ハイフ(HIFU)は、超音波を用いて行うたるみ治療です。ダウンタイムがないため人気の高い施術ですが、他の美容医療の治療と同様にリスクも伴います。

ハイフによるたるみ治療の仕組みや効果、また、知っておくべき副作用やリスクについてご紹介します。
※未承認治療を含めますが、それらを推奨するものではありません

監修・取材協力:飯尾 礼美 先生(飯尾形成外科クリニック 院長)

ハイフとは?

ハイフ(HIFU)とは、高密度焦点式超音波(High Intensity Focused Ultrasound)の略称で、病院のエコー検査などでも用いられる「超音波」を用いて行うたるみ治療です。(1)

ハイフによる治療では、虫眼鏡で光を一点に集めるように、専用の機械で超音波を集めて、照射します。焦点を当てた場所は60℃以上の高温となり、その熱作用により、皮膚の下の組織が変性し、収縮します。(1)

お顔には、表皮(皮膚)・真皮(皮膚)・皮下脂肪(皮下組織)・筋肉・骨の5つの層があります。たるみは、さまざまな要因で起こり、真皮のコラーゲン減少、皮下脂肪量の変化のほか、表情筋のこわばり(拘縮)、骨の減少などが関連しています。(2),(6),(7)

ハイフはこのお顔の5つの層のうち、「真皮」から、皮下脂肪と筋肉の間の「SMAS筋膜」までを対象とした治療です。(2)機器によっては、トランスデューサと呼ばれる装置を変えることにより、1.5mm、3.0mm、4.5mmなどのさまざまな深さに正確に照射できることも、ハイフの特徴のひとつです。(1)

ハイフで期待できる効果

次に、ハイフにより得られる効果について、ご説明します。

ハイフはさまざまな場所に照射することができますが、特にフェイスラインのたるみに効果を発揮しやすく、主な効果は「引き締め効果」です。加えて、照射時の技術でリフトアップ効果も得ることができます。(5)

引き締め効果

ハイフによる治療では、熱により皮下脂肪(皮下組織)・SMAS・皮膚を収縮させるため、肌の引き締め効果が得られます。(2)

リフトアップ効果

ハイフの照射を工夫することで、リフトアップ効果も得ることができるといわれています。(5)

肌のアンチエイジング効果

熱の作用により、皮膚の内側のコラーゲンの産生が促され、肌のアンチエイジング効果を得ることもできます。(1)

しかし、ハイフには、減ってしまった皮下脂肪のボリュームを元に戻すほどの効果はありません。したがって、重度のたるみや、たるみによる深いしわの場合にはハイフでは改善が難しいため、他の治療を検討する必要があります。(5)

ハイフの副作用やリスク

ハイフは、超音波を用いた治療であり、照射した部分の温度は高温になります。そのため、治療には副作用やリスクも伴います。

神経損傷

ハイフでは、肌の深い部分に超音波を照射していきます。その際に、神経に超音波が当たってしまうと、損傷を受ける可能性があります。(1)場合によっては、口角が痙攣(けいれん)する、口が動かしにくいなどの症状が出ることもあります。(8)

やけど(熱傷)

ハイフによる治療では、やけどが起こるリスクがあります。肌の表面に近い部分に熱が間違って照射されてしまうと、ひどいやけどを起こす可能性があります。(8)ハイフによるやけどの場合には、皮膚の内側からやけどが起こっている状態のため、傷跡が残ってしまうこともあります。ハイフによる治療でやけどを負ってしまった場合には、すぐに医師に相談してください。

頬がこけて、やつれてしまうリスク

骨格やお顔の肉付きにより「ハイフによる治療が適さない方」が治療を受けると、期待した効果が得られない事や頬がこけて、やつれて見えてしまうリスクがあります。

近年、人気の高まりとともに、多くの美容クリニックがハイフを導入しています。また、エステサロンや鍼灸、整体院などでもハイフによる施術を行っている場合が見受けられますが、安全に効果を出す治療を受ける為には、医師による施術をおすすめします。(8),(9)

さらに、ハイフによる治療は、医学の知識と技術を必要とする治療です。治療を受けるクリニックは慎重に選ぶ必要があります。また、治療を受ける前にリスクや副作用、デメリットについても医師から必ず説明を受けた上で、治療を受けるかどうか判断するようにしましょう。

ハイフ以外のたるみ治療の選択肢

ハイフによる治療は、お顔の引き締めや軽度のたるみのリフトアップに適しているだけでなく、たるみ治療においては組織の質を改善する基本となる治療です。(1),(5)しかし、深いほうれい線などを伴う重度のたるみの改善や、より高い効果を望まれる場合には、ヒアルロン酸注入治療」や「糸リフト」、「手術」によるフェイスリフトなどの別の治療もあわせて検討する必要があります。
※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

また、ハイフによる治療とラジオ波(RF)による治療の両方を定期的に繰り返すことで、長期的に肌の老化を遅らせ、たるみの改善と予防効果を得るという方法もあります。(5)

お顔の状態や求める効果によって、適しているたるみ治療はさまざまです。たるみに悩まれている方は、医師に相談の上、自分にあった治療を受けることをおすすめします。
※併用治療の有効性・安全性、またどれくらい期間を空けるか等は検証されておりません

まとめ

ハイフは、たるみ治療の中でも、30~40代でお顔の肉付きがありフェイスラインをすっきり見せたい方や、さらに若い方で小顔効果を得たい方におすすめの治療です。(5)しかし、ハイフによる治療ですべてのたるみを改善することは難しく、また、リスクも伴います。

ハイフによる治療を検討している方は、施術の前には医師によるカウンセリングをしっかり受け、効果だけではなく、デメリットや副作用も十分に理解したうえで、施術を受けるかどうかを判断しましょう。

参考文献
(1)前多 一彦:美容皮膚医学BEAUTY.2021.4(6):
(2)伊藤 史子:美容皮膚医学BEAUTY.2023.6(3):医学出版
(3)杉野 宏子:美容皮膚医学BEAUTY.2023.6(3):医学出版
(4)倉片 優:美容皮膚医学BEAUTY.2023.6(3):医学出版
(5)黄 聖琥:Bella Pelle.2017.2(4);18-23
(6)鈴木 芳郎:Bella Pelle.2017.2(4);24-29
(7)櫻井直樹:正しい知識がわかる 美肌辞典:高橋書店,2021
(8)消費者安全調査委員会:消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書."エステサロン等でのHIFU(ハイフ)による事故".2023
(9)日本エステティック協会:"高密度焦点式超音波(HIFU)による施術の即時中止のお願い".2023

監修・取材協力

飯尾形成外科クリニック 院長 飯尾 礼美 先生

飯尾形成外科クリニック 院長 飯尾 礼美 先生

飯尾形成外科クリニック院長。日本形成外科学会認定専門医、日本美容外科学会会員、日本美容医療協会正会員、国際形成外科学会正会員、国際美容外科学会正会員、アメリカ形成外科学会会員。

飯尾形成外科クリニック

住所:〒810-0001 福岡市中央区天神1-3-38 天神121ビル9F

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