「最近、フェイスラインがぼやけてきた」「顔のもたつきが気になる…」など、年齢を重ねて輪郭が変わってきたと感じる方は少なくありません。

年齢によってフェイスラインがぼんやりしたり、もたついたりするのは、目には見えない顔の内部…骨や脂肪、靭帯などが影響を及ぼしています。

今回は、水の森美容クリニックの田中 邦和 先生に、フェイスラインの“もたつき”の原因である顔内部の構造変化と、自然な美しさを目指せる治療法について、詳しく解説していただきます。

監修・取材協力:田中 邦和 先生(水の森美容クリニック 大阪心斎橋院)

「いつの間にかフェイスラインがぼやけてきた」――その理由は?

フェイスラインがぼんやりしたり、口元がもたついたりするのは、ミドルエイジ(30~50代)の女性が抱きやすい代表的な悩みです。(1)

ふと鏡を見たときに、「あれ?私の輪郭ってこんな感じだったかな…?」と、ご自身の顔の変化にハッとさせられた経験をきっかけにクリニックに来院する方は少なくありません。

患者さんのなかには、フェイスラインの変化を「太ったせいだ」と思っている方もいます。

しかし、フェイスラインの皮膚をやさしくつまんでみて、皮膚が余っているような感覚があれば、それは体重のせいではないかもしれません。

皮膚の奥にある構造の変化が始まっている可能性があります。※1

※1:監修医師の臨床経験に基づく

主な理由は顔の構造の変化

フェイスラインがぼんやりしたり、口元がもたついたりするのは、皮膚の奥にある骨や脂肪といった顔の構造自体が、少しずつ変化することが原因とされています。(1),(2) 詳しく見ていきましょう。

土台となる「骨」の萎縮

骨の萎縮と脂肪の下垂による顔の構造変化を表したイラスト

※イメージ
文献(2)を参考に作成

年齢を重ねると、骨密度が減少し、骨が小さくなります。「土台」の役割である骨が縮むと、上にある筋肉や皮下脂肪、皮膚が垂れ下がり、顔のたるみや、輪郭がぼやけて見えてしまうのです。(1)

フェイスラインの変化にとくに影響しているのは、下あごを形成する下顎骨(かがくこつ)の萎縮にあると考えられています。(2)

クッションである「脂肪」の減少と下垂

若いときの顔と加齢が進んだときの顔の頭蓋骨を比較し、骨の萎縮やへこみを示すイラスト

※イメージ
文献(2)を参考に作成

年齢を重ねると顔の脂肪は、全体的に減少したり、下方へ移動(下垂)しやすくなる傾向があります。(1),(2)

その結果、ボリュームの偏りが生じ、顔のたるみや、もたつきを感じさせる要因に。また口元の横の脂肪が下垂すると、口横のぽっこりとしたふくらみを生じさせることがあります。(1),(2)

組織を支える「支持靭帯(リガメント)」のゆるみ

皮膚・脂肪・筋肉を支える支持靭帯(リガメント)が老化により緩む構造を示すイラスト

※イメージ
文献(2)を参考に作成

顔の皮膚や脂肪、筋肉は、支持靭帯(リガメント)によって骨に強固に固定されています。(1),(2)

しかし、加齢により支持靭帯が衰えると、皮膚や脂肪を支えることができず、フェイスラインのもたつきやマリオネットライン(口元の縦じわ)が目立つ一因になるといえるでしょう。

フェイスラインがもたつきやすい人の特徴

骨や脂肪、支持靭帯などの顔の構造変化は、加齢にともない誰にでも起こりますが、以下のような骨格的な特徴や生活習慣があると、フェイスラインにより影響がでやすいといわれています。

・骨格的に下あごの骨が小さい

アジア人と西洋人の頭蓋骨(下顎骨)を比較したイラスト

※イメージ
文献(3)を参考に作成

アジア人は西洋人に比べて下あごの骨(下顎骨:かがくこつ)が小さい傾向にあり、(3) もともとフェイスラインのもたつきがでやすい骨格といえるでしょう。

若いころから下あごが小さい、あるいは耳の下に骨の角張り(下顎角)が目立たない方は、将来的に影響がでやすい可能性があります。

きれいなフェイスラインと、もたついたフェイスラインを比較したイラスト

※イメージ
文献(1),(2)を参考に作成

・急激なダイエットやリバウンドの経験がある
急激な体重の減少に皮膚の変化がついていけず、皮膚が余ってしまうことがあります。(4) また、太ったりやせたりを繰り返すことでも、皮膚が伸びてしまい、フェイスラインのもたつきの原因になるでしょう。

・猫背など姿勢の悪さ
猫背であごを引くような姿勢を続けていると、首まわりの印象が変わり、フェイスラインがもたついたように見えることがあります。(5)

フェイスラインが重要なのは、「顔の印象が決まる」から

フェイスラインは、美容医療において、顔全体の印象を決定づけるうえで非常に重要なパーツだと考えられています。(5)

目鼻立ちが美しくても、フェイスラインがぼやけていると、疲れた印象や老けた印象を与えがちです。

たとえば、マンガのキャラクターを描くとき、おじいさん・おばあさんの輪郭は波打つように描かれます。これは、フェイスラインの乱れが年齢を感じさせる大きな特徴であることを示しています。

若い女性と年齢を重ねた女性のフェイスラインを比較したイラスト

※イメージ

逆に、フェイスラインがシャープになるだけで、顔全体が引き締まり、やせて見えるうえに、若々しく洗練された印象になります。

若々しく見えるフェイスラインの特徴は、以下の2点です。

オージーカーブの「ある顔」と「ない顔」の横顔を比較したイラスト
  • 耳の下からあご先までが、凹凸のない滑らかな直線、あるいは緩やかなカーブ(オージーカーブ)を描いていること(2),(6)
  • 耳の下の骨の角(下顎角)が、ある程度はっきりと見えていること(2)

また、もともと輪郭がぼんやりしている人ほど、フェイスラインが変化するだけで、印象が大きく変わるといわれています。※1

※1:監修医師の臨床経験に基づく

フェイスラインをナチュラルに整える、美容医療という選択肢

医師が患者のカウンセリングを行う様子のイラスト

フェイスラインのもたつきは、骨・脂肪・支持靭帯といった複数の要因が複雑に絡み合って生じます。

若々しい印象を与える理想の輪郭に近づくには、原因に直接アプローチできる美容医療が選択肢の一つとなるでしょう。

田中 先生に、美容医療を有効活用するポイントを教えていただきました。

①「治療の設計図」をしっかり描く

美容医療は、セルフケアでは届かない領域にアプローチできますが、決して魔法ではありません。

期待する効果を得るには、医師による正確なアセスメント(評価)と、顔全体のバランスを考えた「治療の設計図」が何よりも重要になります。※2

それにはまず、しっかりと診察をしてもらうことが大切です。カウンセリング時に顔の骨格を触診してもらい、フェイスラインのもたつきの原因が、骨の萎縮、脂肪の下垂、支持靭帯の影響などのうち、どれが最も大きく影響しているのかを診断してもらいましょう。

医師はこの診察をしっかりと行い、一人ひとりに合わせた治療計画をつくります。これが、ナチュラルで美しい輪郭をつくるための第一歩です。

※2:監修医師の臨床経験に基づく

②ゴールを共有する

もう一つ大切なのは、美容医療によってどうなりたいのか、目指すゴールを医師と共有することです。

ゴールの選択肢は、グライダーにたとえるとわかりやすいかもしれません。

※監修医師の臨床経験に基づく

何もしなければ、飛び立ったグライダーは、年齢とともに少しずつ高度が下がっていきます。しかし、美容医療を受けることにより、以下のような選択肢がでてきます。

①現状を維持して、ゆるやかに年齢を重ねたい
②少し高度を上げて若々しさを取り戻したい
③さらに上を目指して大きく若返りたい

どのフライトプランを選ぶかを医師と共有すると、おのずと治療の設計図が決まってくるでしょう。

美容医療による3つの「フライトプラン」を示すグライダーのイラスト

※イメージ

③原因にアプローチできる治療法を選ぶ

フェイスラインの施術には、さまざまなものがあるため、どの治療法にしようか迷う方も多いかもしれません。

しかし、実際に重要なのは、原因にアプローチできる治療法を選ぶことです。

骨が萎縮している場合は、そのボリュームを補えるか。脂肪の下垂が起きている場合は、正しい位置に脂肪を動かすことができるか。皮膚の余りや支持靭帯(リガメント)のゆるみが生じている場合は、それらを引き締めることができるか。

フェイスラインのゆるみを生じさせている原因に応じて、適切な治療法を選択できれば、満足のいく結果につながりやすくなります。※3

※3:監修医師の臨床経験に基づく

フェイスラインにアプローチする美容医療

現在、フェイスラインに対しては、よく用いられるものとして以下の治療選択肢があります。(7)

※国内承認薬または機器が存在しない治療を含む可能性がありますが、それらを推奨するものではありません

ヒアルロン酸注入治療

ヒアルロン酸注入治療をイメージしたイラスト

医療用のヒアルロン酸を注入し、加齢で失われた骨や脂肪のボリュームを補うことで、下垂した組織を内側から支え、輪郭を整える治療法です。支持靭帯を補強する目的でも行われます。

糸(スレッド)による治療

糸リフトによる治療をイメージしたイラスト

糸リフト」ともよばれます。コグ(とげ)が付いた特殊な糸を皮下に挿入し、たるんだ組織を物理的に引き上げて固定します。メスを使わずにできる、たるみ治療法の一つです。

機器(デバイス)による治療

機械による治療をイメージしたイラスト

HIFU(ハイフ/高密度焦点式超音波)やRF(高周波/ラジオ波)といった機器を使い、超音波や高周波を照射して熱エネルギーで皮膚や筋膜を引き締め、リフトアップ効果をねらう治療法です。

外科手術(フェイスリフト)

外科手術(フェイスリフト)の様子をイメージしたイラスト

耳の前後などを切開し、皮膚だけでなくその下にあるSMAS(筋膜)から組織を引き上げ、余分な皮膚を切除することで、たるみを根本的に改善する外科手術です。

その人のたるみの原因や程度、ライフスタイル、そして「どこまで変化を望むか」によって、最適な治療法は異なります。

たとえば、たるみに対して根本的な解決を望む場合は、余った皮膚や筋膜を物理的に切り取って縫い縮める外科手術が最適な治療法といえるでしょう。

ただし、メスを入れることに抵抗があったり、ダウンタイムが取れなかったりする場合は、いったん別の治療法を選択したほうがよいこともあります。

※施術後から回復までの期間のことで、施術前の生活を取り戻せるまでの期間

担当の医師と相談し、ご自身のご希望やライフスタイル、予算などに沿った治療法を選んでください。

※監修医師の臨床経験に基づく

自然な仕上がりを叶えるために気を付けたいポイント

自然な仕上がりを叶えるために気を付けたいポイント

美容医療を受けるうえで、多くの人が望むのが「自然な仕上がり」です。不自然な変化を避け、満足のいく結果を得るためには、どのような点に気を付けるのがよいのか先生にうかがいました。

顔全体のバランスを見ながら長期的に治療する

美容医療を取り入れ、自然な仕上がりを叶えるためには、顔全体のバランスを見ながら、コツコツと長期的な治療計画を立てることが大切です。

・顔の特定のパーツだけでなく、顔全体をバランスよく治療する
たとえば、ほうれい線が気になるからといって、ほうれい線に大量のヒアルロン酸を注入すると、そこだけが不自然に膨らんで見えてしまう場合もあります。

こめかみやフェイスラインなど顔全体のバランスを見ながら、整えていくことで、全体の調和がとれた自然で美しい仕上がりに近づくでしょう。(2)

・短期間での劇的な変化を狙わず、時間をかけて少しずつ治療を積み重ねる
フェイスラインのもたつきへのアプローチなど、美容医療によるエイジングケアは、地味な作業の繰り返しです。

加齢による顔の変化は、さまざまな層で少しずつ進行していきます。そのため、治療も一度で全てを解決しようとせず、時間をかけてコツコツと積み重ねていくことが大切といえるでしょう。

たとえば、フェイスラインのもたつきが進行してしまった状態から若々しい状態へと引き上げていくのは、しぼんだ風船をもう一度膨らませるようなもの。焦らず根気よくとり組む必要があります。

そのためにも、信頼して長期的に付き合えるクリニック・医師を見つけることが、成功の鍵となるのです。

カウンセリングでは「気になる場所」と「目指したい印象の変化」を伝える

医師と患者のカウンセリングをイメージしたイラスト

信頼できる医師と出会うためには、カウンセリングでのコミュニケーションが重要です。その際、以下の点を意識して伝えると、コミュニケーションがスムーズになります。※4

-気になる「場所」を具体的に指し示す
「フェイスライン」「目の下のクマ」など、一番気になる箇所を具体的に伝えましょう。

-目指したい「印象の変化」を言葉にする
「若々しく見せたい」「元気な印象になりたい」「女性らしい雰囲気になりたい」など、どのような印象を目指しているかを言語化することで、医師はより的確な治療法を提案しやすくなります。

-治療にどれくらいの時間や予算をかけられるか
お手軽な治療から試してみたいのか、根本的な解決を目指したいのか、といったスタンスを伝えることも大切です。

どうしたらよいのかわからない場合は、「一緒に探してほしい」という旨を正直に伝えてみましょう。クリニックにもよりますが、一緒に希望を探してもらうことも可能です。

※4:監修医師の臨床経験に基づく

悩みは解決できる。専門家との対話で理想の自分への一歩を踏みだそう

フェイスラインのもたつきは、骨・脂肪・靭帯といった顔の構造変化が大きな要因といえます。

そこにアプローチするには、医師による正確な診断と「治療の設計図」が不可欠です。

まずは専門家である医師に相談し、ご自身の顔にどのような変化が起きているのか、どのような治療が可能なのかを正しく知ることが、納得のいくエイジングケアへの第一歩となるでしょう。

クリニックを訪れて、ご自身の顔の「現在地」と「未来の可能性」について、話を聞くことから始めてみてはいかがでしょうか。

参考文献
(1) 杉野 宏子: 美容皮膚医学BEAUTY. 6(3): 38-47. 2023
(2) 古山 登隆: 解剖から学ぶヒアルロン酸注入療法: メディカルレビュー社. 2020
(3) Enlow, D. H., & Hans, M. G. "Essentials of Facial Growth". WB Saunders Company. 1996
(4) Hany M, Torensma B et al. : Obes Surg. 34(3): 855-865. 2024
(5) 古山 登隆: 美容皮膚医学BEAUTY. 4(11): 6-18. 2021
(6) 今泉明子: 成功する顔しない顔人生を劇的に好転させる究極の美顔術: サンライズパブリッシング. 2022
(7) 川田 暁: 美容皮膚科ガイドブック 第3版: 中外医学社. 2023

監修・取材協力

水の森美容クリニック 大阪心斎橋院 田中 邦和 先生

水の森美容クリニック 大阪心斎橋院
田中 邦和 先生

2019年 滋賀医科大学医学部医学科卒業。大津市民病院にて研修後、美容医療の道へ。東京中央美容外科を経て、2023年 水の森美容クリニックに入職。知識と経験を可能な限りわかりやすく伝え、勇気をだして美容医療を受けたい方が、納得のいく決断ができるよう心掛けている。

水の森美容クリニック 大阪心斎橋院

住所:大阪府大阪市中央区南船場3丁目5-11 心斎橋フロントビル3F

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