最近、お腹が出てきた…そんなお悩みをお持ちの男性も多いはず。スポーツジムに通ってもお腹周りの脂肪だけはどうしてもなくならない、という声もよく耳にします。なぜ運動だけでは痩せられないのか。今回はクロスクリニック銀座の石川浩一先生に男性の「部分やせ」を巡る事情をうかがいました。
―皮下脂肪を減らすのはなかなか難しいのですね。何か対処法はあるのでしょうか?
落ちにくい皮下脂肪だけ落とす、いわゆる「部分やせ」を医学的に実現する治療方法があります。
部分やせ治療の中でも、特に最近では、脂肪の減少効率が良い「冷やして痩せる」治療がより注目を集めています。
部分やせ治療方法には、主に2種類あります。一つは従来から行われている外科手術で脂肪を物理的に取り除く方法で、もう一つは、機器を用いて皮膚の上から皮下脂肪を温めたり、冷やしたりすることで脂肪細胞を破壊して脂肪の量を減らす方法です。
前者はいわゆる「脂肪吸引」としてよく知られている治療方法ですが、比較的大量の脂肪を取り除くことができる反面、小さいとはいえ皮膚を切開するため傷ができ、そこが感染症を起こすこともあります。また、ごく稀に合併症で死に至る危険性があります。そうした影響もあってか、近年ではこの施術は減少傾向にあります。
これに対して、皮下脂肪を温めたり、冷やしたりして脂肪細胞を減らす治療方法は、脂肪吸引ほど脂肪を大量に減らすことは難しいものの、安全性は優れていて年々増加している施術です。
その中でも特に「冷やす」部分やせ治療は、おすすめです。
―「冷やす」部分やせ治療について、詳しく教えてください。
「脂肪冷却治療」というもので、皮下脂肪を減らしたい部位を軽く挟み込むアプリケータを装着し、その部分を冷却して脂肪細胞を結晶化し、皮下脂肪を減らします。
脂肪細胞は4℃程度まで冷却すると、細胞の中の水分は凍らず、中性脂肪と呼ばれる脂肪成分だけが結晶化します。脂肪冷却治療による皮下脂肪の冷却では、時間と温度を調節してこの状態を作り出し、脂肪成分だけを選択的に結晶化させます。
この状態の脂肪細胞はしぼんでバラバラに壊れて、数週間から数カ月かけて自然に体外に排出されます。これで脂肪細胞の数が減り、結果として皮下脂肪が減少するわけです。
―リバウンドしないのでしょうか?
リバウンドを完全に起こさないとは言えませんが、“しにくい”とは言えます。
通常のダイエットは、肥大化した脂肪細胞が縮小した結果として痩せるため、脂肪細胞の数は減少せず、リバウンドしやすいのが難点です。しかし、脂肪冷却治療は脂肪細胞の数そのものを減らすため、理論的にリバウンドしにくいと考えられています。
―冷やして痩せる「部分やせ治療」に向いている人は?
脂肪冷却治療は、太りにくい生活習慣を実践しながらも、若干お腹周りにつまめる程度の脂肪があり、気になる、何とかしたいという方に最適な施術です。
つまり体重を減らすためではなく、綺麗な体型を作るための美容医療と理解するのが正しいと思います。
内臓脂肪もかなりある肥満の方には、脂肪冷却治療は不向きです。脂肪冷却治療は皮下脂肪を減少させることはできますが、内蔵脂肪による肥満を解消するものではありません。
―美容医療というと女性がメインのイメージがありますが、男性でも受けられる治療なのでしょうか?
男女に共通する悩みは、お腹周りの皮下脂肪を何とかしたいというものです。このため最近では脂肪冷却治療を希望し、私のもとに来院する男性は増えています。
お腹周りの皮下脂肪に限れば、女性よりも男性の方が気にする人が多い印象です。その意味で現在は、男性も美容におカネを使う時代に変わりつつあるとも言えます。
―男性にとっても、「部分やせ」治療が選択肢になりつつあるということですね。
はい。中高年男性ではダイエットに一度成功した後、リバウンドをすることを繰り返してきた人も少なくありません。落ちにくい皮下脂肪に悩んでいるうちに、いつの間にか食生活などが乱れ、反動で以前よりも太ってしまったという話はよく聞きますよね。
加齢とともに代謝が低下しつつあるのに、痩せる→リバウンドを繰り返すとさらに痩せにくい体になり、体形も崩れます。それを防ぐため、新たな方法でその悪循環を断ち切るという考えも必要だと思います。
選択肢の一つとして、脂肪冷却治療などの「部分やせ」の治療と考えていただければ幸いです。