ドラッグストアなどで誰でも気軽に買える「レチノール」配合の化粧品。しわやハリ に効く成分という話を耳にしたことのある方もいるかと思いますが、その効果や正しい使い方を知っている人は意外にも少ないかもしれません。

そこで今回は、野本真由美クリニック銀座 院長 野本 真由美 先生に、レチノールの効果や正しい使い方、さらにはレチノールに似た作用を持つといわれる成分「バクチオール」についても解説していただきました。

※弾力と同義

監修・取材協力:野本 真由美 先生(野本真由美スキンケアクリニック 総院長/野本真由美クリニック銀座 院長)

レチノールってどんな成分?

レチノールはビタミンAの一種です。(1) レチノールを知るために、まずはビタミンAの作用からご説明します。

■ターンオーバーを促進させて、肌の再生を促す(2)
■真皮に直接働きかけ、コラーゲンやヒアルロン酸を増やして肌をふっくらさせる(2)
■真皮の血管を増やして、肌に栄養を届きやすくする(3)

ビタミンAがほかの成分と異なるのは、細胞内にある核の受容体に結合してDNAに直接アプローチできる点です。これにより、細胞レベルでの肌の機能改善が期待できます。(4)

レチノールの効果と使い方

レチノールを含むビタミンAにはいくつかの種類があり、肌への作用や適した使い方が異なります。たとえば、最も作用が強くニキビやシミの治療に用いられる「トレチノイン(5) から、マイルドな化粧品成分までさまざまです。ここでは代表的な五つの種類について、その特徴をご紹介します。

出典:野本 真由美 先生から提供

パルミチン酸レチノール/プロピオン酸レチノール/酢酸レチノール

「パルミチン酸レチノール」「プロピオン酸レチノール」「酢酸レチノール」はレチニルエステルとよばれています。(6) ビタミンAのなかで最も安定性が高く、肌に多く貯蔵されています。刺激が少ないため、市販の化粧品にも配合されており、紫外線による「光老化」の予防に役立ちます。(7)

レチノール

レチノールはビタミンAのなかでも中間にあたる成分で、美容皮膚科では肌質の改善によく使われています。(1) 肌への刺激は抑えたいけれど、小じわの改善やハリ・ツヤのアップを目指したいといった方に向いています。化粧品の一部にも低濃度のレチノールが使用されています。(8)

ただし、レチノールはレチニルエステルに比べて肌への作用が強く、光に対して過敏になる、つまり紫外線の影響を受けやすくなるというデメリットもあります。そのため、レチノールの配合された化粧品の多くは「夜のみ」の使用が推奨されています。(9)

※弾力と同義

トレチノイン

ビタミンAのなかで最も生理活性が高く、肌に対する作用が強いのが「トレチノイン」です。(1) トレチノインは、ビタミンAが持つ効果を最大限に発揮することができる成分で、深いしわやたるみなどの抗老化治療において活躍するほか、シミやニキビなど皮膚疾患の治療薬として使用します。

一方で肌への刺激が強く、安定性が低いという特性があるうえ、トレチノインによる治療を受けている間は紫外線の影響を受けやすくなります。そのため、使用は「夜のみ」が推奨されており、日中の紫外線対策も必須です。(5),(9)

このように、同じビタミンAでも、種類によって効果や使い方が異なるのが、面白いところです。

レチノールの副反応

レチノールを含むビタミンAのデメリットの一つが「副反応」です。代表的な副反応には、「赤み」「皮剥け」「乾燥」「つっぱり感」などのA反応とよばれるものがあり、レチノールやトレチノインのように生理活性が強くなるほど、A反応が起こりやすくなります。(6)

なお、乾燥肌や敏感肌の方は、A反応がでやすい傾向にあります。反対にオイリー肌の方は成分の浸透が弱くなり、A反応がでにくいことがあります。(6)

こうした観点から、より強い成分を使いたい場合は美容クリニックで肌の状態を診てもらい、自分に合った製品を選ぶとよいでしょう。

レチノール配合スキンケア化粧品の選び方

レチノール配合スキンケア化粧品の選び方

市販のレチノール配合スキンケア化粧品

市販のレチノール配合化粧品では、主にパルミチン酸レチノール、プロピオン酸レチノール、酢酸レチノール、レチノールが使われています。(5),(9) ただし、配合濃度はさまざまです。

医療機関専売のレチノール配合スキンケア化粧品

市販品と医療機関専売のレチノール配合化粧品の違いは、レチノールの配合濃度の高さ浸透技術にあります。カプセル化やマイクロエマルジョン化などの技術を用いて、レチノールをより長く肌にとどめる工夫がされています。(10)

医療機関専売化粧品も、製品によって含まれている成分は異なります。「攻めるタイプ」の製品と「守るタイプ」の製品があり、シミやニキビなどの皮膚疾患や深いしわなどの老化に対しては「攻めるタイプ」を、紫外線による老化を遅らせたい人は「守るタイプ」の製品を選ぶとよいでしょう。

「攻めるタイプ」は肌への刺激も強いので、A反応がでやすくなります。攻めと守りは使い分けることが大切なので、医師に相談をしながら、自分の肌質に合ったものを選んでもらいましょう。

※監修医師の臨床経験に基づく

レチノールのデメリットを解消した新成分「バクチオール」

近年、レチノールの持つメリットはそのままに、デメリットを克服したスキンケア成分「バクチオール」が登場しました。(11)

バクチオールは、マメ科のオランダビュという植物の種子から抽出された成分で、レチノールに近いしわやハリ の改善効果があることが報告されています。さらに、強い抗酸化・抗炎症作用を持っていることも特徴です。(11)

※弾力と同義

刺激が強くレチノールが使えない方には、バクチオール配合化粧品という選択肢があるほか、両者を組み合わせて、レチノールの効果を高めつつ肌への刺激を抑えるよう設計された製品もあります。

※監修医師の臨床経験に基づく

レチノールだけじゃない?!知っておきたい“美容成分の御三家”

レチノールだけじゃない?!知っておきたい“美容成分の御三家”

レチノールでなかなか変化を感じられない場合、より作用が強いトレチノインによる治療をしたほうがよいのではないか、と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、美容の世界では“大は小を兼ねる”ということはありません。作用が強いものを使ったほうがよいというものではないのです。レチノールで効果が得られないときは、まず「そもそもビタミンAが肌に合っているのか」という点から考える必要があります。

私がよく患者さんにご紹介している美容成分の“御三家”があります。

(1)ターンオーバーを促進して肌の再生を促す「ビタミンA」(5)
(2)優れた抗酸化・抗炎症作用を発揮する「ビタミンC」(5)
(3)肌のコラーゲンを増やす「ペプチド」(12)

ビタミンAが適した方もいれば、ビタミンCを優先したほうがよい方、三つとも必要な方など、人によって肌に必要な成分は異なります。

※監修医師の臨床経験に基づく

エイジングケアに悩んでいる方へ

肌のエイジングが気になって、いろいろなことを試したけれど悩みが改善しないときは、まず毎日のスキンケアやメイクを見直すことから始めましょう。

すぐに美容クリニックを訪れる必要はありませんが、何をしても悩みから解放されない場合は、診察でアドバイスを受けてみるのも一つの方法です。

参考文献
(1) 松永 由紀子:美容皮膚医学 BEAUTY.2023;6(2);9-16.
(2) 佐用 哲也:ファルマシア.2008;44(5); 421-425.
(3) Kligman, Albert M. et al. : Journal of the American Academy of Dermatology.1986; 15(4); 836-859
(4) 影近 弘之:ビタミン.2017-2018.91(2);121-128.
(5) 安田 利顕,漆畑 修:改定10版 美容のヒフ科学:南山堂.2021
(6) Mukherjee S, Weindl G. et al. : Clin Interv Aging. 2006; 1(4); 327-48.
(7) 小田 富美子:美容皮膚医学 BEAUTY.2023:6(2); 17-25.
(8) 菊地 克子:日本香粧品学会誌.2017;41(4);282-285
(9) Scientific Committee on Consumer Safety (SCCS)
: Opinion on Vitamin A (Retinol, Retinyl Acetate, Retinyl Palmitate). 2016 (Revision 2022)
(10) 岡本 亨:日本化粧品技術者会誌.2010; 44(3); 199-207.
(11) Chaudhuri RK, Bojanowski K. : Int J Cosmet Sci. 2014;36(3);221-30.
(12) 日比野 佐和子:美容皮膚医学 BEAUTY.2023;6(8);31-37

JP-AGNA-210029

監修・取材協力

野本真由美クリニック銀座 院長 野本 真由美 先生

野本真由美スキンケアクリニック 総院長
野本真由美クリニック銀座 院長 野本 真由美 先生

信州大学医学部卒業。新潟大学医学部付属病院皮膚科勤務後、2006年に予防医学の勉強のため、米国留学。2007年、野本真由美スキンケアクリニックを開院し、2018年に野本真由美クリニック銀座を開院。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会認定専門医、日本東洋医学会認定漢方専門医、薬学博士。所属学会は日本皮膚科学会、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会、日本美容皮膚科学会、日本香粧品学会、日本東洋医学会、日本抗加齢医学会など。アメリカのビバリーヒルズにあるオバジクリニック(Obagi Skin Health Institute)のオバジ先生が国内で唯一認める教育ドクター。 西洋の美容医学と伝統的な東洋医学のメリットを融合した独自の美容皮膚科治療プログラムを提供している。“皮膚がきれいになると、幸せを感じる”その思いが届くクリニックでありたいと思い、幅広い選択肢の中から、一人一人に適した治療の提案を行う。

野本真由美クリニック銀座

住所:東京都中央区銀座4丁目6-1 銀座三和ビル4F

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