顔の産毛が減り、肌がトーンアップすると人気の「顔脱毛」。

しかしワンランク上の「すっぴん美肌」に近づくために、もう一歩先のケアとして「注入治療」があることをご存じですか?

今回は、顔脱毛の医学的なメリットから、さらに上をいく美肌を育むための注入治療まで、レナトゥスクリニックの副田 先生に詳しく解説していただきます。

監修・取材協力:副田 周 先生(レナトゥスクリニック 統括院長)

「すっぴん美肌」の第一歩。医師が解説する顔脱毛の医学的メリットとは

「顔脱毛をしたら、化粧ノリが良くなった」「肌がワントーン明るくなった気がする」といった声を聞いたことがあるかもしれません。

脱毛により顔の産毛が減ることで、肌の色に占める黒色の割合が減少し、物理的に肌が明るく見えます。これは、遠くから見るとうっすらと肌を黒く見せていた産毛が少なくなるためです。

また、産毛という“邪魔なもの”がなくなることで、ファンデーションなどの化粧品が肌に均一に密着しやすくなり、メイクの仕上がりが変わります。

さらに重要なのが、化粧を「落とすとき」の変化です。産毛が減ると、毛穴に詰まった汚れや化粧品がスムーズに落とせるため、肌をゴシゴシと強く擦る必要がなくなります。

肌への過度な摩擦は、慢性の炎症を引き起こし、シミや肝斑といった色素沈着の要因になりかねません。(1),(2) 顔脱毛は、この摩擦による肌トラブルのリスクを軽減することにもつながるのです。

ほかにも、産毛が減ることで皮脂や汚れが毛穴に溜まりにくくなり、皮脂の酸化による毛穴の黒ずみを防ぐ効果も期待できます。

そもそも「顔脱毛」とは?治療の流れと注意点

「顔脱毛には興味があるけど、痛みが心配」「どんな流れで治療が進むの?」といった不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。

ここでは、医療レーザー脱毛の基本的な仕組みから、治療の流れ、注意点まで詳しく解説します。

医療脱毛の仕組み

医療脱毛では、毛の黒い色素(メラニン)に反応するレーザーを肌に照射します。

ちなみに、レーザーは、さまざまな波長を含む「光」とは異なり、単一の波長を持つ特殊な光です。この特性によって、狙った部分に集中的にエネルギーを届けることが可能になり、高い脱毛効果が期待できるのです。

医療レーザー脱毛は、このレーザーの特性を活かして毛根にある発毛組織を破壊することで、毛を生やしにくくする治療法です。その仕組みは、以下のステップで進行します。

医療脱毛の仕組み

※イメージ
文献(3)を参考に作成

  1. レーザーを肌に照射します。レーザーは、毛の黒い色素(メラニン)にのみ強く反応するように設定されています。(3)
  2. レーザーの光は、皮膚の表面を通り過ぎ、ターゲットである毛の黒い色素(メラニン)にのみ吸収されます。(3)
  3. 光を吸収した毛は、黒い服が太陽の光で熱くなるのと同じように、瞬時に熱を持ち、それが毛根にある毛をつくる組織にダメージを与えて破壊されます。(3)
  4. ダメージを受けた毛根は新しい毛を再生する能力を失い、毛が生えにくくなります。(3)

脱毛で使われるレーザーには、主に「アレキサンドライトレーザー」「ダイオードレーザー」「YAG(ヤグ)レーザー」の3種類があり、(4) 患者さんの毛質や肌質に合わせて使い分けられます。

一般的には、まず産毛への反応がよい「アレキサンドライトレーザー」で施術を行い、それで抜けきれなかった毛に対して、より肌の深部に届く「YAGレーザー」を使用するのが効果的なアプローチとされています。

※監修医師の臨床経験に基づく

治療の流れ

ここでは、カウンセリングからアフターケアまで、一般的な治療の流れをご紹介します。

  1. 自己処理

    施術前日または当日の朝に、治療部位の毛を電気シェーバーなどで自己処理しておきます。

  2. 来院・カウンセリング

    医師または専門のカウンセラーから、脱毛の仕組み、効果、リスク、料金などの詳しい説明を受けます。最適な治療プランについて相談し、納得したうえで治療を開始します。

  3. 施術

    目を保護するためのゴーグルを装着し、肌を保護・冷却するためのジェルを塗布したあとにレーザーを照射します。

  4. アフターケア

    施術後は、赤みや炎症を抑えるための薬を塗布します。当日の激しい運動や入浴は避け、保湿や紫外線対策を徹底します。

治療回数と期間

顔の産毛は細いため、効果を実感するには回数が必要です。

毛の生え変わりサイクル(毛周期)に合わせて施術を受けるため、一般的に顔脱毛の場合は1ヶ月に1回のペースで、合計8回〜12回程度の施術が目安となります。期間としては、約8ヶ月〜1年ほど見ておくとよいでしょう。

※監修医師の臨床経験に基づく

注意点と副作用

施術には、痛みや赤みといった一時的な反応がともなうことがあります。

施術中の痛みの感じ方には個人差がありますが、一般的に「ゴムで軽く弾かれるような痛み」と表現されることが多いです。多くのクリニックでは、レーザー照射と同時に冷却ガスを噴射したり、麻酔クリームを使用したりして、痛みを最小限に抑える工夫をしています。

※監修医師の臨床経験に基づく

痛みや赤みは一時的なもので、放っておいても治ることがほとんどですが、まれに注意すべき副作用が起こる可能性もあります。医療脱毛で起こりうる主な副作用としては、「やけど(5)」「毛包炎(もうのうえん)(6)」「アレルギー反応(7),(8)」「硬毛化(こうもうか)(5),(9)」が挙げられます。これらの副作用については、事前に理解しておくことが大切です。

  • やけど

    赤み、ヒリヒリとした痛み、熱を持つ、重症の場合は水ぶくれなど

  • 毛包炎

    毛穴がニキビのように赤く腫れる

  • アレルギー反応

    レーザーで焼かれた毛の成分に対して体が反応し、じんましんのような症状が生じる

  • 硬毛化

    レーザーの刺激によって、逆に毛が以前よりも太く、硬くなってしまう

顔脱毛の、その先へ。ワンランク上の美肌を目指すための次の一手

脱毛と注入治療の組み合わせ

※イメージ

顔脱毛で肌表面の産毛の悩みを解決しつつ、肌内面へのアプローチを行うことで、ワンランク上のすっぴん美肌が目指せるでしょう。

脱毛により表面的な問題が解決しても、肌の内側からくる乾燥や、年齢による弾力不足、小じわといった悩みは、脱毛だけでは解決が難しい領域です。

そうした悩みに対して効果が期待されるのが、ヒアルロン酸などを肌に注入する「注入治療」です。以下では美しい肌を目指すための注入治療の選択肢をご紹介します。

ヒアルロン酸注入治療

肌の弾力不足や乾燥といった悩みに対し、肌質改善を目的としたヒアルロン酸注入治療が期待されています。

肌の保水力を高めるヒアルロン酸を直接注入することで、肌の保水力をアップさせ、潤いのある美しい肌へと近づけます。

またヒアルロン酸製材には大きく分けて「架橋型」と「非架橋型」が存在します。ヒアルロン酸の分子同士を化学的に結合した架橋型のヒアルロン酸は、注入後に肌が物理的に少し膨らむため、小じわの改善効果を実感しやすいでしょう。また、非架橋型と比較し効果が長く持続しやすいのも特徴です。(10)

非架橋型と架橋型のヒアルロン酸製剤の構造と特徴を比較したイラスト

※イメージ
文献(10)を参考に作成

ECM製剤による注入治療

ECM製剤が真皮層に働きかけ、コラーゲンやエラスチンの産生を促す仕組みを示したイラスト

※文献(11)を参考に作成

ECM製剤とは、非架橋型のヒアルロン酸とアミノ酸が配合された製剤です。アミノ酸には、皮膚の老化に関与しているといわれるECM(Extra-Cellular Matrix/細胞外マトリックス)に働きかけて真皮層のコラーゲンやエラスチンの産生を促し、肌のハリや弾力を回復する役割があるとされています。(11)

真皮は、肌の土台となる部分です。乾いて荒れた土壌に種をまいても植物が育たないように、土台が乾燥した肌に治療を施しても、十分な効果が発揮されるとは考えにくいもの。そこでまずは、真皮を整える働きのあるECM製剤を注入し、肌の土台を整えます。そのうえで肌質改善が期待できる架橋型のヒアルロン酸製材などを注入することで効果をより実感しやすくなるでしょう。

※国内承認薬または機器が存在しない治療を含む可能性がありますが、それらを推奨するものではありません

PDLLA製剤

PDLLA(Poly-DL-Lactic Acid)は、ポリ乳酸(PLA)の化学構造を変更してつくられた成分の一種です。PDLLAには、真皮でのコラーゲン合成を増加させることによる肌質改善効果が報告されています。(12) 

実際の治療では、PDLLA(ポリ乳酸)製剤と非架橋ヒアルロン酸製材を混ぜて使用。皮膚内部からコラーゲン生成を刺激して、たるみ、しわ、ニキビ跡、肌の赤みなどにアプローチしていきます。(13)

※国内承認薬または機器が存在しない治療を含む可能性がありますが、それらを推奨するものではありません

PN製剤

PN製剤は、サケなどの魚類の生殖細胞からつくられたポリヌクレオチド(Poly-Nucleotide)を配合した製剤です。肌に注入すると、加齢などによって収縮または陥没した部分を改善したり、肌の再生を促したりして、肌状態を改善することが報告されています。(14) 

乾燥肌の改善に必要な治療は、年代や肌状態によって異なります。それぞれの悩みや状態に合った治療法がとれるよう、信頼できる医師に相談したうえで行うのがよいでしょう。

※国内承認薬または機器が存在しない治療を含む可能性がありますが、それらを推奨するものではありません

顔脱毛とヒアルロン酸注入治療、どちらを先に受けるべき?

顔脱毛とヒアルロン酸注入治療を並行して行う場合は、脱毛のレーザーを照射した直後に注入治療を受けるのが、肌への負担も少なく最も効率的です。※1

これは、レーザー脱毛が肌に熱を与えることで、一時的に軽い炎症を起こすためです。ヒアルロン酸注入を先に受けてしまうと、レーザーの熱によって注入したヒアルロン酸に影響がでてしまう可能性があります。

もし、脱毛とヒアルロン酸注入治療のクリニックが別であったり、同日に施術を受けるのが難しかったりする場合は、最低でも1ヶ月以上期間を空けるとよいでしょう。肌の炎症が完全に落ち着いてから注入を行うことで、リスクを抑えられます。※2

※1:併用治療の有効性・安全性、またどれくらい期間を空けるかなどは検証されておりません
※2:監修医師の臨床経験に基づく

安心して治療を受けるために。クリニック・医師選びのポイント

クリニック選びのヒント

美容医療を初めて受ける方にとって、クリニックや医師選びは最も重要なポイントです。

まず、基本的なポイントとして、経営者が医師免許を持っていないクリニックや、クーポンサイトなどで極端な安売りを繰り返しているクリニックは、慎重に検討した方がよいかもしれません。価格には、技術や安全性、使用する製剤の品質などが反映されるためです。

カウンセリングの際には、勇気を出して医師に「注入治療の実績はどのくらいありますか?」あるいは「先生の治療へのこだわりは何ですか?」と尋ねてみてください。実績を尋ねることは失礼にはあたりません。

また、「遅発性結節(ちほつせいけっせつ)(10)  のようなリスクについて、どのように対処していますか?」といった専門的な質問を投げかけてみることで、その医師の知識や誠実さを見極めるヒントになります。

※監修医師の臨床経験に基づく

まずはカウンセリングで、自分の肌と向き合おう

ワンランク上の美肌を目指すために、顔脱毛で肌の土台を整え、さらに注入治療で内側から潤いやハリを育むといった複合的なアプローチがあります。

大切なのは、まず専門の医師による正確な肌診断を受けること。信頼できるクリニックで、自分に合った最適なケアを見つけてみませんか。

参考文献
(1) Konya, Issei; Nishiya, Kotone; Shishido, Inaho; BMC nursing, 2023; 22(1): 18
(2) 日本形成外科学会:形成外科診療ガイドライン1(https://jsprs.or.jp/docs/guideline/keiseigeka1.pdf)(参照2025ー08ー21)
(3) 宮田 成章: イチからはじめる美容医療機器の理論と実践 改定第2版: 全日本病院出版会. 2021P173-175
(4) 谷川知子: 美容皮膚医学BEAUTY52: 2023. 6(9): 20-21.
(5) 川田暁: 美容皮膚科ガイドブック第3版中外医学社2023
(6) MSDマニュアル家庭版「やさしくわかる病気事典: 毛包炎と皮膚膿瘍」(参照: 2025ー08ー21)
(7) Cubells Sánchez L, Ferrer Guillén B, Sánchez Carazo JL, Pérez Ferriols A. Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2018; 84(6): 718-720.
(8) Landa N, Corrons N, Zabalza I, Azpiazu JL. Lasers Surg Med. 2012; 44(5): 384-9.
(9) Willey A, Torrontegui J, Azpiazu J, et al. Laser Surg Med. 2007; 39: 297-301.
(10) 古山 登隆: 解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法: メディカルレビュー社. 2020
(11) 梁川 厚子: 美容皮膚医学BEAUTY. 7(6): 76-82. 2024
(12) Seyeon Oh et, al: Antioxidants (Basel). 12(6): 1204. 2023
(13) Suk Bae Seo et, al: Journal of Cosmetic Dermatology. 23(3); 794-802. 2023
(14) Park, Kui Young, et al: Dermatologic therapy. 29(1); 37-40. 2016

監修・取材協力

レナトゥスクリニック 統括院長 副田 周 先生

レナトゥスクリニック 統括院長
副田 周 先生

富山大学医学部医学科卒業。厚生連高岡病院での初期研修および形成外科での研修を経た後、大手美容外科本院、渋谷院主任、分院長を歴任。RENATUS CLINIC-レナトゥスクリニック-を開院し、統括院長に就任。満足度の高い美容医療を提供できるよう、医療の質に徹底してこだわっている。

日本医学脱毛学会会員/アラガン社ボトックスビスタ施注資格/アラガン社ジュビダームビスタ施注資格

レナトゥスクリニック 東京田町院

住所:東京都港区芝5丁目27-13 Y・A三田ビル 4階・2階

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