最近、お腹が出てきた…そんなお悩みをお持ちの男性も多いはず。スポーツジムに通ってもお腹周りの脂肪だけはどうしてもなくならない、という声もよく耳にします。なぜ運動だけでは痩せられないのか。今回はクロスクリニック銀座の石川浩一先生に男性の「部分やせ」を巡る事情をうかがいました。

運動でお腹周りを痩せようは間違い!?

―日々スポーツジムなどに通って運動をしているにもかかわらず、なかなか痩せないというお悩みを持つ男性が多いようです。なぜでしょうか?

痩せるためには、「摂取するエネルギー」よりも「消費するエネルギー」を多くする必要があります。

例えば、日常生活を送るうえで最低限必要な消費エネルギーである基礎代謝も含め1日の消費エネルギーが2500キロカロリーの人が、常に食事で1日3000キロカロリーを摂取しているならば、消費エネルギーを500キロカロリー以上増やせば痩せられることになります。

このように口で言うのは簡単なのですが、有酸素運動の代表格であるランニングで500キロカロリーを消費しようとすると、かなりハードな運動量が必要です。

筋トレにより筋肉を増やし、基礎代謝量を増加させると効率的に痩せられますが、毎日筋トレを行うのは簡単ではありません。また、筋肉の疲労を考慮すると毎日すべきでもありません。

―運動のみでやせるのは、なかなか難しいということですね。

そうですね。結局、一般の方があまりきついと感じない、例えば緩やかな速度のランニングなどで痩せようとするならば、極端な話、1日20キロくらい走るなど日常生活の中では難しい桁違いの運動量が必要になります。

つまり、運動で消費エネルギーを増やすことで痩せるのはやや効率が悪く、摂取エネルギーを減らす、つまり食事量を減らす方が現実的です。

食事、運動、生活習慣…痩せるための注意点とは

野菜を食べる画像
―具体的にどのように食事量を減らすべきでしょうか?

炭水化物(糖質)の摂取を控えめにすることです。あくまで一つの目安ですが、痩せるためには糖質を1日50g以下、お茶碗で軽く1杯程度に控えるとよいとも言われています。

しかし、糖質はご飯やパンだけでなく野菜などにも含まれていることを考えれば簡単ではありませんね。まず糖質は控えめにするということしか言えません。全く糖質を取らないということは不可能に近いですし、健康上もよくありません。

先ほど運動では痩せないと言いましたが、あくまで運動のみでは痩せないということで一定の消費カロリーを保つという観点で運動習慣は必要です。

―代謝も関係があるのでしょうか?

はい、「代謝が落ちる生活をしない」ことも必要です。

まず、十分な睡眠をとること。また、水分不足は栄養素や酸素の運搬、老廃物の排泄、体温の調節などに悪影響を及ぼして基礎代謝を低下させるので、水分を摂ることも大切です。1日2リットルくらい摂れるといいですね。

また、加齢とともに基礎代謝の低下により消費エネルギーが減少します。仕事での外出なども減ってしまうと、さらに消費エネルギーが減少するという負のスパイラルに入ることもあります。ですので、これらの注意点は加齢とともに重要性を増してきます。

痩せるための大敵・皮下脂肪の真実

ウエストを測る画像
―食事も運動も気を付けてはいるけれど、お腹周りの脂肪が気になると悩む男性が多いようです。

運動してもなかなか取れないお腹周りの脂肪は「皮下脂肪」でしょう。実はこの「皮下脂肪」は一旦つくと減りにくいのです。お尻や太ももなどの取れにくい脂肪も「皮下脂肪」です。

男性のメタボリックシンドロームの原因でもある「内臓脂肪」は、比較的短期間で減少します。しかし、「皮下脂肪」は最も減りにくいのです。

―どうして皮下脂肪は減りにくく、内蔵脂肪は比較的に減らしやすいのでしょうか?

内臓脂肪は血管が多い内臓周辺にできたものなので、内臓脂肪が先に消費されます。しかし、皮下脂肪がつきやすい場所の多くは、心臓から遠く延びた末梢(まっしょう)血管と呼ばれる血管が通っている場所にあるため、消費されにくいのです。

しかも皮下脂肪が増えると、その周辺は肥大化した脂肪細胞で血管が圧迫されて血流が悪化し、さらに脂肪が減りにくくなるという悪循環に陥ることも稀ではありません。
 

冷やして痩せる「部分やせ治療」という選択も

診断を受ける画像

―皮下脂肪を減らすのはなかなか難しいのですね。何か対処法はあるのでしょうか?

落ちにくい皮下脂肪だけ落とす、いわゆる「部分やせ」を医学的に実現する治療方法があります。

部分やせ治療の中でも、特に最近では、脂肪の減少効率が良い「冷やして痩せる」治療がより注目を集めています。

部分やせ治療方法には、主に2種類あります。一つは従来から行われている外科手術で脂肪を物理的に取り除く方法で、もう一つは、機器を用いて皮膚の上から皮下脂肪を温めたり、冷やしたりすることで脂肪細胞を破壊して脂肪の量を減らす方法です。

前者はいわゆる「脂肪吸引」としてよく知られている治療方法ですが、比較的大量の脂肪を取り除くことができる反面、小さいとはいえ皮膚を切開するため傷ができ、そこが感染症を起こすこともあります。また、ごく稀に合併症で死に至る危険性があります。そうした影響もあってか、近年ではこの施術は減少傾向にあります。

これに対して、皮下脂肪を温めたり、冷やしたりして脂肪細胞を減らす治療方法は、脂肪吸引ほど脂肪を大量に減らすことは難しいものの、安全性は優れていて年々増加している施術です。

その中でも特に「冷やす」部分やせ治療は、おすすめです。

―「冷やす」部分やせ治療について、詳しく教えてください。

脂肪冷却治療」というもので、皮下脂肪を減らしたい部位を軽く挟み込むアプリケータを装着し、その部分を冷却して脂肪細胞を結晶化し、皮下脂肪を減らします。

脂肪細胞は4℃程度まで冷却すると、細胞の中の水分は凍らず、中性脂肪と呼ばれる脂肪成分だけが結晶化します。脂肪冷却治療による皮下脂肪の冷却では、時間と温度を調節してこの状態を作り出し、脂肪成分だけを選択的に結晶化させます。

バター(脂肪)は水分よりも固まりやすい

この状態の脂肪細胞はしぼんでバラバラに壊れて、数週間から数カ月かけて自然に体外に排出されます。これで脂肪細胞の数が減り、結果として皮下脂肪が減少するわけです。

―リバウンドしないのでしょうか?

リバウンドを完全に起こさないとは言えませんが、“しにくい”とは言えます。

通常のダイエットは、肥大化した脂肪細胞が縮小した結果として痩せるため、脂肪細胞の数は減少せず、リバウンドしやすいのが難点です。しかし、脂肪冷却治療脂肪細胞の数そのものを減らすため、理論的にリバウンドしにくいと考えられています。

―冷やして痩せる「部分やせ治療」に向いている人は?

脂肪冷却治療は、太りにくい生活習慣を実践しながらも、若干お腹周りにつまめる程度の脂肪があり、気になる、何とかしたいという方に最適な施術です。

つまり体重を減らすためではなく、綺麗な体型を作るための美容医療と理解するのが正しいと思います。

内臓脂肪もかなりある肥満の方には、脂肪冷却治療は不向きです。脂肪冷却治療は皮下脂肪を減少させることはできますが、内蔵脂肪による肥満を解消するものではありません。

―美容医療というと女性がメインのイメージがありますが、男性でも受けられる治療なのでしょうか?

男女に共通する悩みは、お腹周りの皮下脂肪を何とかしたいというものです。このため最近では脂肪冷却治療を希望し、私のもとに来院する男性は増えています。

お腹周りの皮下脂肪に限れば、女性よりも男性の方が気にする人が多い印象です。その意味で現在は、男性も美容におカネを使う時代に変わりつつあるとも言えます。

―男性にとっても、「部分やせ」治療が選択肢になりつつあるということですね。


はい。中高年男性ではダイエットに一度成功した後、リバウンドをすることを繰り返してきた人も少なくありません。落ちにくい皮下脂肪に悩んでいるうちに、いつの間にか食生活などが乱れ、反動で以前よりも太ってしまったという話はよく聞きますよね。

加齢とともに代謝が低下しつつあるのに、痩せる→リバウンドを繰り返すとさらに痩せにくい体になり、体形も崩れます。それを防ぐため、新たな方法でその悪循環を断ち切るという考えも必要だと思います。

選択肢の一つとして、脂肪冷却治療などの「部分やせ」の治療と考えていただければ幸いです。

取材協力

drishikawa drishikawa

クロスクリニック銀座 院長 石川 浩一 先生

防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院に勤務。国家公務員共済組合連合会三宿病院形成外科医長、東京女子医科大学附属第二病院形成外科医局長を務めた後、1998年にクロスクリニックを開業。2014年、クリニックを新宿から銀座に移転。日本形成外科学会認定・形成外科専門医。日本形成外科学会、日本レーザー医学会、日本美容外科学会などの学会に所属し、現在、日本美容医療協会の理事を務める。レーザー等機器を用いた治療において世界トップクラスの設備と技術を持つ。開業から一貫して患者様第一主義で治療にあたり、「丁寧でわかりやすい説明」「最適な治療法の提案」を行う。