最近、お腹がでてきた…そんなお悩みをお持ちの男性も多いはず。スポーツジムに通ってもお腹まわりの脂肪だけはどうしてもなくならない、という声もよく耳にします。なぜ運動だけでは痩せられないのか。今回はクロスクリニック銀座の石川 浩一 先生に「男性の脂肪」を巡る事情をうかがいました。

監修・取材協力:石川 浩一 先生(クロスクリニック銀座 院長)

運動でお腹まわりを痩せようは間違い!?

―日々スポーツジムなどに通って運動をしているにもかかわらず、なかなか痩せないというお悩みを持つ男性が多いようです。なぜでしょうか?

痩せるためには、「摂取するエネルギー」よりも「消費するエネルギー」を多くする必要があります。(1)

たとえば、日常生活を送るうえで最低限必要な消費エネルギーである基礎代謝も含め1日の消費エネルギーが2500キロカロリーの人が、常に食事で1日3000キロカロリーを摂取しているならば、消費エネルギーを500キロカロリー以上増やせば痩せられることになります。

このように口でいうのは簡単なのですが、有酸素運動の代表格であるランニングで500キロカロリーを消費しようとすると、かなりハードな運動量が必要です。

筋トレにより筋肉を増やし、基礎代謝量を増加させると効率的に痩せられますが、(2) 毎日筋トレを行うのは簡単ではありません。また、筋肉の疲労を考慮すると毎日すべきでもありません。

運動のみで痩せるのは、なかなか難しいということですね。

そうですね。結局、一般の方があまりきついと感じない、たとえば緩やかな速度のランニングなどで痩せようとするならば、極端な話、1日20キロくらい走るなど日常生活のなかでは難しい桁違いの運動量が必要になります。※1

つまり、運動で消費エネルギーを増やすことで痩せるのはやや効率が悪く、摂取エネルギーを減らす、つまり食事量を減らすほうが現実的です。

※1 監修医師の臨床経験に基づく

食事、運動、生活習慣…痩せるための注意点とは

具体的にどのように食事量を減らすべきでしょうか?

炭水化物(糖質)の摂取を控えめにすることです。あくまで一つの目安ですが、痩せるためには糖質を1日50グラム以下、お茶碗で軽く1杯程度に控えるとよいといわれています。(3),(4)

しかし、糖質はご飯やパンだけでなく野菜などにも含まれていることを考えれば簡単ではありませんね。まず糖質は控えめにするということしかいえません。全く糖質をとらないということは不可能に近いですし、健康上もよくありません。

先ほど運動では痩せないといいましたが、あくまで運動のみでは痩せないということで、一定の消費カロリーを保つという観点で運動習慣は必要です。

代謝も関係があるのでしょうか?

はい、「代謝が落ちる生活をしない」ことも必要です。

まず、十分な睡眠をとること。(4) また、水分不足は栄養素や酸素の運搬、老廃物の排泄、体温の調節などに悪影響を及ぼして基礎代謝を低下させるので、水分をとることも大切です。1日2.5リットルくらいとれるとよいですね。(5)

また、加齢とともに基礎代謝の低下により消費エネルギーが減少します。(6) 仕事での外出なども減ってしまうと、さらに消費エネルギーが減少するという負のスパイラルに入ることもあります。ですので、これらの注意点は加齢とともに重要性を増してきます。

痩せるための大敵・皮下脂肪の真実

食事も運動も気を付けてはいるけれど、お腹まわりの脂肪が気になると悩む男性が多いようです。

運動してもなかなかとれないお腹まわりの脂肪は「皮下脂肪」でしょう。実はこの「皮下脂肪」は一旦つくと減りにくいのです。(8) お尻や太ももなどのとれにくい脂肪も「皮下脂肪」です。

男性のメタボリックシンドロームの原因でもある「内臓脂肪」は、比較的短期間で減少します。しかし、「皮下脂肪」は減りにくいのです。(9)

どうして皮下脂肪は減りにくく、内臓脂肪は比較的減らしやすいのでしょうか?

内臓脂肪は血管が多い内臓周辺にできたものなので、内臓脂肪が先に消費されます。しかし、皮下脂肪がつきやすい場所の多くは、心臓から遠く延びた末梢(まっしょう)血管とよばれる血管が通っている場所にあるため、消費されにくいのです。(10)

しかも皮下脂肪が増えると、その周辺は肥大化した脂肪細胞で血管が圧迫されて血流が悪化し、さらに脂肪が減りにくくなるという悪循環に陥ることも稀ではありません。(11)

気になる部位の脂肪を減らす治療法とは

皮下脂肪を減らすのはなかなか難しいのですね。何か対処法はあるのでしょうか?

狙った部分の脂肪細胞の減少を医学的に目指す治療があります。

治療法は主に2種類あります。一つは外科手術で脂肪を物理的に取り除く方法で、もう一つは、機器を用いて皮膚の上から皮下脂肪を温めたり、冷やしたりすることで脂肪細胞を破壊して脂肪の量を減らす方法です。(12)

前者はいわゆる「脂肪吸引」としてよく知られている治療法ですが、比較的大量の脂肪を取り除くことができる反面、小さいとはいえ皮膚を切開するため傷ができ、そこが感染症を起こすこともあります。また、ごく稀に合併症で死に至る危険性があります。そうした影響もあってか近年ではこの施術は減少傾向にあります。(13)

これに対して、皮下脂肪を温めたり、冷やしたりして脂肪細胞を減らす治療法は、脂肪吸引ほど脂肪を大量に減らすことは難しいものの、切開をともなわないことから、外科施術と比較してダウンタイム※2 が少ないとされています。

※2 施術後から回復までの期間のことで、施術前の生活を取り戻せるまでの期間

「冷やす」ことで体型の改善を目指す「脂肪冷却治療」について、詳しく教えてください。

脂肪冷却治療」は、皮下脂肪を減らしたい部位を軽く挟み込むアプリケータを装着し、その部分を冷却して脂肪細胞を結晶化し、皮下脂肪を減らします。(14)

脂肪細胞は4℃程度まで冷却すると、細胞のなかの水分は凍らず、中性脂肪とよばれる脂肪成分だけが結晶化します。脂肪冷却治療による皮下脂肪の冷却では、時間と温度を調節してこの状態をつくりだし、脂肪成分だけを選択的に結晶化させます。(14)

※イメージ

この状態の脂肪細胞はしぼんでバラバラに壊れて、数週間から数カ月かけて自然に体外に排出されます。これで脂肪細胞の数が減り、結果として皮下脂肪が減少するわけです。(14)

リバウンドしないのでしょうか?

脂肪冷却治療はリバウンドを完全に防ぐものではありませんが、比較的リバウンドしにくい治療といえます。ただし、治療後の食生活や運動習慣によっては脂肪が再び蓄積する可能性があるため、個人差が生じることも覚えておきましょう。

通常のダイエットは、肥大化した脂肪細胞が縮小した結果として痩せるため、脂肪細胞の数は減少せず、リバウンドしやすいのが難点です。しかし、脂肪冷却治療は脂肪細胞の数そのものを減らすため、理論的にリバウンドしにくいと考えられています。(11),(14)

脂肪冷却治療に向いている人は?

脂肪冷却治療は、太りにくい生活習慣を実践しながらも、若干お腹まわりにつまめる程度の脂肪があり、気になる、何とかしたいという方に向いている施術といえるでしょう。

つまり体重を減らすためではなく、キレイな体型をつくるための美容医療と理解するのが正しいと思います。(14)

内臓脂肪もかなりある肥満の方には、脂肪冷却治療は不向きです。脂肪冷却治療は皮下脂肪を減少させることはできますが、内臓脂肪による肥満を解消するものではありません。

※監修医師の臨床経験に基づく

美容医療というと女性がメインのイメージがありますが、男性でも受けられる治療なのでしょうか?

男女に共通する悩みは、お腹まわりの皮下脂肪を何とかしたいというものです。このため最近では脂肪冷却治療を希望し、私のもとに来院する男性は増えています。

お腹まわりの皮下脂肪に限れば、女性よりも男性の方が気にする人が多い印象です。その意味で現在は、男性も美容にお金を使う時代に変わりつつあるともいえます。

※監修医師の臨床経験に基づく

男性にとっても、脂肪冷却治療が選択肢になりつつあるということですね。

はい。中高年男性ではダイエットに一度成功したあと、リバウンドをすることを繰り返してきた人も少なくありません。落ちにくい皮下脂肪に悩んでいるうちに、いつの間にか食生活などが乱れ、反動で以前よりも太ってしまったという話はよく聞きますよね。

加齢とともに代謝が低下しつつあるのに、痩せる→リバウンドを繰り返すとさらに痩せにくい体になり、体型も崩れます。それを防ぐため、新たな方法でその悪循環を断ち切るという考えも必要だと思います。

選択肢の一つとして、脂肪冷却治療などのアプローチを考えていただければ幸いです。

※監修医師の臨床経験に基づく

参考文献
(1) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(参照:2026-02-17)
(2) 田中 喜代次,中田 由夫:体力科学.2017;66(3):209-212.
(3) 幕内 秀夫:世にも恐ろしい「糖質制限ダイエット」講談社2014.
(4) 田代 淳:千葉県栄養士会雑誌.2013:11(12):2-3.
(5) 宮田 聖子 他:オレオサイエンス.2019:19(7):285-290.
(6) 厚生労働省「健康のために水を飲もう」(参照:2026-02-17)
(7) 若林 秀隆:静脈経腸栄.2014;29(3);41-46.
(8) 厚生労働省「eヘルスネット」メタボリックシンドロームを予防する食事・食生活(参照:2026-02-17)
(9) 桝田 出,宮脇 尚志:MEDICINAL.2011;1(3);48-49.
(10) 井上 修二,徳永 勝人:肥満研究.2005;11(1);95-99.
(11) 川上 民裕:日本臨床免疫学会会誌.2007;30(3);156-164,
(12) 杉浦 甫:美容皮膚医学BEAUTY.2019;2(11);6-23.
(13) 宮田 成章:美容皮膚医学BEAUTY.2019;2(11);24-32.
(14) 酒井 直彦:美容皮膚医学BEAUTY.2019;12.2.(11);90-93,98.
(15) 野本 真由美:美容皮膚医学BEAUTY.2019;12.2.(11);33-34.

JP-AGNA-210013

監修・取材協力

クロスクリニック銀座 院長 石川 浩一 先生

クロスクリニック銀座 院長
石川 浩一 先生

防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院に勤務。国家公務員共済組合連合会三宿病院形成外科医長、東京女子医科大学附属第二病院形成外科医局長を務めた後、1998年にクロスクリニックを開業。2014年、クリニックを新宿から銀座に移転。日本形成外科学会認定・形成外科専門医。日本形成外科学会、日本レーザー医学会、日本美容外科学会などの学会に所属し、現在、日本美容医療協会の理事を務める。レーザー等機器を用いた治療において世界トップクラスの設備と技術を持つ。開業から一貫して患者様第一主義で治療にあたり、「丁寧でわかりやすい説明」「最適な治療法の提案」を行う。

クロスクリニック銀座

住所:東京都中央区銀座5-4-9 ニューギンザ5ビル10F

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