「ダイエットしても痩せられない」という場合、アプローチの仕方が間違っているのかもしれません。太ったり痩せたりする原因は、脂肪細胞にあります。美しい体型づくりを目指している方は、まずは脂肪細胞についてしっかりと理解しましょう。

脂肪細胞の特徴、脂肪細胞とダイエットの関係、脂肪細胞の数を減らして痩せることができる「部分痩せ治療」について解説します。

監修・取材協力:下島 久美子 先生(KUMIKO CLINIC 院長)

脂肪細胞を減らすことは可能 ?

健康を維持するためにも、美しい体型を手に入れるためにも、大切なのは脂肪細胞に注目することです。しかし、一般的なダイエットで脂肪細胞の数を減らすことはできません。

脂肪細胞の数を減らす方法として、クリニックで受けられる「部分痩せ治療」という選択肢があります。

通常のダイエットで脂肪細胞を減らすのは無理

通常のダイエットでは、脂肪細胞の大きさを小さくすることはできても、数を減らすことはできません。 

運動や食事制限で脂肪細胞の大きさが小さくなり、ダイエットに成功しても、効果は一時的である可能性があります。脂肪細胞の数が減るわけではないため、ダイエットをやめてしまうと脂肪細胞は再び大きくなり、リバウンドしてしまいます。

脂肪細胞を減らすなら、部分痩せ治療が効果的

脂肪細胞の数を減らしたい場合、クリニックで「部分痩せ治療」が効果的です。

部分痩せ治療であれば、一般的なダイエットでは難しい特定の部位の脂肪細胞のみを減らすことができます。治療後、急激に太ることがなければ、長期的な体型維持もしやすいでしょう。

脂肪細胞が減らない、誤解されがちなダイエット方法 

テレビやSNS等で取り上げられる食事制限や運動、サプリメントを活用するなどのダイエットは、残念ながら脂肪細胞自体の数を減らすことはできません。

その理由を詳しく解説していきます。

食事制限

食事制限は、脂肪細胞のサイズを小さくできますが、脂肪細胞自体を減少させることは不可能です。食事制限をすると、脂肪細胞に蓄えられた脂肪が分解され、エネルギーとなって放出されることで、脂肪細胞のサイズが縮小しているといえます。

食事制限によって一時的に痩せたとしても、食事制限をやめるとリバウンドにつながるのは、脂肪細胞に脂肪が蓄えられて、脂肪細胞のサイズが再び大きくなっているためです。

運動

筋トレや有酸素運動は、脂肪を燃焼することで脂肪細胞のサイズを小さくしているのであって、脂肪細胞自体を減らしているわけではありません。

運動によってエネルギーが足りなくなると、体は、脂肪細胞の中に存在している脂肪を分解してエネルギーとして消費しようとします。

そのため、運動をやめて消費カロリーを摂取カロリーが上回るようになると、脂肪細胞が大きくなり、リバウンドにつながります。

サプリメント・健康食品

サプリメントや健康食品は、あくまで食品であり、医薬品ではないため、サプリメントなどを飲んだからといって、脂肪細胞を減らしたり、楽に減量できたりといった根拠はありません。

サプリメントなどは、日常の食生活だけでは不十分な栄養素を補ったり、糖や脂質の吸収を抑える働きがあったりなど、あくまで生活習慣の手助けしてくれるアイテムです。

また、無承認無許可医薬品と呼ばれる食品でありながら医薬品に使われる成分を配合した製品は、特に注意が必要です。過去に個人輸入で中国製ダイエット食品を購入・摂取したことによって、150件以上の健康被害が報告された事例もあります。健康に痩せるためにサプリメントを摂取したのに、サプリメントによって健康を害しては本末転倒です。国や政府が効果や安全性が認めていない製品の購入は、非常に危険なため注意しましょう。

脂肪細胞の特徴

脂肪細胞は、人間にとっては欠かせない組織の一つでもあります。しかし脂肪細胞が大きく膨らみすぎると、体型が崩れたり病気になりやすくなったりします。なぜそのようなことが起きるのでしょうか。まずは、脂肪細胞の特徴について解説します。

脂肪細胞とは

脂肪細胞の役割は、血液中の余分な脂質や糖を取り込み、エネルギーとして蓄えることです。そして、脂質や糖質を蓄えた脂肪細胞はどんどん大きくなり、丸く膨らんでいきます。脂肪細胞に蓄えられた脂肪は、体温の維持や内臓の位置を正常に保つなど重要な働きを担っています。しかし、脂肪細胞が大きくなりすぎるのは好ましいことではありません。

肥大化した脂肪細胞からは、体に悪影響をおよぼす物質が多く分泌されるようになるため、動脈硬化や高血圧、糖尿病などにかかるリスクが高まります。もちろん、体型にも影響します。

つまり、脂肪細胞は体に欠かせない組織であるものの、大きくなりすぎると健康にも見た目にも悪影響をおよぼす存在なのです。

脂肪細胞の数は変わらない

脂肪細胞の数の変化に関する議論はさまざまありますが、一般的には、生後から思春期にかけて増加していき、20歳前後で安定し始めるといわれています。

では、成人後に脂肪細胞の数がほとんど変わらないのに、どうして人は太ったり痩せたりするのでしょうか。それには、脂肪細胞の大きさの変化が関わっています。

太ったり、痩せたりは脂肪細胞の大きさが変わるだけ

脂肪細胞は全身に存在しています。人が太ったり痩せたりするのは、全身にある脂肪細胞が大きくなったり、小さくなったりすることで、体型や体のパーツそのものの大きさに変化が生じるのが原因です。

食事のカロリーを減らしたり、運動をしてエネルギーの消費量を増やしたりすると、全身の脂肪細胞は小さくなります。しかし、「胸のサイズを保ったまま、ウエストのくびれをつくる」というように、特定の部位の細胞だけを小さくすることは、基本的にはできません

美しい体型づくりのポイントは、皮下脂肪を落とすこと

体に蓄積する脂肪は、皮下脂肪と内臓脂肪に分けられます。そして、美しい体型を目指すためには、内臓脂肪ではなく皮下脂肪を落とすのが効果的とされています。 

●皮下脂肪

皮下脂肪は皮膚と筋肉の間に蓄えられます。お腹やお尻、背中、二の腕などについた、指でつまむことができる脂肪は、ほとんどが皮下脂肪です。そして、女性は男性に比べて皮下脂肪がつきやすいことが知られています。きれいに痩せて理想のスタイルを目指すためには、この皮下脂肪を落とすことに注力するのがポイントです。

●内臓脂肪 

内臓脂肪は筋肉の下にあり、臓器を覆うようにしてついている脂肪です。こちらは、皮下脂肪のように指でつまむことはできません。内臓脂肪は、さまざまな生活習慣病を引き起こす原因として知られ、男性は女性に比べて内臓脂肪がつきやすい傾向にあります。

脂肪細胞の数を減らす4つの部分痩せ治療

脂肪細胞の数にアプローチする部分痩せ治療は、おもに以下の4つに分類されます。方法は、メスや注射を使うものから、機器を使うものまでさまざまです。

4つの部分痩せ治療について、ご紹介します。

※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

脂肪吸引

脂肪吸引では、メスで皮膚を数mm切開し、専用の細い管を皮膚の下に入れて、脂肪細胞を吸引します。この方法では、大きな部位を一度に治療することが可能です

脂肪溶解注射

脂肪溶解注射では、少量の薬剤を皮下に注射して気になる部分の脂肪を溶かします。顔などの小さなパーツの部分痩せに向いていますが、効果には個人差があり、部位によっては複数回の治療が必要となります。

脂肪冷却治療

脂肪冷却治療は、「低温に弱い」という脂肪の特性を利用した治療方法です。専用の機器で気になる部分を冷却して脂肪細胞を結晶化することで体外に排出させ、その部分の脂肪細胞の数を減らします。

加熱治療

加熱治療は、専用の機器で皮下脂肪を温めることで、皮下脂肪を分解し徐々に減らす治療方法です。代表的なものとして、高周波(ラジオ波)治療があります。

なお、機器を用いた治療の場合には、厚生労働省の承認を受けている機器かどうか確認するようにしましょう。厚生労働省の承認は、国による厳しい審査を受け、品質および日本人における有効性と安全性が認められて初めて受けられるもので、治療を受ける際の重要な判断基準になります。 

クリニックのホームページなどに記載されている場合もあるので、ぜひチェックしてみてください。

脂肪細胞を減らすには?よくある質問  

脂肪細胞を減らす効果は、キャビテーションやハイフ(HIFU)にありますか?

※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

若干の影響はあるかもしれませんが、キャビテーションやハイフによって脂肪細胞が減ることは期待できません。

キャビテーションは、超音波によって脂肪細胞にアプローチする施術です。主にエステで使われています。

しかし、エステでは、医師免許を持たないスタッフが施術を行うので、脂肪細胞にアプローチできるほどの出力が担保されていなかったり、安全性が高いとは言えなかったりと課題もあります。あくまでリラクゼーション目的で利用したほうがよいでしょう。

また、ハイフは機器を肌へ照射すると、超音波の熱エネルギーによって皮膚や皮下脂肪などを収縮させるので、たるみ改善に効果が期待できます。しかし、脂肪細胞自体を減らす効果はないため、痩身というより、リフトアップ目的に使われます。

脂肪細胞を減らす医療行為としては、脂肪吸引脂肪溶解注射脂肪冷却治療、加熱治療が代表的です。施術を受けたい部位や施術のデメリットを医師と相談したうえで、治療方法を選択するようにしましょう。

脂肪吸引をしたら体重も減りますか?

脂肪吸引をしても体重にほとんど変化はありません。

脂肪は筋肉よりも体積が大きいので、見た目に変化が出るほど皮下脂肪を減らしたとしても、実際の体重はわずかにしか減らないとされています。

脂肪吸引などの痩身治療は、見た目を整えるために利用されるので、体重を減らしたいのであれば摂取カロリーを減らし、消費カロリーを増やす取り組みが効果的です。

脂肪細胞を減らすとどうなりますか?

脂肪細胞を減らすと、痩身効果とリバウンド防止効果が期待できます。

脂肪となる脂肪細胞自体が減るため、すっきりとしたプロポーションに近づきます。また、体重が増加したとしても、脂肪細胞が少ない部位には脂肪がつきにくくなるのが魅力です。

脂肪細胞はどうやって排出されますか?

脂肪冷却治療や、加熱治療によって機能が停止した脂肪細胞は、約1~3か月かけてゆっくりと代謝されていきます。

脂肪細胞が分解されると、脂肪酸とグリセロールという物質となって、血中に放出されます。

血中から肝臓へ運ばれると、肝臓で代謝を受けて、その後もゆっくりと代謝されていくため、身体に悪影響はありません。

まとめ

脂肪細胞は、体温の維持や内臓の位置を保つなど重要な役割を果たす組織です。しかし、脂肪細胞が脂質や糖質を蓄えて肥大化すると、健康面でも美容面でも悪影響は避けられません。美しい体型を目指すためには、皮膚と筋肉の間に蓄積する皮下脂肪を適度に落とすことが重要です。

一般的なダイエットでは脂肪細胞を小さくすることはできても、数自体を減らすことはできません。脂肪細胞の数を減らしたい場合は、クリニックで部分痩せ治療を受けることを検討しましょう。

部分痩せ治療にはさまざまな種類があり、痩せたい部位や範囲、傷が残るかどうかといった点や、ダウンタイムなどにも配慮する必要があります。部分痩せ治療を希望する際には、クリニックでのカウンセリングをしっかりと受け、納得のいく方法で治療を受けるようにしましょう。

監修・取材協力

KUMIKO CLINIC 院長 下島 久美子 先生

KUMIKO CLINIC 院長 下島 久美子 先生

金沢医科大学卒業。杏林大学第一内科入局、内科医として大学病院、一般病院にて臨床経験を積んだ後、都内某美容クリニックに入職し、レーザー治療、注入療法の美容医療全般を学び美容皮膚科医としての臨床経験を積む。2014年、日比谷・有楽町に自身のクリニックを開院し、現在に至る。日本内科学会認定医、サーマクール認定医、アラガン社ボトックス・ヒアルロン酸注入指導医。患者様に提供する美容医療は、自分自身で体験し評価する。メスを使わない痩身治療とメスを使わない自然で美しい若返りを叶える注入治療の2つの治療を得意とする。

KUMIKO CLINIC

住所:〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-6-10 スクワール日比谷ビル8(受付)・9F

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