする表情筋を鍛えるトレーニングが紹介されることがありますが、残念ながら医学的根拠はありません。

表情筋の衰えは、たしかにほうれい線を目立たせる一因になりますが、表情筋は誰かと会話をしたり、笑ったりしているだけで十分鍛えることができます。

さらに鍛えようと、わざわざトレーニングをしてくり返し筋肉を伸縮させると、かえって筋肉が傷つき、しわが刻み込まれやすくなってしまいます。

美顔器などのアイテムを使う

ほうれい線の改善を目的に、市販のEMSやラジオ波を使用した美顔器などのアイテムを使っても、医療器具同様の効果が得られる可能性は低いでしょう。

家庭用の美顔器は、クリニックなどの医療機関で使われるものよりも、消費者だれもが安全に使えるよう低出力に設定されています。そのため、家庭用の美顔器だけでほうれい線を消すことは難しいかもしれません。

スキンケアをする

ほうれい線を目立ちにくくさせる方法として、スキンケアは一定の効果があります。

スキンケアを行うことで、肌のハリや弾力の低下を防ぎ、肌に艶感が生まれるため、ほうれい線の影が薄くなったように見えるでしょう。

レチノールやビタミンC、ペプチドなどが配合された化粧品のなかには、乾燥小じわの改善が期待できるものもあるため、化粧品選びの際は成分とチェックしてみるといいかもしれません。

しかし、スキンケアでアプローチできるのは、皮膚の表面のみです。ほうれい線は、骨や皮下脂肪など、皮膚よりも奥の変化によって起きているので、ほうれい線そのものを治すことは困難といえます。

紫外線対策をする

日焼け止めなどの紫外線対策をすると、ほうれい線の悪化予防に効果があるといえるでしょう。紫外線は、肌の水分やハリを保つ成分であるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を変性させたり、これらの成分を産生する線維芽細胞を損傷させるため、肌の弾力が失われ、たるみにつながってしまいます。

紫外線対策によって、すでにできてしまったほうれい線をなくすことはできませんが、肌の弾力をキープし悪化防止に役立てることはできるでしょう。

栄養バランスの良い食生活をする

栄養バランスの整った食事をすることは、肌をはじめとした体全体の健康維持につながります。

肌や筋肉をつくる良質なタンパク質や肌をダメージと老化から守るビタミンA・E・C、そして肌の弾力を高め、コラーゲンの生成に欠かせないといわれる鉄分を意識的に摂取してみましょう。

食事だけで不安があるときはサプリメントを活用してみるのもひとつの手です。

姿勢や表情、嚙みグセ、歯並びの意識・見直し

ほうれい線の対策方法として、姿勢や表情、嚙みグセの意識・見直しを行うのは、長期にわたって取り組みが必要なものの、ほうれい線の悪化防止に有効な方法といえるでしょう。

歯並びの治療

ほうれい線は、歯並びの治療によって改善されることもあります。例えば、口元が前に突き出た「出っ歯」になっている人は、ほうれい線が目立ちやすい傾向があります。

自分の歯並びが気になる方は、一度歯医者へ相談してみても良いかもしれません。

美容医療を受ける

ほうれい線を改善するために美容医療を受けるのも有効です。

さまざまな原因のなかから、ほうれい線が目立ってしまうようになった原因を医師が見極め、最適な治療方法を提案してくれます。短期間で改善が可能というメリットもあります。

ほうれい線治療の選択肢

ほうれい線が生じる原因は、加齢によって骨や筋肉、皮下脂肪が変化することにあるため、マッサージや筋トレ、スキンケアなどだけでは、思うような効果を得るのは困難です。

短期間でほうれい線を改善したいなら、美容医療の手を借りるのも良いでしょう。ほうれい線治療のための選択肢は、以下が挙げられます。

※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

  • ヒアルロン酸注入治療
  • 部分痩せ治療
  • 高周波・超音波の照射治療
  • 糸による治療
  • メスによる治療 など

頬の脂肪の量が多いか少ないか、加齢によるたるみが生じているかいないかなどによって、治療法の選択肢が変わってきます。また治療法により、治療効果と体への負担が異なるので、医師とのカウンセリングでしっかりと治療のメリットやデメリットなどを話し合い、理解したうえで行うことが重要です。

以下では、カウンセリングに向けた予備知識として、それぞれの治療法の基本的な情報を順にご紹介します。

ヒアルロン酸注入治療

ヒアルロン酸注入治療は、ほうれい線が目立つことをはじめとした、たるみ治療に選択される代表的な施術です。

加齢などによってボリュームが失われたり、たるみが生じたりした部位にヒアルロン酸製材を注入することで、減ってしまったボリュームを補い、溝を目立たなくさせる効果があります。

注入方法は大きく三つあります。

一つ目は、ほうれい線が目立つ部分に注入する方法です。メジャーな方法とされており、できてしまった溝をヒアルロン酸製材で埋めるので、ほうれい線が目立ちにくくなります。

二つ目は鼻翼基部(びよくきぶ)と呼ばれる小鼻の横にヒアルロン酸を注入し、高さを出してボリュームを補います。ほうれい線の改善に加え、鼻が埋もれなくなるので若く見えるようになったり、口のこもり感も払拭されたりするというメリットも得やすいです。

三つ目は、こめかみや頬骨など骨がボリュームダウンした部分を中心に、顔全体のバランスを見て注入する方法です。加齢によりほうれい線が目立っている人は、この方法で治療すると、顔全体のリフトアップにつながり、より若々しい印象になりやすいとされています。

いずれの方法も、皮下脂肪のボリュームが比較的少ない人にすすめられることが多い治療です。

部分痩せ治療

ほうれい線治療の選択肢としては、脂肪吸引や脂肪溶解注射などの部分痩せ治療も挙げられます。

脂肪吸引は、機器を使って物理的に脂肪を吸い出し除去します。脂肪溶解注射 は、皮膚の下に少量の薬剤を注入し、内部の脂肪を分解させて皮下脂肪を減らす治療です。

頬にある皮下脂肪の塊が、加齢により垂れ下がり、ほうれい線が目立つ原因になる場合、皮下脂肪を除去することによって、ほうれい線の改善が期待できます。

皮下脂肪のボリュームが比較的多い人におすすめされることが多い治療です。

高周波・超音波の照射治療

ほうれい線への治療として検討されるのが、高周波・超音波の照射治療です。代表的な施術としては、サーマクールや高密度焦点式超音波治療(HIFU・ハイフ)があります。

高周波や超音波を照射し、熱エネルギーで肌を刺激したり、細かい振動で細胞を活性化させたりして、皮膚の引き締めやコラーゲンやエラスチン産生の活性化をねらいます。

いずれも、皮下脂肪のボリュームが多い人におすすめされることが多い治療です。

糸による治療

糸リフトなどの糸による治療は、表面にギザギザがある特殊な糸を使い、皮下組織を引っかけて固定し、皮膚のたるみを引き上げます。

加齢などのたるみによって目立ってきたほうれい線の治療や、本格的にたるみが生じる前の予防に有効です。糸リフトで使用する糸には、時間が経てば自然に溶解するという特徴もあります。

皮下脂肪のボリュームが比較的多い人におすすめされることが多い治療です。

メスによる治療

メスを使って、たるみを治療する手術を行い、ほうれい線を目立たなくする方法もあります。代表的な施術が、フェイスリフトと呼ばれる、たるんだ皮膚の一部を切除して縫い合わせ、皮膚を引き上げる方法です。

皮下脂肪のボリュームにかかわらず、皮膚が柔らかくて下垂しやすい人、美容意識が高く、ハッキリと大きな効果を求めている人が希望することが多い治療です。

ほうれい線に関するよくある質問

ほうれい線に関するよくある疑問を医師にうかがいました。

ほうれい線ができない人とできやすい人の差は?

ほうれい線は、加齢によるたるみが原因であるため、年齢を重ねるほど生じやすくなります。

また、同年代であってもほうれい線ができない人とできにくい人の間では、以下のような差があると考えられています。

  • 頬骨の位置が上方にある、もしくは高さが低い人
  • 口の片側だけで食べる、寝るときの向きなど骨格が歪むクセのある人
  • 肌が乾燥していて、ちりめんじわができやすい人

ほうれい線のできやすさチェック

ほうれい線のできやすさチェックする方法としては、頬の皮膚を口元から耳の方向へ、指全体を使って軽く押し上げてみる方法があります。

小じわのような細かいしわが寄りやすい人は、皮膚が薄くてたるみが生じやすく、ほうれい線ができやすいタイプの皮膚といえます。

とはいえ、セルフチェックでほうれい線を引き起こしている原因がどこにあるのか判断することは困難なため、まずはクリニックでカウンセリングを受けてみると良いでしょう。

男性のほうれい線の消し方で注意点やポイントは?

一般的に男性の肌は女性より厚く、乾燥しやすい傾向があるといわれています。そのためスキンケアや紫外線対策をおろそかにしてしまうと、しわやたるみが生じやすくなってしまいます。さらに肌に厚みがあるせいで、しわが深く見える傾向にあるようです。

そのため、ほうれい線を治療で改善しようとすると、例えば注入治療の場合、女性よりも多くのヒアルロン酸が必要になるかもしれません。また、選んだ施術方法によっては満足のいく結果が得られないこともあるでしょう。

したがって、男性の場合、治療前の医師とのカウンセリングがより重要になるともいえます。個人差があるので一概にはいえませんが、意識しておくと良いでしょう。

ほうれい線を一瞬で消す方法はある?

ほうれい線は一度気になるとつい目に入ってしまうため、「ほうれい線を一瞬で消す方法はないか」と考える人も多いものの、セルフケアによって一瞬でほうれい線を消す方法は残念ながらありません。

「一瞬」の定義にもよりますが、短期間で改善するには美容医療が効果的です。なかでもヒアルロン酸の注入治療は、数分の施術で改善が見られるケースが少なくありません。気になる場合には、治療を検討するのも良いでしょう。

ただし、治療を受けた後は、治療法によって腫れや内出血などが生じることもあり、落ち着くまでのダウンタイムが数週間~1ヶ月ほど必要なことも少なくありません。大事な予定に向けてほうれい線の改善治療を受ける場合は、予定の1~2ヶ月前に治療を受けられるよう準備しておきましょう。

なお、普段行っているスキンケアは、いわば「守りのケア」。肌悩みが改善されない場合や、もっと美しい肌に近づきたいという方は、セルフケアでは手が届かない肌の奥深くを治療できる「攻めのケア」である美容医療に詳しい医師に相談してみるのも一つの方法です。

専門家の知恵も借りて、自分にとって適切なスキンケアを行えるようになるのが理想的です。

参考文献

・Bella Pelle Vol.2 No.4.メディカルレビュー社,2017

監修・取材協力

BIANCA CLINIC 南 寿美 先生

BIANCA CLINIC 南 寿美 先生

埼玉医科大学医学部を卒業し、東邦大学医療センター大橋病院にて勤務。

東京慈恵会医科大学皮膚科の勤務を経て、BIANCA CLINICに入職。

日本皮膚科学会、日本美容外科学会、日本美容皮膚科学会所属。

皮膚治療から手術までオールマイティに施術を行い、なかでもヒアルロン酸注入治療や小顔のための治療を得意とする。プライベートもほとんど美容に費やす、大の美容好き。

BIANCA CLINIC

〒104-0061 東京都中央区銀座1-8-19 キラリト銀座 12 階

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