ほうれい線や目尻、眉間などのしわは多くの女性にとっての悩み。はじめはメイクでカバーできるくらいの小さなしわでも、年齢と共に深くなってくると、鏡を見るたびに気になってしまうもの。

しわに悩む女性のために、「しわ改善」クリームなども販売されていますが、化粧品で本当にしわを消すことはできるのでしょうか?

今回は、野本真由美クリニック銀座 院長 野本真由美先生に、市販のしわ改善化粧品の効果や美容医療によるしわ治療などについて、詳しく解説していただきました。

市販のしわ改善化粧品に含まれる美容成分とは?

――市販のしわ改善化粧品にはどんな成分が含まれているのですか?また、どのような効果があるのでしょうか?

日本では、厚生労働省が「しわ改善」の効果効能を承認している成分が3つあります。それぞれの成分についてご紹介します。

●レチノール

 レチノールは、ターンオーバーを促進させたり、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促したりして肌をふっくらさせるビタミンAの一種です。私たちの細胞内にはビタミンAに特異的なレセプター(受容体)があるので、ビタミンAを塗ると核内のDNAに直接働きかけて、皮膚を健康に導くことができます。

●ニールワン

ニールワンは、日本で初めてしわの改善効果が認められた成分です。皮膚は紫外線などのダメージを受けると「好中球エラスターゼ」を過剰に放出してコラーゲンなどの真皮成分を分解します。それに対してニールワンは「好中球エラスターゼ」を抑制することでしわの改善を促します。

●ナイアシンアミド

 ナイアシンアミドは、水溶性のビタミンB3の一種です。ビタミンCのような抗酸化・抗炎症作用もありますが、皮膚の刺激症状がないため、肌質を選ばずに使えるのが利点。コラーゲンとヒアルロン酸の産生を促進するので、しわの改善が期待できます。

しわの種類によって、原因と対策が異なる!? 

――すべてのしわが、化粧品で改善するのでしょうか?

残念ながら、化粧品のみですべてのしわを改善するのは難しいです。しわには、小じわ、大じわ、表情じわ、たるみじわなどさまざまな種類があり、その種類によって原因や対策が異なります。

例えば、目元によくみられるちりめん状の小じわは、皮膚表面の乾燥によって現れるしわで、比較的初期の状態です。このようなしわは、化粧品などで目立たなくなる可能性があります。

その他にも、加齢や紫外線の強いダメージによって真皮にあるコラーゲンやエラスチンが減少してできる「大じわ」、笑ったり怒ったりするときに眉間や目尻、額などにできる「表情じわ」、皮膚や支持靱帯(リガメント)※が緩んで重力で下垂する「たるみじわ」など、しわにもさまざまな種類があり、それぞれ対策が異なります。

外来では「ほうれい線が目立つようになった」というご相談が多いですが、これは「たるみじわ」のひとつです。土台となる顔の骨量が減り、頬を支える支持靱帯が緩み、重力によって皮下組織が下がることによってできるしわです。

※支持靱帯(リガメント):顔の皮膚や表情筋と骨をつなぎ、支えるもの

そのしわケア逆効果かも!間違ったしわケアに注意

――医師の目から見て、肌に逆効果になってしまうしわケア方法はありますか?

しわ対策のために良かれと思ってしている習慣の中には、逆効果になるものもあるので注意が必要です。

例えば、皮膚をこするようなマッサージは、返ってしわを誘発したりたるみの原因になったりするので厳禁です。オイルやクリームを塗れば多少は摩擦を抑えられるものの、それでも皮膚にとっては摩擦になります。

スキンケアのときも手を横にすべらせず、押しづけすることがポイントです。皮膚に対して垂直な刺激は摩擦になりにくいので、マッサージがしたい時は、指圧によるツボ押しなどをお勧めします。

――ほうれい線や顔のたるみ対策に、「表情筋トレーニング」に取り組まれる方も多くいますが、その効果は?

表情筋トレーニングも“やりすぎ”は良くありません。筋肉を持続的に収縮させていると拘縮という現象がすすんでしわができやすくなります。とはいっても、無表情でいると筋肉が衰えて、これもたるみの原因になります。

そのバランスが大切なのですが、こういう時に意識すると良いのが「笑顔」です。人の心に残る素敵な笑顔のための表情筋トレーニングであれば、行っても良いのではないでしょうか。

注射だけじゃない?美容医療でしわを改善するさまざまな方法

――美容クリニックで受けられる治療について、詳しく教えてください。

美容医療にはさまざまな治療がありますが、「毎日の繰り返し」に勝る「たまに行う治療」はないと思います。

そこで私たちは、まずは日頃からできる外用療法をご提案する場合が多いです。その上でボツリヌス注射ヒアルロン酸注射といったメニューをご紹介しています。

●外用療法

ターンオーバーを促進させたり、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促したりするビタミンA、強い抗酸化・抗炎症作用があり老化の原因である活性酸素を除去するビタミンC、皮膚のコラーゲンやヒアルロン酸を増やす作用のあるペプチドによる外用療法を行っています。

表情しわの原因となる筋肉をリラックスさせることで、しわをできにくくする治療方法です。筋肉の拘縮によってできる眉間、目尻など表情じわの治療に適しています。しわの現れ方から筋肉の位置を特定し、麻酔クリームを塗ってから数か所に注射します。

表皮の下にヒアルロン酸を充填する治療法で、老化によってできた深いしわの治療に適しています。ほうれい線などのしわの下に直接注入する方法のほかに、頬部や輪郭にごく少量のヒアルロン酸を分散して注入し、顏全体をリフトアップさせる方法もあります。

「足す美学」から「引く美学」へ

――しわに悩んでいる方に向けて、先生からメッセージをお願いします。

しわ対策などのエイジングケアと聞くと「とにかく保湿する」と考える方もいらっしゃると思いますが、皮膚は水分が多すぎても油分が多すぎてもバリア機能が低下してカサカサになります。

SNSなどでは「とにかく保湿!」と「足す美容」を推奨するものが多く、その方法が「肌質にあっているかどうか」という視点はあまり考慮されていないように感じます。さまざまなケアを試してもうまくいかない場合、「まず引いてみる」、つまり何かの習慣をやめてみるという視点を持つことも大切です。

美容クリニックは、肌を保湿するものを購入するところではなく、「自前で潤う肌」をつくるところである、というのが私たちの考えです。何をやっても悩みから解放されない方は、皮膚科専門医を訪れてみるのも良いのではないでしょうか。

監修・取材協力

野本真由美クリニック銀座 院長 野本 真由美 先生

野本真由美スキンケアクリニック 総院長
野本真由美クリニック銀座 院長 野本 真由美 先生

信州大学医学部卒業。新潟大学医学部付属病院皮膚科勤務後、2006年に予防医学の勉強のため、米国留学。2007年、野本真由美スキンケアクリニックを開院し、2018年に野本真由美クリニック銀座を開院。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会認定専門医、日本東洋医学会認定漢方専門医、薬学博士。所属学会は日本皮膚科学会、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会、日本美容皮膚科学会、日本香粧品学会、日本東洋医学会、日本抗加齢医学会など。アメリカのビバリーヒルズにあるオバジクリニック(Obagi Skin Health Institute)のオバジ先生が国内で唯一認める教育ドクター。 西洋の美容医学と伝統的な東洋医学のメリットを融合した独自の美容皮膚科治療プログラムを提供している。“皮膚がきれいになると、幸せを感じる”その思いが届くクリニックでありたいと思い、幅広い選択肢の中から、一人一人に適した治療の提案を行う。

野本真由美クリニック銀座

住所:〒104-0061 東京都中央区銀座4丁目6-1 銀座三和ビル4F

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