日本では美容医療クリニックの数も年々増え、少しずつ美容医療の存在が身近になってきています。インフルエンサーや芸能人も、美容医療を取り入れていることを隠さずに、美容ケアの1つ として発信する風潮 も見られるようになりました。
一方で、日本と海外では、美に対する考え方や美容医療におけるニーズも異なるようです。ここでは、海外と日本の美容医療への意識の違いや治療のトレンドについて表参道レジュバメディカルクリニックの平田先生に解説いただきます。
監修:平田玲奈先生(表参道レジュバメディカルクリニック 院長)
20~40代の女性に調査※したところ、近年、美容医療への関心が高まっていることが顕著に見えてきました。614人に対して「美容医療への興味関心」について聞いたところ、「とても興味がある」と答えた方が26%、「興味がある」と答えた方が33%と、半数以上が「興味がある」と回答しています。
また、同じ対象者※に「美容医療を経験したことがありますか?」と聞いたところ、約27%、4人に1人は治療検討や過去に治療経験があるということがわかりました。
最近の日本では、美容医療に対して20代の若い世代における関心も、韓国アイドルなどの影響もあり高くなっています。お悩みに対する治療はもちろん、より美しくなるための美容ケアの1つとしても浸透してきました。さらに、若い方でも「たるみの予防になるなら」と言って早期のたるみ治療を検討する方も増えています。早め早めに対策をして、加齢という時計の進みを遅らせる「アーリーエイジングケア」の傾向が見られるようになりました。
また、日本美容外科学会の2020年のデータによると、日本では、切開を行う外科的治療が約14%、切開を伴わない非外科的治療が約87%と、非外科的治療のニーズが圧倒的に高い傾向です。これは、日本人にとって、外科的な治療はまだまだ抵抗を持っている方が多いだけでなく、非外科的なレーザーなどの治療でも効果を感じている方が多いことも要因として挙げられます。
コロナ禍に入ってしばらくは「目元」のスキンケアや治療に興味を持つ方が多かった印象ですが、最近では、口元など「顔の下半分」がより意識されるようになっています。口元は、その人の笑顔や若さの象徴でもあり、顔全体の美しさを表現する重要なポイントです。
特に、最近美容医療で人気があるのは上唇と鼻の間を指す「人中(じんちゅう)」の治療。マスクをしている時と、外した時でその人の顔の印象が変わったと感じることはありませんか?その印象を左右している1つが人中です。人中は人種や歯並びなどに影響を受け、人により長さやバランスなどが異なります。しかし、その長さにより美しさや顔の印象を左右させ、長すぎないことが美しさのポイントとも言われています。インフルエンサーをはじめ美意識の高い方にも注目され、SNS等で発信をし始めたことが、一般の方にも注目されるきっかけになったそう。
また、今まで人中の治療は、唇と鼻の間の皮膚にメスを入れる手法が主流でしたが、最近はメスを使わない治療も広まってきました。より手軽に治療を受けられることも、検討する方が増えた要因の1つのようです。
顔に対して求める理想の美のイメージも、海外と日本では大きく異なります。 欧米の場合、「自立」「成功」「気高い」「洗練」など、より自立した大人の女性イメージを求める傾向ですが、日本を含むアジアでは、「若い」「かわいい」「ナチュラル」な印象が好まれ、童顔に見られたいという方が多くいます。
また、実際治療をする際にも、日本人は「さりげなく、自然に変化を加えたい」、と考える方が多い一方、海外では「やるからにはとことん!」と思う方が多いようです。
それぞれの文化や、人種による骨格の違いによっても、求める美の傾向は異なります。
日本と海外では、美容医療における治療手法の傾向も異なります。前述した通り、日本ではまだ抵抗感を持つ方が多い外科的治療も、アメリカでは約32%、ブラジルでは約68%とより一般的な治療となってきています。
国や地域にもよりますが、特に欧米ではメリハリのあるボディが好まれ、いくつになっても肌を露出して魅力をアピールするカルチャーがあることから、ボディメイクにおける美容医療のニーズが高いのです。メリハリを作るためのヒップやバストなどの部位に対しても、積極的に手術を選択する方が多くいます。
もともと欧米の方はアジアの方と比べて、顔の骨格がしっかりしており鼻も高く、二重の方が多いという背景や、小さな頃に歯並びの矯正治療をする習慣があることから、顔をより美しくしたいというニーズよりも身体への治療の割合が多くなっているのではないでしょうか。
現在、海外で人気が高まっている治療の1つが「コントゥアリング」。日本では「輪郭形成」と呼ばれ、部分的な治療ではなく顔全体のバランスを見て美しく整える治療です。
今までの治療では、凹みやくぼみがある箇所に着目して、ヒアルロン酸を注入するといった部分的なケアが主流でした。人間の顔は長さや大きさ、各パーツの間隔や上下左右のバランスなどが美しさに関係すると言われています。 この治療では、その人の骨格を意識した上で、ヒアルロン酸注入治療、ボツリヌス治療、糸リフト、ハイフなどの機器を使った治療を取り入れて全体的に美しい印象に整えます。
最近ではSNS等を使い患者さんご自身で情報取得できる機会も多くなり、しわやたるみの原因を勉強して来院する方が増えてきました。また、ヒアルロン酸の注入などを特定の箇所にやり過ぎると顔がパンパンになり、不自然になってしまうケースがあることへの理解も広まり、部分的な改善ではなく、「全体で見た時の美しさ」を求める傾向になっているようです。
(国内未承認治療を含みます。)
今までの日本では“隠す傾向”にあった美容医療。それが近年、より身近に取り上げられるようになった背景には、芸能人やインフルエンサーがSNSでオープンに話す風潮が出てきたことが関係しているでしょう。
また、メディアでも、自分らしく生き生きと毎日を送ろうとする「ウェルネス的な視点」で美容医療が語られる機会が増えてきました。
数年前の日本では、抵抗感や考え方の違いなどから、家族や友人と美容医療について話す機会は多くなかったと思います。しかし、最近では「自分が幸せでいることが大事」という自分軸で美容と向き合う方が増えてきました。実際に、パートナーや夫婦でも隠さずに話し合い、2人そろってカウンセリングに来院する方もいます。
美しく、より好きな自分になることで、自尊心を高めて、毎日がハッピーになる。そうすれば、仕事や家事に趣味など、日常をより前向きに過ごすことができますよね。これからは、そんな手段の1つ として、美容医療がより身近になっていくのではないでしょうか。美の定義に、正解はありません。自分らしく、しあわせであることを大切にしましょう。
具体的に気になるお悩みがあれば、まずは医師へカウンセリングしてみることをおすすめします。ご自身に合ったクリニックや治療を選ぶためにも、しっかり先生とコミュニケーションを取って、どのような治療や選択肢があるのかをぜひ相談してみてくださいね。
「肌悩みと美容医療に関するアンケート」調査概要
マイナビ調べ
・調査対象:18歳~49歳の女性 有効回答数614名
・調査期間:2022年4月18日~4月19日
・調査方法:WEBアンケート