美容医療において、治療前のカウンセリングは、医師と患者が互いに情報を共有し、理解を深める大切なプロセスです。この記事では、医師の視点から見たカウンセリングの意義と、患者側が準備しておくとカウンセリングの時間をより有意義にできるポイントなどを新井 根洋 先生に伺いました。
監修・取材協力:新井 根洋 先生(ラベールミラクリニック 院長)
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美容医療において、治療前のカウンセリングは、医師と患者が互いに情報を共有し、理解を深める大切なプロセスです。この記事では、医師の視点から見たカウンセリングの意義と、患者側が準備しておくとカウンセリングの時間をより有意義にできるポイントなどを新井 根洋 先生に伺いました。
監修・取材協力:新井 根洋 先生(ラベールミラクリニック 院長)
目次
美容医療においてカウンセリングは、治療の方向性を決めるための単なる打ち合わせではありません。
新井 先生に、カウンセリングの意義と重要性について教えていただきました。
「カウンセリング」のそもそもの意味は「相談」や「助言」です。(1) 専門知識を身につけ、訓練を受けたカウンセラーが、クライアント(相談者)に対話を通じて寄り添い、クライアントが自分で答えを見つけて、よりよく生きていくための力を引き出すことを目的として行われます。(1)
美容医療においても、この本質的な意味合いが重要になってきます。
単に「ほうれい線を消したい」という希望だけを聞くのではなく、「ほうれい線を消すことでどうなりたいのか」という真のゴールを理解し、専門家として的確なアドバイスを提供するのが、本来のカウンセリングの目的といえます。
※監修医師の臨床経験による
美容医療の本質は、治療を通じて患者さんの悩みやコンプレックスを改善することですが、その結果として得られるゴールは多岐にわたります。
例えば、「若返り」を希望する場合、1歳若返るのと10歳若返るのとでは、目指す姿が異なります。「美しく整える」としても、ナチュラルな変化なのか、大幅な変化なのかによって理想が変わります。患者さんの「なりたい姿」や目指すゴールが多様であるため、時間をかけて話し合い、最適なアプローチを一緒に考えるカウンセリングが重要です。
さらに、カウンセリングには信頼関係を築く目的もあります。患者さんのなかには、「不要な治療を勧められるのではないか」といった警戒心や不安を抱えて来院する方もいます。カウンセリングを通して正しい情報を提供し、疑問や不安に対応することで、信頼関係を築くことが求められます。
※監修医師の臨床経験による
必要な情報を提供することで、カウンセリングの時間を効果的に活用できます。新井 先生に、カウンセリング時に意識しているポイントについて伺いました。
当院のカウンセリングで最も大切にしているのは、患者さん自身も気付いていない本音を引き出すことです。特に、以下の2点について詳しく伺います。
例えば、「ほうれい線が気になる」という方でも、完全に消したいわけではなく、顔全体がすっきり見えればよいという方もいます。この場合、ほうれい線だけを治療するのではなく、顔全体のリフトアップを提案することが望ましいこともあります。(2)
ほかの悩みでも同様に、「悩みが解消されたらどうなりたいか」を聞くことで、理想のイメージが明確になり、最適な治療計画を提案できます。
※監修医師の臨床経験による
当院では、以下の3点を意識して、カウンセリングをしています。
1.正しい情報をわかりやすく伝える
医学的に正しい情報を、患者さんが理解しやすいように専門用語をなるべく避けて丁寧に説明します。イラストやスライドなどを活用し、治療の仕組み、期待される効果、考えられるリスクなどを正確に伝えます。
2.時間をかける
正しい情報を伝え、患者さんの理解を得るには、どんなに短くても30分は必要です。十分な情報提供と相互理解のために、当院では時間をかけてカウンセリングを行います。
3.患者さんとの信頼関係を築く
医師と患者の関係が上下関係にならないように配慮し、患者さんが安心して話せる関係性を築くことを心がけています。
これらをカウンセリング中に自然に行い、患者さんに「医師が意識していることを意識させない」ようにしています。
さらに、患者さんとの信頼関係を築くために、医師のカウンセリングにカウンセラーが同席します。同席したカウンセラーは、医師とのカウンセリング終了後、医師が行った説明を改めて行い、理解を深めるサポートをします。
この時間により、患者さんは理解を深め、高揚した気持ちをクールダウンさせることができるのです。また、患者さんが納得して治療を受けられるよう、費用についてもカウンセラーから説明しています。医師との対話中は治療への期待が高まりやすく、予算に合わない提案を断るのが難しい場合があるためです。
※監修医師の臨床経験による
患者さんは以下のことを準備しておくと、カウンセリングの時間をより有意義なものにできるでしょう。
1.なりたいイメージを具体化しておく
憧れの芸能人の写真や、ご自身の若い頃の写真など、「こんな風になりたい」という具体例が伝わるものがあると、医師とイメージを共有しやすくなりますし、言葉だけでは伝えるのが難しいイメージのズレも防げます。
2.過去の治療履歴をまとめておく
いつ、どのクリニックで、何の治療(施術名、薬剤名、注入量など)を受けたか、レーザー治療なども含めて記録しておくと、医師が現状を正確に把握し、適切な治療計画を立てる助けになります。(3) とっさに思い出せないこともあるので、カウンセリングの前に整理しておくのがおすすめです。
そのほか、美容医療以外の病歴や手術歴、アレルギーの有無などの基本的な情報についてもまとめておきましょう。
3.疑問や不安な点をメモしておく
聞きたいこと、不安に思っていることを事前にリストアップしておくと、聞き忘れを防げます。緊張していてもメモを見れば確認できるので、安心感につながります。
カウンセリングは、クリニックや医師を見極める機会にもなるといわれます。新井 先生に、チェックすべき点を伺いました。
クリニックによっては、最初にカウンセラーが話を聞く場合もあります。法律上、最終的には医師が診察し、診断に基づいた治療計画を説明する必要がありますが、医師以外の人がカウンセリングを行うこと自体に問題はなく、順番も特に決まっていません。(4)
しかし、なかにはカウンセラーのみがカウンセリングを行い、医師の診察が不十分なまま治療に進んでしまうケースも見られるようです。(4) 医師との対話時間が極端に短いクリニックには注意が必要です。
医師が診断に関わる話をするには経験上、どんなに短くても15分は必要です。治療の安全性にも関わるポイントなので、しっかりと確認することをおすすめします。
※監修医師の臨床経験による
疑問や不安が解消されるまで質問できる環境は、カウンセリングにおいて重要です。医師がわかりやすい言葉で説明してくれるか、質問に真摯(しんし)に答えてくれるかを確認する必要があります。面倒そうな態度や適当な対応が見られる場合には注意が必要です。
また、医師との相性も確認したいポイントです。優れた技術を持っている医師でも、患者さんが「コミュニケーションが取りにくい」と感じた場合、安心して治療を受けることが難しいかもしれません。話しにくさや違和感を覚えた場合には、ほかのクリニックを検討することも考慮しましょう。
※監修医師の臨床経験による
患者さんの希望する治療法が最適とは限りません。注入治療を望んでも、状態によっては手術のほうがよい場合があります。信頼できる医師は診察・診断に基づき、必要な治療法を提案します。美容医療に詳しく、最適な方法を示してくれる医師を選びましょう。希望通りの治療だけを勧める医師には注意が必要です。
※監修医師の臨床経験による
どんな治療にもメリットとデメリット、そしてリスクが伴います。カウンセリングで説明を聞いた後、すぐに決断を迫る即決を促したり、過剰な量を勧めたりするクリニックは、患者よりも施設の売り上げを優先している可能性があります。
例えば、ヒアルロン酸注射は、注入後に物足りなさを感じた場合に追加で注入することが可能です。(2) 入れすぎてしまったり、仕上がりに納得できなかったりする場合は分解酵素(ヒアルロニダーゼ)などで調整が可能ですが、不足分を足すよりも手間やリスクもあります。(2),(3) ※
そのため、注入する量や治療自体を迷っている際には、「控えめにする」もしくは「今回はやらない」という選択肢を提案し、考える時間をくれる医師のほうが信頼できると考えられます。
自身の身体に関わることなので、焦らずに納得できるまで検討できるクリニックで治療を受けることが大切です。
※国内承認薬または機器が存在しない治療を含む可能性がありますが、それらを推奨するものではありません
カウンセリングに関するよくある疑問を、新井 先生に伺いました。
複数のクリニックを受診するのは手間がかかるかもしれませんが、3~5件程度のクリニックでカウンセリングを受けることをおすすめします。
医師によって、得意な分野や治療方針、考え方、そして人柄などは異なります。複数の医師の意見を聞くことで、治療方法の違いや、説明のわかりやすさなどを比較検討することが重要です。すると、最初のうちはわからなくても、だんだんと自分に合うクリニックや医師を見極める目が養われていきます。
おすすめの治療法が複数ある場合も、複数のクリニックでカウンセリングを受けたほうがメリットにつながります。共通して提案された治療法のうち、最も多くのクリニックから提案された方法が、現時点での最適な治療法である可能性が高いという判断材料のひとつになります。
※監修医師の臨床経験による
説明に納得し、疑問や不安が完全に解消されたのであれば、カウンセリング後すぐに治療を受けても問題はありません。
しかし、少しでも迷いや疑問が残っている場合は、決して急いで決断すべきではありません。
迷ったときには、「急がない」「焦らない」を原則にしましょう。遠方からわざわざクリニックを受診した場合などは特に、「せっかく来たのだから」という心理が働き、納得しきれていないのに治療を受ける選択をしがちです。
また、勢いで決めるのは禁物です。ヒアルロン酸注射のように後からの調整が可能な治療であれば、まずは控えめな量から試す、あるいは家に帰って冷静に考えるという選択肢を持っておきましょう。
※監修医師の臨床経験による
提案された治療プランに疑問を感じたり、納得できなかったりした場合は、遠慮せずにその旨を医師に伝えましょう。
「なぜ納得できないのか」「どういった点に懸念があるのか」「自分の希望と何が違うのか」などを具体的に伝えることが大切です。それに対して、医師が再度検討し、代替案を提示したり、納得できるように説明を尽くしてくれたりするのであれば、信頼できる医師といえるでしょう。
逆に、こちらの意見に耳を傾けようとしない場合は、ほかのクリニックを探すほうが賢明かもしれません。
※監修医師の臨床経験による
カウンセリング料金は、クリニックの方針によって異なり、有料と無料、どちらがよいと一概にはいえません。
予約の無断キャンセル(ドタキャン)を防ぐために有料にしている場合もあれば、「患者さんに気軽に来てほしいから」と、無料にする場合もあるなど、さまざまなケースがあります。「無料だから、一般的な情報しか得られない」「有料だから質の高いカウンセリングが受けられる」というわけでもありません。まずは実際にカウンセリングを受けてみて、その内容で判断するのがよいでしょう。
※監修医師の臨床経験による
「最新=最良」とは限りません。特に美容医療分野では、新しい治療法や製剤が次々と登場しますが、情報が少ない段階では未知のリスクも伴う可能性があります。
医療の原則として、新しい治療法は慎重に検討すべきだと思います。もちろん、既存治療の延長線上にある改良されたものもありますが、まったく新しい概念の治療は、効果や安全性が十分に確立されていない可能性があります。その点を理解した上で選択することが重要です。
「最新」という言葉は魅力的ですが、長年の実績があり、効果やリスクが十分に解明されている治療法のほうが、安心して受けられる場合が多いといえます。
※監修医師の臨床経験による
美容医療におけるカウンセリングは、単なる打ち合わせではなく、患者さんと医師が信頼関係を築き、理想のゴールを共有するための非常に重要なプロセスです。
よいカウンセリングは、患者さんの悩みや希望を深く理解し、医学的根拠に基づいた最適な治療計画を導き出すだけでなく、治療に対する不安を取り除き、満足度を高めることにつながります。
今回ご紹介したポイントを参考に、ご自身が納得できるカウンセリングを提供してくれるクリニック・医師を見つけて、美容医療の一歩を踏み出してください。
参考文献
(1)厚生労働省. "カウンセリングについて|困ったときの相談先|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~". 2011.
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/counseling/index.html, (参照 2025-05-07)
(2)古山 登隆 :解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社. 2020
(3)大慈弥 裕之 :ヒアルロン酸注入治療安全マニュアル:克誠堂出版. 2018
(4)厚生労働省. "美容医療の適切な実施に関する検討会の議論の状況について". 2024.
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001322785.pdf, (参照 2025-05-09)
参考文献
(1)厚生労働省. "カウンセリングについて|困ったときの相談先|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~". 2011.
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation
/counseling/index.html, (参照 2025-05-07)
(2)古山 登隆 :解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社. 2020
(3)大慈弥 裕之 :ヒアルロン酸注入治療安全マニュアル:克誠堂出版. 2018
(4)厚生労働省. "美容医療の適切な実施に関する検討会の議論の状況について". 2024.
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001322785.pdf, (参照 2025-05-09)
2006年 名古屋市立大学医学部卒業。安城更生病院、名古屋市立西部医療センターなどで麻酔科医・外科医としての臨床経験を重ね、美容医療の分野へ。2017年にラベールミラクリニックを開設。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。麻酔科医、外科医として磨いた技術と解剖学への深い知見、そして科学的根拠に基づく丁寧なカウンセリングを通じて、一人ひとりに最適化された、かつての若々しい自分に戻る美容医療を提供している。
ラベールミラクリニック
住所:愛知県名古屋市中区栄1丁目3-3 ヒルトンB1F