唇にヒアルロン酸注入することで、唇のボリュームアップや、理想の唇の形に近づくことが可能です。

最近では唇のヒアルロン酸注入を希望する人も増えてきており、トレンドのリップや若々しいリップに憧れる方も多いのではないでしょうか?

しかし、治療によるデメリットや効果について不安があり、クリニックへ相談するのをためらっている方もいるでしょう。

そこで今回は、事前に知っておきたい唇へのヒアルロン酸注入の効果やリスク、気になる疑問について、アラジン美容クリニック 院長の川野 ゆうや 先生に伺いました。

監修・取材協力:川野 ゆうや 先生(アラジン美容クリニック 院長)

唇のヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)とは?

唇のヒアルロン酸注射は、私たちの体内に広く存在する物質であるヒアルロン酸を唇に注入し、ボリュームを出したり形を整えたりといった効果を得る施術です。(1)

唇は、顔全体の魅力に影響を与える、とても重要なパーツといわれています。ヒアルロン酸注入によって唇の幅や厚みを変化させることは、単に唇の形状を変えるだけでなく、顔全体の印象を変えたり、整えたりすることにもつながります。(2)

興味を持つ人も増えているようで、「唇 ヒアルロン酸」というワードのインターネット検索ボリュームが短期間で大幅に増加するなど、唇のヒアルロン酸注入治療への注目度はアップしているといえます。

唇へのヒアルロン酸注入治療を希望して川野 先生のクリニックを訪れる患者さんも増えているそうで、「ニーズが高まっているのを感じる」と川野 先生もおっしゃっていました。

唇のヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)に期待できる効果やメリット

まずは、唇のヒアルロン酸注入治療で得られる効果やメリットを具体的にご紹介しましょう。

自分の理想とする唇の形に近づけられる

唇にはさまざまな形状があり、形状の違いによって印象も変化します。(3)

ヒアルロン酸注射によって、自分が理想とする形状に、唇の形を変化させることが可能です。以下は医学用語ではありませんが、見聞きすることが多い唇の形状や施術名をご紹介します。

M字リップ

M字リップ

M字リップとは、上唇の輪郭が「M字型」になった唇のこと。M字ラインを作ることで、口元にふっくらとしたボリューム感が生まれ、かわいらしく若々しい印象に近づくといわれています。

M字リップかつ口角が上がるようにする施術を「スマイルリップ」と呼ぶこともあります。

Cカールリップ

Cカールリップ

Cカールリップとは、横から見た際に鼻先から唇の先までのラインが「C」の字になる(Cカールができる)ようにデザインされた唇のこと。Cカールがあることで人中が短縮されて見え、面長な印象が解消されて顔のバランスが改善されるという特徴があります。(2),(4)

また、加齢によって唇が薄くなり、人中が平坦になっている人も、Cカールをつくり、唇を上向きにすることで老けた印象を改善することが可能です。(4)

アヒル口

アヒル口

アヒル口とは、口角が上向きで、口先がやや突き出したような形になった形状の唇のこと。アヒルのくちばしのようにも見えることから、こう呼ばれています。

アヒル口の唇は、正面から見たときに上唇のラインがW字型をしているのが特徴。セクシーさや女性らしさを印象付けやすい形状といわれています。

ロシアンリップ

ロシアンリップ

「ロシアンリップ (RUSSIAN LIPS)」は、名前の通りロシア発祥の唇デザイン。マトリョーシカというロシアの人形に描かれた唇のように、ぷっくりとした厚みのある形状が特徴です。

スクエアリップ

スクエアリップ

下唇にボリュームを持たせて、輪郭を強調するような形状の唇です。下唇の輪郭が四角に近い形になっていることから、スクエアリップと呼ばれています。

アンバランスな唇の形の調整

理想の形に近づけるのではなく、アンバランスな部分を調整し、形を整えることもできます。

唇を含む下顔面(鼻の下~あごにかけてのゾーン)には、顔のバランスが整っているかどうかを決定する特徴が表れやすいといわれており、唇を整えることは、顔全体のバランス調整にもつながるといえます。

唇のバランスを整える際に参考にしたいのが、「唇の黄金比」です。

唇の黄金比

唇には、実は美しく見える「黄金比」があります。

まずは下顔面の中での唇の位置。人中から下唇までの長さと、下唇からあごまでの長さが1:1になる場所に唇があると、下顔面のバランスが良く、美しく見えるといわれます。(2)

唇の位置に関する黄金比

さらに上唇と下唇の厚みの比率も重要です。上唇と下唇の厚みのバランスが1:1.6(下唇の厚みが上唇の1.6倍)であるのが、美しい唇の条件とされています。(2)

しかし、日本人を含むアジア人の場合は、欧米人に比べて唇が薄めのことが多く、上下の唇の厚みが約半々、1:1~1.2くらいのほうが美しい場合もあります。(5)

上唇と下唇の厚みに関する黄金比

ほかに、上唇の山の部分(キューピッド・ボウ)や唇の輪郭(バーミリオンボーダー)がはっきりしていることや、横から見た時に上唇が下唇よりも1~2mm前に出ていることなども美しい唇の条件とされています。(2)

そうした特徴に合わせて唇のバランスを整えると、より魅力的になるでしょう。

上唇の山の部分(キューピッド・ボウ)と唇の輪郭(バーミリオンボーダー)

人中を短く見せられる

いわゆる「鼻の下」の部分にあたる人中が平べったく長いと、老けた印象を与えがちです。(3) 人中が長く見えるのが気になる場合は、Cカールをつくるようなイメージで上唇にヒアルロン酸を注入すると、前に突き出た上唇の影響で、人中が短くなったように見せることが可能です。

Eラインのバランスを整えられる

唇には横顔の美しさを形づくる役割もあります。ヒアルロン酸注入治療によって上唇に厚みを持たせ、横から見たとき、下唇よりも少し前に出るように形づくると、きれいなEラインに近づけることができ、横顔の美しさもキープできます。(2)

Eラインとは

Eライン

Eラインとは、顔を横から見たとき、鼻先とあごを結んだラインのこと。一般的には、横から見たときに下唇だけがラインに触れるのが美しい横顔の条件といわれていて、さらに上唇が下唇に比べて1~2mm前方に出ているのが理想的だとされています。(1),(2)

日本人の場合は、欧米人ほど鼻に高さがないという骨格上の特徴を踏まえて、下唇だけがラインに触れるのではなく、鼻先、唇、あご先が1本のライン上にあれば美しいといわれています。(1)

エイジングケアができる

加齢に伴い、唇にもエイジングサインが現れてきます。

例えば、厚かった唇が薄くなる、周囲の皮膚に縦じわができる、人中が平らになる、輪郭がぼんやりしてくるといったことです。(4) エイジングサインのケアも、ヒアルロン酸注射によって期待できる効果の一つです。

唇のヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)のリスクやデメリット

唇にヒアルロン酸注射を行った場合の一般的な副作用として、内出血、腫れ、むくみ、赤み、かゆみ、痛み、不自然な凹凸などの症状が現れることがあります。(5)

もしも腫れや赤みが日に日に悪化するといった兆候があれば、治療を受けたクリニックに連絡してください。

ごく稀に重篤な有害事象(皮膚の循環障害や壊死など)が起こることもあります。

また、稀に注入後、時間が経ってから、感染症やアレルギー症状、肉芽腫、血腫、感染、注入部位の着色または退色、神経圧迫、塞栓、膿疹形成、過敏症などが起きることもあります。

唇のヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)の施術

続いて、唇のヒアルロン酸注射の流れを川野 先生に教えていただきました。

施術時間や流れ

唇へのヒアルロン酸注射は、以下のステップで行います。

  • 麻酔をする(クリーム、神経ブロックまたは笑気麻酔)
  • ヒアルロン酸を少しずつ注入する
  • 仕上がりを確認し、処置完了

唇は神経が集中していて痛みが出やすい部位です。痛みが心配な場合は神経ブロックの麻酔を使うと注入時の痛みをなくすことができます。(6)

ただし、腫れが出たり、麻酔の効果がなくなるまでは口の周辺が動きづらくなったりする影響があります。処置完了後は、問題がなければ帰宅していただけます。

唇のヒアルロン酸を注入する部位

唇のヒアルロン酸の注入部位

ヒアルロン酸を注入する部位は、唇の悩みに応じて異なります。

例えば、CカールリップやM字リップをつくりたい場合は、キューピッドボウを中心に、口角を挙げたい場合は上下の唇の端に、といった具合でヒアルロン酸を注入します。(4)

一方、輪郭のぼやけや人中の平坦化など、エイジングに関するお悩みがある場合は、バーミリオンボーダーを含む上唇全体に注入して改善を目指します。(4)

どのように注入をするにせよ、唇の構造をしっかりと理解した医師に施術を任せることが大切です。

使用する製材

ヒアルロン酸製材にはさまざまな種類があり、注入する部位によって使い分けています。唇に使用するのはヒアルロン酸製材のなかでも比較的やわらかい質感のものです。(1)

承認品と未承認品

承認品と未承認品

硬さ以外にも注目しておきたいのが、承認品と未承認品です。ヒアルロン酸製材のなかには、薬事承認を受けた「承認品」と、承認を受けていない「未承認品」があります。日本では、保険診療の場合は、原則「承認品」しか使用が認められていません。(7)

自由診療では医師の責任のもと、「未承認品」を使うことも可能ですが、現在、国内の美容皮膚科学会などでは安全治療に対するガイドラインが作成され、薬剤や機器においては承認品の使用が推奨されています。(7),(8)

唇のヒアルロン酸注射を受けるクリニックをこれから探す・選ぶという場合は、使用している製材についても気にしてみるとよいかもしれません。

施術後の注意点

唇へのヒアルロン酸注入後の注意点

唇へのヒアルロン酸注射の後24時間は、激しい運動、日光や高温への長時間の曝露、飲酒は避けてください。(4)

施術後2~3日は、注入部分がふくらみ気味になる場合もあります。しかし1週間ほどで徐々に自然な仕上がりに落ち着いていくでしょう。(1) 少し様子を見て、それでも仕上がりが気になる場合はあらためてクリニックに連絡してみましょう。

唇のヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)に関するよくある疑問

唇へのヒアルロン酸注入治療に関する疑問

唇のヒアルロン酸注射(ヒアルロン酸注入)に関する気になる疑問についても、川野 先生に教えていただきました。

唇のヒアルロン酸はどれくらい持つ?

ヒアルロン酸注射の効果を実感する期間は、注入部位や回数、体質などによりますが、12か月程度と考えられます。(9)

よくおしゃべりをするなど、唇を開けたり閉じたりする回数が多いほど、ヒアルロン酸の持続期間は短くなる傾向があります。
※監修医師の臨床経験に基づく

唇のヒアルロン酸を注入すると痛い?

唇は神経が集中していて、痛みが生じやすい部位といわれています。(1)

しかし、ヒアルロン酸注入前には麻酔を行えば、痛みは軽減できるでしょう。神経ブロックの麻酔など、使用する麻酔の種類によっては、痛みをほぼ感じずに治療することもできます。(6)

唇にヒアルロン酸を注入するとバレる?

適正に治療をしてバレることは、現在の技術や製材ではほぼないと言えます。心配な方は施術前に、バレにくいナチュラルな変化が希望であることを伝えておくとよいでしょう。
※監修医師の臨床経験に基づく

唇にヒアルロン酸を注入した後、キスはいつからできる?

施術後のキスは、患者さんから聞かれることの多い質問の一つです。

キスの仕方によっては強い刺激が唇に加わり、注入したヒアルロン酸製材が偏ってしまう可能性があります。そのリスクを避けるため、原則施術後1週間程度はキスを避けるようお伝えしています。軽い接触程度のキスなら、施術の3日後くらいから可能なこともあります。

なお、リップメイクについては感染のリスクを考慮して、針穴がふさがったと考えられる、施術の24時間後からOKとお伝えしています。
※監修医師の臨床経験に基づく

値段の目安は?

唇のヒアルロン酸注射にかかる費用は、注入する製材の量や種類などを考慮し、クリニックごとに異なる価格設定がされています。

1本あたり1ccで5~10万円程度の価格が一つの目安となるでしょう。特別なキャンペーン以外でこれよりも著しく安い価格設定がされている場合は、注意したほうがよいかもしれません。

ちなみに唇の場合、1ccあればおおよその治療は可能ですが、理想的な唇に何cc入れる必要があるかは一人ひとり異なります。まずはカウンセリングでご相談いただくとよいでしょう。

参考文献
(1) 古山 登隆:解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法:メディカルレビュー社.2020
(2) 古山 登隆:美容皮膚医学 BEAUTY.2021.4(11):6-18
(3) 美容皮膚医学BEAUTY.2021.4(11):12-13
(4) 大慈弥 裕之:美容皮膚医学 BEAUTY.2021.4(11):19-24
(5) 加藤 聖子:美容皮膚医学BEAUTY.2021.4(11):50-57
(6) 征矢野 進一:日本香粧品学会誌.2013.37(1):25
(7) 厚生労働省「医療機器の薬事承認等について」
(8) 日本美容外科学会「美容医療診療指針(令和 3 年度改訂版)」
(9) Raspaldo H, et al. :J Drugs Dermatol. 2015.Dec;14(12):1444-52

監修・取材協力

アラジン美容クリニック 院長 川野 ゆうや 先生

アラジン美容クリニック 院長 川野 ゆうや 先生

医学博士。

熊本大学医学部卒業(2015年)。熊本大学病院の皮膚形成再建科医に入職し、キャリアをスタート。手術の経験を積むとともに、皮膚エイジングケアの研究を行い、博士号を取得。その後、はなふさ皮膚科久我山院院長、大手美容外科新宿院、ルラ美容クリニック高田馬場・東京駅前・新宿院の院長を歴任し、2023年にアラジン美容クリニックを開院。日本美容外科学会(JSAS)会員、日本皮膚科学会会員。

アラジン美容クリニック

住所:東京都豊島区東池袋1丁目30-6 セイコーサンシャインビルⅻ6F

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