美容医療は今や、肌のメンテナンスから外科手術まで選択肢が広がり、日々のケアの一環として取り入れる方が増えています。

一方で、治療後のトラブルに関するニュースを耳にし、「信頼できるクリニックや医師をどうやって見つければいいのか……」と不安を抱える方も少なくありません。情報が多いからこそ、本当に信頼できる情報の見極めが難しくなっているのが現状です。

本記事では、聖心美容クリニック 銀座院 院長の牧野 陽二郎 先生に、美容医療における安全性の重要さや、安全なクリニックや医師を選ぶポイントをうかがいました。

監修・取材協力:聖心美容クリニック 牧野 陽二郎 先生(銀座院 院長)

美容医療が広がる今、改めて考えたい「安全性」

美容医療の市場が拡大するにともない、契約や治療後のトラブルも増えています。

国民生活センターや消費者庁への美容医療サービスに関する相談件数は増加しており、たとえば消費者庁への相談件数は、令和5年度(2023年度)は約6,000件だったのが、令和6年度(2024年度)には10,000件を突破しました。(1) 契約に関するトラブルだけでなく、治療による健康被害の相談も寄せられています。

※イメージ

なかには、「SNSで見た治療を受けたのに、思っていた仕上がりにならなかった」「リスクについての説明が不十分だった」といった声も聞かれます。(1)

美容医療が身近になった今だからこそ、価格や知名度だけで決めるのではなく、「誰が施術するのか」「どんな薬剤や機器を使うのか」「どんな体制で安全を守っているのか」を確認し、安全性を最優先に考えることが大切です。

牧野先生が考える「安全な美容医療」を選ぶポイント

患者さんが安全性を考えてクリニックを選ぶ場合、どこに注目すればよいのでしょうか。

牧野 先生は、表面的な華やかさではなく、医師としての「背景」や「姿勢」を見ることが重要だと語ります。

美容医療に携わる医師として経験があるか

症例数や経験年数が多い医師の方が経験値は高い可能性がある
美容医療では、同じ治療であっても、患者さん一人ひとりの骨格や皮膚の状態、仕上がりの希望によって、施術のアプローチや判断が異なることがあります。そのため、多くの症例を経験している医師ほど、さまざまなケースを踏まえた慎重で的確な判断ができる可能性があると考えられます。

また、症例数に加えて、美容医療に携わってきた「経験年数」も重要な指標の一つです。長年の臨床経験を通じて、順調な経過だけでなく、想定外の反応やリカバリーが必要な症例も経験してきていることが、リスクを予測し、安全性を重視した判断につながるといえるでしょう。

医師の得意施術を把握する
美容医療では、医師によって得意な施術が異なるとされています。たとえば、形成外科の経験を基盤に外科手術が得意な医師、注入治療を中心に顔全体のバランス調整を得意とする医師など、それぞれに強みがあります。

医師の得意施術を知るためには、クリニックの公式サイトや医師プロフィールを確認し、どの施術の症例が多いのか、どの治療について詳しく説明されているかを見ることが一つの目安になるでしょう。

カウンセリングでは、医師が日常的にどの施術を多く担当しているのかを確認し、「自分の悩みや目的に合った治療を、日常的に行っている医師か」を意識して選ぶとよいでしょう。

最新知識のアップデートを意識しているか

美容医療をはじめ、さまざまなトレンドをおさえ、経営をアップデートしているか
美容医療の安全性を考えるうえでは、治療技術そのものだけでなく、美容医療全体のトレンドを把握し、経営をアップデートしていくことも重要になるでしょう。

たとえば、日本国内のトレンドだけでなく、海外での美容に対する価値観や、流行の違いを把握しているかは、クリニックの運営方針や、患者さんへの治療提案に影響します。

また、美容医療は自由診療を中心とした分野です。保険診療との違いや、医療経営の考え方などについて理解を深めている医師は、現実的かつ持続可能な医療提供を意識しているといえるでしょう。

最新の手技や解剖知識を学び続けているか

美容医療の分野は進歩がめざましく、治療手技や解剖知識などに関する知見も日々更新されています。だからこそ、安全性の高い治療を提供するには、医師自身が常に最新の手技や、解剖に関する情報を学び続けているかが重要になるでしょう。

美容医療に関連する国内外の学会参加や、海外セミナー、専門研修、ハンズオンセミナー(実技をともなう研修)、解剖研修などに積極的に参加している医師は、古い方法に固執せず新しい治療法や安全性の基準を学ぶ姿勢を持っているといえます。

医師のプロフィールや院内情報から、学会活動や研修歴を確認することは、その医師が安全性と向き合い続けているかを判断する指標の一つになるはずです。

所属している学会

そもそも医師が所属する「学会」とは、特定の専門分野の医師や医療従事者が集まり、最新の治療法や研究成果を発表・共有し合うための場です。知見の創出、若手育成なども行われ、医療の質を向上させる役割を担っています。

医師がどの学会に所属しているかも、その医師の得意分野を知るヒントになります。美容医療に関連する主な学会の特徴を知っておくと、自分の悩みに合った医師を見つけやすくなるかもしれません。

美容医療に関連する国内の学会としては、以下のようなものがあります。

  • 日本形成外科学会(JSPRS)
  • 日本皮膚科学会(JDA)
  • 日本美容皮膚科学会(JSAD)
  • 日本美容外科学会(JSAPS)
  • 日本美容外科学会(JSAS)

    詳しく見ていきましょう。

    日本形成外科学会(JSPRS)
    美容外科の基礎となる「形成外科(ケガや変形をキレイに治す外科)」の学会です。(3) 信頼できる美容外科医の多くは、この学会で基礎を固めてから美容医療の道へ進んでいます。

    日本皮膚科学会(JDA)
    皮膚科学の研究と診療の発展を目的とする「皮膚科」の学会です。(4) 皮膚科医が中心となっていますが、研究者や医療従事者も参加可能となっており、皮膚疾患に関する知見の共有や診療の品質向上などを目的としています。

    日本美容皮膚科学会(JSAD)
    美容皮膚科医を中心とした学会です。メスを使わないレーザー治療や注入治療、スキンケアなど、皮膚科学に基づいたアプローチを得意とする医師が集まっています。(5)

    日本美容外科学会(JSAPS)
    日本形成外科学会の正会員である医師が中心の学会です。(6) 形成外科の専門医でなくとも入ることができます。

    日本美容外科学会(JSAS)
    形成外科出身だけでなく、他科出身の医師など幅広い背景を持つ医師が所属しています。(7) 形成外科・皮膚科に限らず広く美容医療に特化した独自の技術や、新しい知見についての議論が活発に行われているのが特徴です。

    国外での学会参加

    医師が学会に参加したり、論文を発表したりすることは、技術が客観的に評価される重要な機会です。とくに海外で開催される国際学会で活動しているかどうかは、その医師が世界基準の技術や最新の知識を積極的に学んでいる証拠といえるでしょう。

    国際学会としては、美容とアンチエイジングを総合的に扱う「AMWC」や、エイジング科学分野の「IMCAS」、およびアジア版の「IMCAS Asia」が、世界的に権威のある学会として知られています。また、美容外科医を対象とした「ISAPS(国際美容外科学会)」や、「ASPS(米国形成外科学会)」なども世界中の医師が研鑽を積む重要な場となっています。

    学会での講演や発表は、多くの専門家の前で自分の手術や治療法を発表し、議論を交わす、非常にプレッシャーのかかる行為です。

    それを乗り越えているということは、自分の技術に自信と根拠を持っている証拠であり、常に最新の知見に触れ、研鑽を積んでいるともいえます。

    ※監修医師の臨床経験に基づく

    専門医資格

    専門医資格についても説明します。

    今の日本の医療制度では、医師免許を持っていれば、特別な資格がなくても美容医療に携わる医師として働くことができます。

    だからこそ、その医師がどのようなトレーニングを積んできたかを知るための指標として、「専門医資格」制度があります。

    専門医とは、形成外科や皮膚科などの各分野において、医師になった直後の2年の初期研修を経てから、さらに数年間の専門研修を受け、試験に合格した医師だけが持つ資格です。(2)

    美容医療に特化した資格ではありませんが、形成外科や皮膚科系などの分野において、「基礎知識と技術、経験を十分に習得しているかどうかを見極める指標になる」と私は考えています。

    SNSでの発信が魅力的なことも医師選びの一つの要素にはなりますが、それだけでは技術の証明にはなりません。

    SNSの人気だけで判断せず、公式サイトのプロフィール欄などで専門医資格の有無や、その医師がどのような経歴をたどってきたかという「背景」を確認することが、安全な美容医療を受ける第一歩といえます。

    また「専門医」であればどの分野でもよいというわけではなく、前述した「美容医療に関連する学会」の専門医であることも重要なポイントです。

    ※監修医師の臨床経験に基づく

    担当医が一貫するワンドクター制

    診察・施術・術後の検診を、一人の医師が一貫して担当する「ワンドクター」制かどうかも重要なポイントです。

    ワンドクター制であれば、カウンセリング時に仕上がりのイメージや要望を患者さんから直接聞いているため、施術を行う際に細やかに反映させることが可能となります。

    美容クリニックのなかには、効率化のために「分業制」をとっているところもあります。カウンセリングを担当する医師と実際に治療をする医師が異なることが必ずしも悪いわけではありませんが、情報の伝達ミスやイメージの共有不足が起こるリスクは否定できません。

    万が一、治療後に気になることがあった場合も、ワンドクター制であれば、カウンセリング時からの経緯を知っている医師が責任を持って対応してくれるため、美容医療において重要な安心材料になるでしょう。

    ※監修医師の臨床経験に基づく

    丁寧なリスク説明やスタッフの様子

    どのような医療行為にも、必ずリスクや副作用の可能性があります。メリットばかりを強調し、「絶対に大丈夫」「リスクはない」といい切る医師よりも、起こりうるリスクについて包み隠さず説明してくれる医師のほうが誠実といえます。

    また、トラブルを防ぐためには、医師と患者さんの間で「仕上がりのイメージ」を共有することが重要です。

    自身の「こうなりたい」という希望に対し、医師から「できること」「できないこと」が明確に示されているかを確認し、納得できるまで話し合うようにしましょう。安全な医療とは、身体的な安全だけでなく『思っていたのと違う』というミスマッチを防ぐことでもあります。

    当院では、3Dシミュレーションを活用し、術後の変化を立体的に予測して共有しています。また、鏡を見ながらの丁寧な説明や、類似の症例写真を見せながら「ゴールのすり合わせ」を行う医師であれば、安心して任せられるでしょう。

    また、医師だけでなく、働くスタッフの様子もポイントです。スタッフが萎縮せず、いきいきと働いているクリニックは、医師とスタッフの信頼関係が築けているといえるでしょう。そうしたクリニックはスタッフ全員が患者さんの安全に気を配ることができるため、結果として質の高い医療が提供されることが多いのです。

    ※監修医師の臨床経験に基づく

    不安が残る場合は見送る勇気も大切

    もう一つ、患者さんの側で安全性を判断できる大事なポイントがあります。それは、契約をするタイミングです。

    カウンセリングを受けたからといって、その場で契約する必要はありません。美容医療は緊急性を要する治療ではないため、少しでも不安が残る場合は、「一度持ち帰って考えます」と伝え、見送る勇気も大切です。

    厚生労働省や消費者庁では、美容医療を受ける前のチェック項目として以下を挙げています。これらをクリアできているか、契約前にもう一度確認しましょう。(8),(9)

    • 使用する薬などがどのようなものか、自分でも説明できますか?
    • 効果だけでなく、リスクや副作用などについても知り、納得しましたか?
    • ほかの施術方法や選択肢の説明も受け、自分で選択しましたか?
    • その施術は「今すぐ」必要ですか?最後にもう一度、確認しましょう。

    「今日契約すれば安くなる」といった言葉で、無理に当日契約を迫ってくるクリニックには要注意です。自分の体に関わることですので、納得がいくまで検討しましょう。

    安全性を第一に、自分に合った美容医療を選ぼう

    美容医療は、外見のコンプレックスを解消し、前向きな気持ちになれる手段です。しかし、そこには必ず医療行為としてのリスクがともないます。

    SNS上の人気や症例写真の美しさだけで判断せず、その裏にある「技術力」「専門性」「医師としての誠実さ」を見て選ぶことが、安全に美容医療を受けるための大事なポイントです。

    多くの医師は、患者さんが安心して施術を受けられるよう、日々技術を磨き、正しい情報発信を心がけています。不安なことがあれば、まずはカウンセリングでじっくりと相談してみましょう。

    ぜひ今回のポイントを参考に、ご自身に合ったクリニックを見つけて、後悔のない美容医療への一歩を踏みだしてみてください。

    参考文献
    (1) 政府広報オンライン「美容医療サービスの消費者トラブル サービスを受ける前に確認したいポイント」(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201307/1.html) (参照 2025-12-08)
    (2) 一般社団法人 日本専門医機構「一般の皆様へ」(https://jmsb.or.jp/ippan) (参照 2025-12-08)
    (3) 一般社団法人 日本形成外科学会「パンフレット(形成外科とはどんな科?)」(https://jsprs.or.jp/docs/pamphlet.pdf) (参照 2025-12-08)
    (4) 公益社団法人日本皮膚科学会 (https://www.dermatol.or.jp/) (参照 2025-12-17)
    (5) 一般社団法人 日本美容皮膚科学会 (https://www.aesthet-derm.org/) (参照 2025-12-08)
    (6) 一般社団法人 日本美容外科学会JSAPS (Japan Society of Aesthetic Plastic Surgery) (https://www.jsaps.com/index.html) (参照 2025-12-08)
    (7) 日本美容外科学会 JSAS (https://jsas.or.jp/) (参照 2025-12-08)
    (8) 厚生労働省「その美容医療、ちょっと待って!」(https://aesthetic-medicine-caution.mhlw.go.jp/) (参照 2025-12-08)
    (9) 消費者庁「美容医療を受ける前に確認したい事項と相談窓口について」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/information_002/) (参照 2025-12-08)

    JP-AGNA-260006

    監修・取材協力

    聖心美容クリニック 銀座院 院長 牧野 陽二郎 先生

    聖心美容クリニック 銀座院 院長
    牧野 陽二郎 先生

    2004年東京慈恵会医科大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院形成外科学講座へ入局後、2017年東京慈恵会医科大学附属柏病院形成外科診療部長に就任。2019年より聖心美容クリニックへ。2023年から同銀座院院長に就任。形成外科での深い見識のもと、徹底した準備を怠らず、安全性の高いオーダーメイドの治療計画を提案している。
    日本形成外科学会認定専門医に加え、指導医の資格も持ち、医師への技術指導も行う、トップドクターの一人。

    聖心美容クリニック 銀座院

    住所:東京都中央区銀座1丁目9-13 プライム銀座柳通りビル9F

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