近年、身近な存在になりつつある美容医療。一方で、美しさに磨きをかける方法として、エステを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

キレイになるための選択肢が増えるなか、美容医療とエステでは似たようなメニューがあったり、施術名が同じだったりするため、違いがよくわからないという方も多いのではないでしょうか?

この記事では、美容医療とエステの違いやそれぞれの特徴などを、藤井クリニックの藤井 靖成 先生にお聞きしました。

監修・取材協力:藤井 靖成 先生(藤井クリニック 院長)

美容医療とエステの違いとは?医療行為・治療であるかどうかがポイント

美容医療とエステは、サービスを提供する人とサービス内容に大きな違いがあります。(1)∼(4)

 美容医療エステ
サービスを
受ける場所
クリニックエステティックサロン
資格(免許)医師免許が必須資格不要
薬剤使用可使用不可
機器の性能
(出力・周波数)
高い
医療機器が使用可
低い
医療機器は使用不可
トラブルが
起きた場合
治療を受けた
クリニックで対処が可能
クリニックを
別途受診する必要がある
施術の主な
目的・内容
医療機器や医薬品、
手術による「治療」
美容機器や化粧品、
マッサージによる
「セルフケアのサポート」

 

1番のポイントは、美容医療では、医師による「医療行為(治療)」が行えることです。たとえば、セルフケアだけでは改善しにくいたるみしわの肌悩みや、部分痩せなどの「治療」が可能です。この「治療」ができるのは、国家資格を持つ医師だけです。

一方でエステの場合、セルフケアのサポートを目的としています。民間団体による認定資格が存在しますが、施術自体に資格は必要ないので、改善や効果を求めることはできません。

そして、美容医療とエステでは使用する機器、トラブルが起きたときの対処法にも大きな違いがあります。それぞれご紹介しましょう。

使用する機器

美容医療とエステでは、使用できる機器に違いがあります。(4)∼(6) 

美容医療では、科学的な根拠に基づいて効果が証明されている医療機器の使用が可能です。美容でいえば、たるみやしわ・シミ改善、肌の新陳代謝促進、脂肪燃焼等の効果が期待できる機器が該当します。 

医療機器は、筋肉の構造、神経や血管の位置といった人体の構造に関する知識や技術を持つ医師しか扱うことができません。

一方エステでは、医療機器を使用することができません。使用できるのは美容機器に限られています。

万が一のトラブルが起きたときの対処

美容医療とエステのトラブル時の対応

美容医療とエステでは、トラブルが起きた際の対応も異なります。

美容医療クリニックには医師が常駐しているため、万が一トラブルが起こった場合でもすぐ対応できるメリットがあります。

一方エステではその場での対処ができず、自分で医療機関を受診する必要があるので、注意が必要です。

医師が教える 美容医療とエステに関するQ&A

美容医療とエステの根本的な違いがわかったところで、より具体的な違いについてQ&A形式で掘り下げていきましょう。

美容医療とエステについてよく挙がる疑問を、藤井先生に聞きました。

Q1.美容医療とエステの施術内容はどう違う?

やはり「医療行為(治療)」か否かが大きな違いです。美容医療は「医療行為(治療)」なので、医師による「診断」が行われます。

診断で症状や原因などから有効と思われる治療が提示され、リスクに関して説明があったうえで治療が進められます。

理想の見た目や、若々しい印象を保つために、前述のような医療機器のほか、メスを用いた手術、薬剤による外用・内服治療、注入治療も可能です。

一方エステでは、リラクゼーションに加え、刺激や代謝を促すためのマッサージなどの施術が行われます。

Q2. エステでも美容医療と同じ施術が受けられるって本当? 

本来、エステティックサロンで美容クリニックと同じ施術を受けることはできません。 

一方、国民生活センターや消費者庁の報告によると、HIFU(高密度焦点式超音波)脂肪冷却などの施術を行っているエステティックサロンも存在し、近年事故が相次いでいます。(7),(8)

HIFU(高密度焦点式超音波)の場合

HIFUは、超音波を照射して筋膜に熱を加えることで引き締めが期待できる施術で、美容クリニックとエステティックサロン、どちらにもメニューが存在しています。

なぜなら現状は法規制や安全基準があいまいで、医療機器に該当するレベルのものとエステティックサロンでも扱えるものが混在した状態にあるからです。(8)

本来ならば医療機器として扱うべき出力のものが、エステティックサロンで使用されているなどして、近年とくにエステティックサロンにおけるHIFUの事故が増加傾向にあります。(8)

HIFUは、機器の特性や施術方法を熟知して行わないと人体に危害が及ぶリスクがあり、医療機器に該当する機器です。(8)美容クリニックでは、専門知識を持った医師が施術をしています。

消費者安全調査委員会では「施術者にHIFU施術等に係る知識がなく、施術ミスが発生し、事故につながっていると考えられる」と報告され、経済産業省も関係事業者に対しHIFU施術の危険性について注意喚起しています。

エステの主要業界団体は、HIFUの施術を止めるよう通達しているものの、団体に加盟しているエステティックサロンは少ないため、阻止しにくいのが実状のようです。

脂肪冷却の場合

脂肪冷却は、「脂肪細胞は4℃以下になることで破壊される」というメカニズムを応用した痩身治療です。(9)

美容クリニックとエステティックサロン、どちらにもメニューが存在しています。

美容医療では、医療機関のみが利用できる医療機器を使用しています。

しかし、エステティックサロンはあくまでも美容医療の脂肪冷却と同じメカニズムを利用したと謳われる美容機器です。

美容クリニックで利用されているような痩身効果や安全性を承認された医療機器ではないことを知っておきましょう。(10),(11) 

エステティックサロン施術の問題点

エステティックサロン施術の問題点

消費者庁の調査によると、HIFUであればやけどや神経・感覚の障害、脂肪冷却であれば凍傷といった症状です。

また、エステティックサロンで使われる美容機器を消費者が自ら自由に使えるセルフエステでも、類似の事故が国民生活センターに報告されています。

エステティックサロンでの施術を検討する場合は、こうした危険性をしっかり理解しておくことが大切です。

Q3.美容医療とエステで価格差があるのはなぜ?

美容医療はエステに比べ、1回あたりの施術の価格が高い傾向にあります。

理由の一つは、美容医療で使われる医療機器や薬剤が挙げられます。

特に、国内で厚生労働省から承認されている医療機器や薬剤は、開発や実証までに多くの手間や時間を費やしています。その分、確かな品質や安全性が保証されているため、高額になりやすい傾向です。

その他の理由に、医療機器や薬剤を正しく安全に使うための人体の知識や、効果的な施術を提供するための技術を備えた医師などの人件費や、施術後のアフターケアなどもあります。

美容医療とエステで価格が異なる理由の一つは医師の人件費

一方でエステの場合、施術を行う人も使用するアイテムも、美容医療のような効果を証明する必要がないので、提供価格を抑えることができます。

Q4.美容医療とエステを利用するなら、どっちがいい?

美容医療とエステ、いずれも利用する前に施術内容から効果、費用などさまざまな違いを知って、目的によって使い分けることが大切です。

たとえば効果を期待するならば、美容医療を選択しましょう。治療後すぐに効果を実感できる施術が多くあります。

セルフケアの効率性を高めたい場合や、生活習慣のサポートを受けたい場合は、エステが適しているでしょう。エステは、あくまでセルフケアの延長線として、プロの手によるケアを受けられるほか、非日常の空間で、精神的な充足感を得ることができます。

通う目的を考えて、総合的に判断するようにしましょう。

美容医療とエステの違いを知って、正しく使い分けを

藤井先生の解説からもわかるとおり、美容医療とエステのどちらを選ぶか悩んでいる方は、それぞれの違いや特徴を知ったうえで、自分の目的に合わせて判断することが大切です。

たとえば、肌が敏感で施術後のトラブルが気になる方は、医師が常駐している美容クリニックが適しているでしょう。

一方で、「癒しを得ながら施術を受けたい」「リラックスしたい」という方は、エステを選択肢に入れるのもいいかもしれません。

本記事でご紹介した違いを参考に、目的によって正しく使い分けてみましょう。

 

参考文献
(1)内閣府 消費者委員会 エステ・美容医療サービスに関する消費者問題についての実態調査報告(2011年12月21日)
(2)一般社団法人日本エステティック協会 エステティックとは
(3)日本美容外科学会 美容医療診療指針(令和3年度改訂版)
(4)一般社団法人 日本医療機器産業連合会 医療機器について
(5)一般社団法人 日本ホームヘルス機器協会 家庭向け美容・健康関連機器 適正広告表示ガイド
(6)日本美容外科学会(JSAPS)美容医療診療指針 Vol. 44,特別号,2022.
(7)経済産業省 HIFU(高密度焦点式超音波)施術による健康被害にご注意ください
(8)消費者庁 消費者安全調査委員会 エステサロン等でのHIFU(ハイフ)による事故
(9)Manstein D,Laubach H,Watanabe K,et al.elective cryolysis: A novel method of non-invasive fat removal.Lasers Surg Med.2008 Nov;40(9):595-604.
(10)独立行政法人 国民生活センター そう身美容器
(11)独立行政法人 国民生活センター 「セルフエステ」の契約は慎重に検討しましょう!

監修・取材協力

藤井クリニック 院長 藤井 靖成 先生

藤井クリニック 院長 藤井 靖成 先生

医師になって32年、内科専門医・消化器内視鏡専門医・指導医を経て、22年間美容医療に従事。

胃がん、大腸がんに対する技術的に細やかな内視鏡検査・手術を通して磨いた技術と豊富な経験を活かしながら、美容外科の技術も習得。「楽しく生きる」をコンセプトに、自身が理想とする医療を追い求めるため、2007年5月「藤井クリニック」を開院。

その後、皮膚科学をベースとする美容医療に取り組み40万件以上の美容施術経験を積む。

藤井クリニック

住所:〒530-0001 大阪市北区梅田2-1-22 野村不動産西梅田ビル8F

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