美しいボディラインを手に入れるために運動をしている、という方もいらっしゃるでしょう。

しかし、運動の効果はそれだけにとどまりません。ある研究によると、運動はカロリーを消費するのに役立つだけではなく、心と体の両方によい影響をおよぼすことが明らかになっています。つまり、運動することは、見た目の美しさだけではなく、心身の健康や美容にもつながるということです。

運動によって得られるメリットについて、くわしく紹介します。運動の効果を知ると、思わず次のトレーニングの予定を立てたくなるかもしれません。

運動がもたらすおもなメリット4選

早速、運動が心身の健康にもたらす4つのメリットを紹介します。

運動のメリット (1) 疲れにくくなる

元気がないときに、運動しようとはなかなか思わないかもしれません。しかし、定期的に運動すると心身の活力レベルが高まり、持久力も上がってきます。

実際、定期的な疲労に悩まされている人々を対象とした研究では、強度の低い運動を行うことで活力レベルが20%高まり、疲労が65%低下するという結果がでました。(1)

運動には、酸素と栄養を循環させることによって身体機能の向上を促す作用があることが知られています。(2) 加えて、運動により中枢神経系が直接刺激されると、活力レベルがアップし、疲労がたまりにくくなる可能性もあるのです。(3)

運動のメリット (2) 頭がすっきりする

散歩など軽い運動をすると頭がすっきりしますが、その科学的な理由はまだ完全には解明されていません。

ある説では、運動によって血液が脳に送られることが理由とされています。血流が増えればエネルギーと酸素が増えるため、脳機能の向上が促されるというわけです。(4)

そのほか、運動によって脳のなかで記憶をつかさどる部位である海馬が大きくなり、思考がリフレッシュする、という説もあります。(5)

いずれにせよ、運動に思考をはっきりさせる効果があることは、多くの人が実感しているメリットの一つといえるでしょう。

運動のメリット (3) 気分がよくなる

トレーニング後に気分がよくなるのは、運動をすると気分を向上させるエンドルフィンやセロトニンのような「幸せホルモン」が分泌されるためです。(3)

また、チームスポーツに参加すること、ジムに入会すること、家族や友人と一緒に運動をすることなどは、他者とのつながりを感じるためにも役立ちます。

このように、定期的な運動にストレスや不安を緩和する効果があり、精神的にもよい影響があることは、数多くの研究結果からも明らかです。

運動のメリット (4) 睡眠の質が向上する

「睡眠美容」という言葉をご存じでしょうか。

さまざまな研究から、運動をすると睡眠の質が向上し、夜に十分な休息をとれるようになるため、日中はさらに元気に過ごせるようになることがわかっています。つまり、定期的に体を動かすと寝つきがよくなり、眠りの質と深さが向上するというわけです。(6)

もっとも、この仕組みは科学的に完全に解明されているわけではありません。しかし、適度な運動をすると、心と体の若返りを促すような深い眠り(徐派睡眠:じょはすいみん)が増えることはわかっています。(7)

ただし、寝る前の運動は要注意!

トレーニングの計画を立てる際は、時間をいつに設定するかがとても重要です。

あまり遅い時間に運動すると、良質な睡眠を妨げることになりかねません。運動中に分泌されるエンドルフィンが、目を冴えさせてしまうことがあるからです。(6)

このような悪影響を避け、かつ睡眠の質を上げるためには、寝る3時間くらい前に運動するのがよいとされています。(6)

ただし、運動に最適な時間は人それぞれです。ライフスタイルに合わせ、自分にとって最も効果的な時間を選ぶようにしましょう。

運動はどれくらいすべきなのか?

運動する習慣がない方にとっては、どれくらいの運動量や頻度がベストなのか気になるところかもしれません。しかし、いくら運動が健康によくても、連日ハードな運動をするのは逆効果です。とくにこれから運動を始めようとする人は、無理のないレベルからスタートして、徐々に強度を上げていくようにしましょう。

軽く息が弾む程度の運動を30分以上、週2回くらいから始めるのがおすすめです。(8) 運動の種類は何でも構いません。楽しんで長く続けられるものを選ぶことが大切です。

運動のためにまとまった時間がとれない場合は、まずは今より10分だけ多く動くことを意識してみましょう。(9)

なお念のため、新たに運動を始めるときは、事前に必ず医師に相談するようにしてください。

運動を継続するためのポイント

運動のメリットや効果を得るためには、ある程度継続することが必要です。しかし、運動を始めること、続けることは決して難しいことではありません。運動を楽しみながら長く続けるために、以下のポイントをおさえておきましょう。

生活のなかにちょっとした運動をとり入れる

日々の生活習慣をほんの少し変えるだけで、運動をとり入れることはできます。

たとえば、エスカレーターではなく階段を使うことも立派な運動です。車を利用しているときは、目的地から少し離れた場所に駐車し、残りの距離は歩いてみてもよいかもしれません。

通勤時に一駅手前で降りて歩く、買い物のときにカートを使わない、車ではなく自転車を利用する、エスカレーターやエレベーターではなく階段を使う…といったちょっとした工夫で、運動するチャンスは増やせます。

いろいろな運動を試す

自分が楽しめる運動やアクティビティーを選ぶことも大切です。

ダンス教室に入ったり、未経験のスポーツに挑戦したり、お気に入りの場所までウォーキングやジョギングをしたりするなど、何か新しいことにチャレンジしてみましょう。楽しめるものが見つかれば、運動を続けやすくなります。

仲間と一緒にがんばる

友人や同僚とウォーキングを始めたり、チームスポーツに挑戦したりするのも有効な方法の一つです。一緒に運動をする仲間がいれば励ましあえるため、三日坊主も防げるでしょう。

ただし、何もかも人に合わせるのはナンセンスです。自分のペースを守り、無理のない範囲で運動を続けるようにしましょう。

運動を毎日の日課に組み込む

運動を習慣化するのが難しい場合は、トレーニングを日課のなかに組み込むことをおすすめします。ただし、運動がストレスになるほどの厳しいスケジュールは組まないようにしましょう。

エステや美容院の予約を入れるような感覚で運動やトレーニングの予定を組めば、無理なくとり組めるようになります。

達成できる小さな目標を設定する

運動を始めると決めたら、達成できる目標を立てましょう。

目標は「体を鍛える」のような漠然としたものではなく、「昼休みに10分歩く」など具体的な内容にしてみてください。スマートフォンの歩数計やフィットネスアプリで記録をつけるのもおすすめです。

スモールステップで達成感を味わい、少しずつ積み重ねていくことで、運動がより一層楽しくなります。

まとめ

運動は美容に役立つだけではなく、心身の健康にもよい影響をもたらすものです。「体の疲れが抜けにくい」「頭がすっきりしない」「何となく毎日が楽しくない」「よく眠れない」などの悩みがある場合は、軽く体を動かしてみましょう。

運動習慣のない人にとって、新たに運動を始めるのはとても大変なことかもしれません。しかし、運動の効果を求めてハードな運動をする必要はないのです。いつもよりほんの少し余分に動くだけで、体にも心にもよい効果が現れます。この機会に楽しく続けられる運動を見つけて、より美しく健康になることを目指しましょう。

参考文献
(1) Puetz TW, Flowers SS, O'Connor PJ: Psychother Psychosom. 77(3): 167-74. 2008
(2) 厚生労働省: 身体活動・運動
(https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html) (参照 2025-09-25)
(3) 厚生労働省 e-ヘルスネット: セロトニン
(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-074) (参照 2025-09-25)
(4) Tomoto T, Zhang R, et al. : J Cereb Blood Flow Metab. 43(3) : 404-418. 2023
(5) Erickson KI, Kramer AF, et al. : Proc Natl Acad Sci U S A. 108(7): 3017-22. 2011
(6) 厚生労働省 e-ヘルスネット: 快眠と生活習慣
(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004) (参照 2025-09-29)
(7) 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構: 運動は深い睡眠の質を向上させる 〜δ波の安定性を検証する睡眠脳波の新しい解析法〜
(https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20210324161539.html) (参照 2025-09-29)
(8) 厚生労働省: 健康づくりのための身体活動・運動ガイド. 2023
(9) 厚生労働省 e-ヘルスネット: アクティブガイド
(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-0-001) (参照 2025-09-29)

前の記事へ
次の記事へ