クリニックなどで医師が行なうしわ治療には、レーザーを用いる方法や手術のほか、薬剤などを注入する方法があります。なかでも、ボツリヌストキシンを用いたボツリヌス注射は、手軽に受けられる人気の高い治療方法です。食中毒の原因ともなるボツリヌス菌を用いた製剤であることから、治療に不安を覚える方も少なくありませんが、医療分野では幅広く活用されています。

ボツリヌス注射の仕組みと効果、治療の流れや注意すべき点を解説します。

ボツリヌス注射とは?

最初に、ボツリヌス注射の概要と歴史について知っておきましょう。

ボツリヌス注射の概要

“ボツリヌス注射”とは、ボツリヌス菌が産生する成分を加工したタンパク質の製剤のことです。このタンパク質には、「筋弛緩作用」という筋肉をリラックスさせる働きがあるため、美容医療だけではなくさまざまな医療分野で活用されています。

ボツリヌス注射治療はダウンタイム※1がほとんどないことでも知られています。アメリカでは、年間440万人以上が施術を受ける、非常にポピュラーな美容治療法の一つです。

※1 ダウンタイム:
施術後から回復までの期間のこと。施術前の生活に戻れるまでの期間。

ボツリヌス注射の歴史

ボツリヌス治療は、アメリカにおいて1970年代から眼瞼けいれん(がんけんけいれん:まぶたのけいれん)や斜視、多汗症などに対して長く使用されてきました。

美容医療の分野で積極的に使われるようになったのは、1980年代後半からといわれています。そして2003年には、アメリカのFDA※2(食品医薬品局)により、しわ治療薬として認められました。

日本では、2009年に65歳未満の眉間の表情じわへ、2016年5月からは65歳未満の目尻の表情じわの治療にも使えるようになっています。

※2 FDA:
Food and Drug Administrationの略で、日本の厚生労働省にあたる機関。

ボツリヌス注射の仕組みと効果

注射の画像

ボツリヌス注射の成分であるボツリヌストキシンには、筋肉を動かすための神経伝達物質(神経筋間の情報伝達を担う物質)であるアセチルコリンの分泌を阻害する作用があります。アセチルコリンの分泌が阻害されると、筋肉を収縮させるための情報がうまく伝わらなくなります。その結果、筋肉の緊張がゆるみ、筋肉がリラックスした状態になります。

この働きをうまく利用したのが、眉間や目尻の表情じわの治療です。

表情じわは、笑顔をつくったり、顔をしかめたりするときに、表情筋という筋肉の収縮によって眉間や目尻、口の横、額などにあらわれます。もっとも、表情じわは本来一時的なものです。しかし、繰り返し筋肉を動かし続け、加齢とともに皮膚の弾力が低下してくるとしわが消えにくくなり、いつの間にかもとに戻らない“刻みじわ”へと変化していきます。

ボツリヌス注射は筋肉の緊張をほぐす作用を有する製剤です。ボツリヌス注射を表情筋に注射すれば筋肉をリラックスさせることができるため、しわの改善に効果が期待できます。このようなことから、ボツリヌス注射はおもに筋肉の収縮によってできる眉間や目尻の表情じわの治療に効果を発揮するのです。

ボツリヌス注射の仕組み

ボツリヌス注射の成分であるボツリヌストキシンには、筋肉を動かすための神経伝達物質(神経筋間の情報伝達を担う物質)であるアセチルコリンの分泌を阻害する作用があります。アセチルコリンの分泌が阻害されると、筋肉を収縮させるための情報がうまく伝わらなくなります。その結果、筋肉の緊張がゆるみ、筋肉がリラックスした状態になります。

この働きをうまく利用したのが、眉間や目尻の表情じわの治療です。

表情じわは、笑顔をつくったり、顔をしかめたりするときに、表情筋という筋肉の収縮によって眉間や目尻、口の横、額などにあらわれます。もっとも、表情じわは本来一時的なものです。しかし、繰り返し筋肉を動かし続け、加齢とともに皮膚の弾力が低下してくるとしわが消えにくくなり、いつの間にかもとに戻らない“刻みじわ”へと変化していきます。

ボツリヌス注射は筋肉の緊張をほぐす作用を有する製剤です。ボツリヌス注射を表情筋に注射すれば筋肉をリラックスさせることができるため、しわの改善に効果が期待できます。このようなことから、ボツリヌス注射はおもに筋肉の収縮によってできる眉間や目尻の表情じわの治療に効果を発揮するのです。

ボツリヌス注射は、しわ治療以外にも有効 

ボツリヌス注射が活用されているのは、しわ治療だけではありません。

前述のとおり、医療の現場においては、重度の腋窩多汗症(わきの多汗症)や眼瞼けいれん、斜視などの治療にも使用されています。

ボツリヌス注射の流れ

それでは、ボツリヌス注射を受ける際の大まかな治療の流れを解説します。細かな治療手順は医療機関ごとに異なるため、実際に治療を受ける際は担当医師の指示にしたがってください。

ボツリヌス注射の手順

治療の前には、医師によるカウンセリングが行なわれます。治療内容だけではなく治療後の経過や副作用なども含め、十分な説明を受けて納得したうえで治療を受けるようにしましょう。

眉間や目尻の表情じわにボツリヌス注射を使用する場合は、しわのもととなっている顔の表情筋に少量の薬剤をごく細い針で注射します。治療にかかる時間は治療する部位や範囲により多少異なりますが、10分程度です。

基本的に麻酔は不要ですが、要望に応じて麻酔シールや麻酔クリームを使用してもらえる場合もあります。通院や入院も必要なく、治療当日からすぐに普段どおりの生活が可能です。

ボツリヌス注射の持続期間

表情筋に対する治療効果があらわれるのは、一般的に注射をした2~3日後からです。そして個人差はありますが、通常は4~8ヵ月くらい効果が持続します。

ボツリヌス注射の効果は、永続的なものではありません。時間が経って注入したボツリヌスがなくなると治療の効果はだんだんと薄れてきて、少しずつもとの状態へと戻っていきます。

とはいえ、治療の影響で治療前よりもしわがひどくなることはありません。永続的な効果を期待する場合は、定期的に治療を受けるようにしましょう。

ボツリヌス注射の際に気をつけること 

ボツリヌス注射の効果が強すぎると、筋肉が必要以上にリラックスした状態になるため、眉毛が下がったりまぶたが重くなったりすることがあります。ただしそのような場合でも、個人差はあるものの半月~1ヵ月程度で、薬剤の効果が弱まるとともに症状がなくなるケースがほとんどです。その一方で、治療効果の実感が得られない場合や、しわへの効果が弱いこともあります。

これは、ボツリヌストキシンに対する筋肉の反応に個人差があるためです。過去に効きすぎた経験がある場合、あるいは思うような効果が得られなかった場合は、医師にその旨をしっかりと伝えましょう。あらかじめ薬剤の量を調整してもらえば、不快な症状を避けやすくなります。

なお、ボツリヌス注射は妊娠中・授乳中の女性に使用することはできません。また、妊娠する可能性のある女性は、治療中だけではなく治療終了後から2回目の月経を経るまでは避妊が求められます。

一方、男性がボツリヌス注射を受ける場合は3ヵ月の避妊が必要とされます。これは、精子形成期間にボツリヌス注射が投与されるのを避けるためです。

その他、ボツリヌス注射後にかゆみや赤み、むくみなどが生じることがあります。多くは一過性ですが、症状が続く場合は再受診して適切な治療を受けてください。

またごく稀ですが、アレルギー症状が起こる可能性も否定できません。アレルギーが生じた場合は次回以降の治療ができないため、気になる症状がある場合は必ず主治医に相談しましょう。

まとめ

ボツリヌス注射は、筋肉の緊張をゆるめ、リラックスさせる効果を持つことから、表情筋の緊張が原因で生じる眉間や目尻の表情じわの解消のほか、多汗症や眼瞼けいれん、斜視の治療など、医療の分野で幅広く活用されています。

ボツリヌス注射による治療は短時間で済み、ダウンタイムもほとんどありません。注射後数日で効果があらわれ始めるのも大きな魅力です。

ボツリヌス注射による治療を希望する場合は、その効果や仕組みをきちんと理解し、悩みの解決につながる治療方法を医師に相談するようにしましょう。

監修

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック 理事⻑ 古⼭ 登隆 先⽣

医療法⼈社団 喜美会 自由が丘クリニック 理事長 古山 登隆 先生

医学博士。北里大学医学部卒業。同大学チーフレジデント、外科研究員、形成外科講師を経て、1995 年自由が丘クリニックを開設。国立大学法人千葉大学 医学部形成外科 非常勤講師などを務める。日本形成外科学会認定形成外科専門医。ヒアルロン酸やボツリヌストキシン製剤の注入、糸リフト、レーザーなどを組み合わせた、メスを使わずにより美しくなるためのケアを主に行う。

医療法⼈社団 喜美会 ⾃由が丘クリニック

住所:〒152-0023 東京都目黒区八雲3-12-10パークヴィラ2F・3F・4F

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