しみ、しわといった年齢の影響が現れやすい肌の老化対策=アンチエイジング対策として、最近では美容医療への注目が集まっています。美容医療を用いると、どれくらい肌の老化対策ができるのでしょうか?

自由が丘クリニック 理事長 古山 登隆 先生に伺いました。

監修:古山 登隆 先生(医療法人社団 喜美会 自由が丘クリニック 理事長)

アンチエイジングとは?

アンチエイジングの意味

「アンチエイジング(anti-aging)」とは、日本語で「あらがう・ふせぐ」といった意味をもつアンチ(anti)=「抗」と、「加齢」や「老化」を表すエイジング(aging)が合わさった言葉で、「抗加齢」や「抗老化」などと訳されます。

アンチエイジング医学では、現在、しわ、たるみ、くすみといった老化に伴うさまざまなトラブルを医療の力によって予防したり、減少させたりするといった美容の観点から健康に長寿を目指す「医療・健康」の観点も重視されています。

エイジングケアとアンチエイジングの違い

アンチエイジングとよく似た言葉に「エイジングケア」があります。
エイジングケアとは、「老化しないためのお手入れ」のことで、アンチエイジングとほぼ同じ意味を示します。
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)という法律によって「アンチエイジング」という表現を使うことが禁止されている化粧品や健康食品では、アンチエイジングに代わる言葉として「エイジングケア」が使われるようになってきました。

どうして肌は老化するの?

紫外線によるダメージ

紫外線は、肌の老化に大きな影響を与える原因のひとつと考えられています。

紫外線を浴びると、細胞内に活性酸素という物質が発生し、これらは体の酸化や老化の原因となります。活性酸素はコラーゲンやエラスチン線維そのものを変性させ、さらにその生成に重要な役割を果たす線維芽細胞も破壊または傷付けてしまい、肌にダメージを与えます。この現象を「光老化」といい、肌のハリや弾力が低下し、しわやたるみができやすくなるのです。

乾燥

乾燥によって肌表面の水分が失われると、「ちりめんじわ」と呼ばれる小じわが現れることがあります。しわがあると、どうしても老けて見られがちです。

また、乾燥によって肌表面にある角質層と呼ばれる層の潤いが減少すると、肌を守るバリア機能が低下し、肌の新陳代謝であるターンオーバーが乱れます。すると、しみができやすくなり、さらに老けて見える原因となります。

骨や筋肉、皮下脂肪などの変化

加齢によって、肌を支える土台となる骨の骨密度の減少や筋肉や皮下脂肪などが変化することも、肌の老化の一因となっています。

実は年齢を重ねると、体だけでなく顔の骨も骨密度が減り、縮んでいきます。私たちの顔は骨・筋肉・皮下脂肪(皮下組織)・真皮(皮膚)・表皮(皮膚)の5つの層から成り立っていますが、筋肉や皮下脂肪を支える土台である顔の骨が縮むと、それらを十分に支えることができず、重力によって垂れ下がってしまうのです。その結果、しわやたるみを引き起こします。

また、皮下脂肪が元の位置から下に移動(下垂)し、量が減ることでもたるみが生じます。これらは、額やこめかみ、目の下、頬に起きやすく、口周辺やフェイスラインはその影響でたるみを感じやすくなります。

エイジング対策は何をすればいいの?

肌のエイジングケアには何をすればいいのでしょうか。まずはセルフでできるエイジング対策について、その理由とともに解説していきましょう。

食事に気を付ける

食事に気を付けることはエイジング対策として「○」です。

食事には、肌を含めた全身を健康に保つための栄養素を摂取するという大切な役割があります。そのため、食事に気を付けてバランスよく栄養を摂っていれば肌の健康が保たれ、その分、加齢による影響もゆるやかになっていくことが考えられます。

基本的にはさまざまな栄養素をまんべんなく摂取することが大切ですが、肌のエイジング対策に効果的といわれる、ビタミンA、E、C、タンパク質などの栄養素を意識してみるとよいでしょう。

また、栄養バランスとともに、食事量に気を付けることも重要です。食べ過ぎは消化器官の負担につながり、肌に影響が出ることも…。腹八分目を心がけましょう。

睡眠をとる

エイジングケアとして睡眠は「○」です。

睡眠不足や睡眠の質が下がると肌のターンオーバーが乱れたり、乾燥が進んだりして、加齢の影響が出やすくなります。

ヒトの睡眠は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」に分かれますが、アンチエイジングの観点では大脳を休めるノンレム睡眠の質を保つことが大切であり、最初の約90分の眠りの深さが重要とされています。

表皮のターンオーバーを促す成長ホルモンはノンレム睡眠時に多く分泌されるため、肌の回復を促すためにも、睡眠時間は最低6~7時間は確保するようにしましょう。また、睡眠の質を保つために温かいお風呂に浸かるのがおすすめです。就寝する90分前を目安に入るようにしましょう。

スキンケアを正しく行う

これは、エイジング対策としては「△」です。

スキンケアのなかでも、例えば肌の光老化を防ぐ紫外線対策は、肌の老化防止対策になるといえます。
しかし、保湿などのスキンケアそのものを正しく行っても、肌の奥で起こる変化まで対処はできないため、老化の防止対策としては完ぺきとはいえません。また、老化を防ごうと過剰なケアをするあまり、かえって肌に悪影響を与える可能性もあります。

美容医療を行う

美容医療はエイジングケアに有効な対策であり「○」です。

例えばレーザー治療でシミや色ムラといった肌のアンバランスを整えると、肌状態は若々しく見えます。また、注入治療によってしわやたるみにアプローチすることも、肌のエイジング対策には有効です。

美容医療の力を適切に用いれば、自分の肌の状態を数年前と同じような状態に整えることが可能になるかもしれません。

アンチエイジングで人気な美容医療は?

セルフケアに加えて美容医療もエイジングケアの選択肢として考えてみてはいかがでしょう。
エイジング対策として人気の施術を、いくつかご紹介します。

※国内未承認治療を含みますが、それらを推奨するものではありません

ボツリヌス治療

ボツリヌス治療とは、ボツリヌス菌が産生する成分を加工したタンパク質の製剤を表情筋に注射し、筋肉をリラックスさせることにより、眉間や目尻の表情じわなどの改善効果が期待できる治療法です。

しわのもととなっている顔の表情筋に、少量の薬剤をごく細い針で注射すると、数日後から効果があらわれ、個人差がありますが、約3~4ヵ月効果が持続します。

ヒアルロン酸注入治療

ヒアルロン酸は、人間の体内にもともと存在する成分で、細胞と細胞の間で水分を蓄え、潤いやハリ、弾力のある肌を保つのに役立っています。

ヒアルロン酸注入治療は、医療用のヒアルロン酸を肌に直接注入することで、深いしわやたるみの改善に期待ができます。また、加齢による顔のボリューム減少、唇のボリュームアップ、あごやフェイスラインを整える効果も期待できるでしょう。

注入されたヒアルロン酸は少しずつ体内に吸収されるため、効果の持続期間は、個人差がありますが、一般的には約6ヵ月~2年程度です。

レーザー治療

肌の形や色がアンバランスになると老けて見えますが、この肌のアンバランスを均一に整えるためにレーザー治療は役立ちます。

肌に熱を照射するとコラーゲンが活性化し、肌の形を整えることが可能です。また、色のアンバランス…主にシミには、その原因であるメラニンにアプローチし、肌の色を均一に整えます。

肌の悩みや状態によって必要な施術回数は異なるため、医師とよく相談しましょう。

超音波の照射治療・HIFU(ハイフ)

HIFU(ハイフ・高密度焦点式超音波)とは、病院のエコー検査などで用いられる「超音波」を用いて行う治療法です。

身体のさまざまな場所に照射することができますが、特にフェイスラインのたるみに効果を発揮しやすく、たるみを引き締める効果に加えて、照射時の技術でリフトアップ効果も期待できます。

糸リフト治療

糸リフトは、特殊な糸を用いて、肌のたるみを改善し、肌の引き締めや肌状態の改善が期待できる治療法です。

従来から行われているメスを使ったフェイスリフト手術に比べ、ダウンタイムや身体への負担が少ないのが特徴です。

しかし、顔の状態や悩みに応じて糸の種類や本数、入れる場所(部位)などを適切に選択し治療を行っていくため、医師の経験や技術が重要な施術といえます。

アンチエイジング対策を始めるなら、まず医師に相談を

美容医療は日々進歩していて、ご自身の肌の状態や悩みに合わせた施術を行うことで、気になるポイントを目立たなくすることが可能です。

加齢による肌の状態が気になり始めたら、まずは間違ったケアを避けるためにも美容皮膚・外科でカウンセリングを受けることから始めてみましょう。

患者と真摯に向き合う医療機関であれば、希望に応じた、提案やアドバイスをしてもらえるはずです。早期に治療を開始すれば、その分費用を抑えることもできるでしょう。

信頼のおける医師・クリニックに出会うためにも、カウンセリングは複数の医療機関で受けておくことをおすすめします。

監修・取材協力

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック 理事⻑ 古⼭ 登隆 先⽣

医療法⼈社団 喜美会 自由が丘クリニック 理事長 古山 登隆 先生

医学博士。北里大学医学部卒業。同大学チーフレジデント、外科研究員、形成外科講師を経て、1995 年自由が丘クリニックを開設。国立大学法人千葉大学 医学部形成外科 非常勤講師などを務める。日本形成外科学会認定形成外科専門医。ヒアルロン酸やボツリヌストキシン製剤の注入、糸リフト、レーザーなどを組み合わせた、メスを使わずにより美しくなるためのケアを主に行う。

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック

住所:〒152-0023 東京都目黒区八雲3-12-10パークヴィラ2F・3F・4F

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